マンダムMBO、5度目のTOB延長へ――CVC系カロン、1月20日まで期限再延長【マンダム劇場 第6章】

マンダムMBO、5度目のTOB延長へ――CVC系カロン、1月20日まで期限再延長 M&A・TOB・アクティビスト

老舗化粧品メーカー、マンダムを巡るMBO(経営陣が参加する買収)が、なお混迷を深めています。欧州の大手プライベートエクイティ(PE)ファンドであるCVCキャピタル・パートナーズ傘下のカロンホールディングスは1月5日、実施中の株式公開買い付け(TOB)の期限を1月20日まで延長する届出書を関東財務局に提出しました。これでTOB期間の延長は5回目となり、異例の長期戦に突入しています。

TOB再延長の背景、「早期かつ確実な売却機会」を強調

カロンホールディングスは昨年9月にマンダム株のTOBを開始しました。当初の買付価格は1株1960円でしたが、市場では「割安」との見方が強まり、株価はTOB価格を上回る水準で推移しました。その後、アクティビスト投資家の介入や買付価格の引き上げを経て、現在のTOB価格は2520円となっています。

今回の延長は、マンダムが昨年12月に第三者候補から非公開化に関する意向表明書を受領したと発表したことや、米投資ファンドKKRによる対抗買収提案が報じられたことを受けたものです。カロン側は、自らのTOBについて「第三者候補の提案と比較して、マンダム株主に早期かつ確実に合理的な売却機会を提供するもの」との立場を維持しています。

あわせて、TOB成立の可能性を高めるため、株主の1社と応募合意に至ったことも、延長理由として説明しています。

創業家主導のはずだったMBO、市場の反発で様相一変

今回のMBOは、1927年創業のマンダムにとって、経営の転機となるはずでした。男性化粧品「マンダム」「ギャツビー」「ルシード」などの主力ブランドを擁する同社ですが、国内人口動態の変化や原材料価格の高騰、海外事業の伸び悩みなどから成長力は鈍化し、株価も長期低迷が続いていました。

創業家である西村元延会長、西村健社長は、短期的な株主評価に左右されず、中長期視点での経営を実現するため、非公開化を決断しました。CVC系カロンと組み、創業家が再出資して約34%を保有し、準共同支配体制を築く構想でした。

しかし、TOB価格の低さが市場の反発を招き、アクティビスト投資家の参入を許したことで、当初のシナリオは大きく揺らぎます。

アクティビスト介入と価格引き上げ、それでも残る不透明感

村上世彰氏の長女である野村絢氏ら村上系アクティビストは、MBO価格を「著しく割安」と批判し、株式を買い進めました。マンダムはこれに対応する形で「大規模買付行為への対応方針」を策定し、株主の判断時間を確保する枠組みを導入しました。

その後、カロンは買付価格を約3割引き上げ、2520円とし、野村氏らと応募契約を締結。一時はMBO成立に向けて前進したとの見方が広がりました。しかし、この「熟慮期間」が新たな買収提案を呼び込む結果となり、KKRが1株約2800円とされる対抗案を提示したと報じられます。

KKR案浮上で競争入札の様相、創業家の立ち位置が焦点に

カロン案とKKR案の最大の違いは、創業家の関与度合いにあります。カロン案では、創業家が約3割を再出資し、経営への関与を強く維持する前提でした。一方、KKR案では、創業家は5~10%程度の戦略株主にとどまり、支配はKKRに集中するとみられています。
TOB価格の引き上げによって、創業家が当初想定していた出資比率を維持する現実性は低下しており、どの案が最終的に選択されるかは依然として不透明です。

今後の焦点は「価格」と「ガバナンス」、決着はどこへ

今後のシナリオとしては、KKR案での決着、カロンによる再度の価格引き上げ、あるいはMBO撤回による上場維持の三つが考えられます。ただし、上場維持となれば株価の乱高下やアクティビスト主導の経営改革圧力が強まる可能性が高く、経営の不安定化は避けられません。

今回のマンダムの事例は、MBOがもはや「内輪の再編」では成立しない時代に入ったことを浮き彫りにしました。価格の妥当性、ガバナンス、創業家の立ち位置が市場に受け入れられなければ、MBOは容易に競争型買収へと転じます。

創業家が経営関与を強めるために選択したMBOが、結果としてその影響力を弱めかねない――。マンダムの最終的な着地点は、日本企業にとっても重要な示唆を与えるものとなりそうです。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK EXPRESS車掌 SHUN

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【マンダム劇場 今までのストーリー】
・第1章:マンダムMBOに波紋!村上世彰氏長女・野村絢氏らが66億円投下し6%超取得


・第2章:旧村上ファンド系がマンダム株を11.54%まで買い増し!MBO成立に不透明感も
旧村上ファンド系がマンダム株を11.54%まで買い増し!MBO成立に不透明感も
旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンスが、マンダム株を買い増ししたことが明らかになりました。29日付で関東財務局に提出された大量保有報告書によれば、村上世彰氏の長女である野村絢氏らとの共同保有比率は従来の9.61%から11.54%へ上昇しました。報告義務発生日は9月19日です。旧村上ファンド系の勢いは止まりませんね。今回の動きは、進行中のMBO(経営陣が参加する買収)を巡る株主間の綱引きを一層複雑にしています。 マンダムを巡っては、欧州大手PEファンドのCVCキャピタル・パートナーズ傘下のカロンホールディングス(東京都千代田区)が、MBOの一環としてTOBを実施中です。買付価格は1株あたり1,960円で、11月10日までに約793億円を投じて全株取得を目指しています。TOB発表当日の終値に対し32%のプレミアムを付けていますが、29日の終値は2,222円とTOB価格を大幅に上回っています。市場価格がTOB価格を上回る状況は、投資家が「提示価格は割安」と受け止めていることを示唆しています。 今回の買い増しで、野村氏らはマンダム株の1割超を押さえました。これはTOBの成立に対して大きな影響力を持つ水準です。過去の事例では、アクティビストの参入によりTOB価格が複数回引き上げられたケースもあり、今回も同様のシナリオの可能性も出てきました。今後の動向について、この記事にて詳しく分析してみます。

・第3章:マンダム、MBO巡り混迷続く!アクティビストの影響で新たな買収提案を模索
マンダム、MBO巡り混迷続く!アクティビストの影響で新たな買収提案を模索【マンダム劇場 第3章】
化粧品大手のマンダム(東証プライム:4917)は11月6日、2025年3月期第2四半期の決算説明会を開催しました。説明会では、同社が進めるMBO(経営陣による自社株買収)に関して、沢田正典CFOが「企業価値および株主共同の利益につながる実現可能な買収提案を得るため、速やかに動く」と述べ、新たな提携先を模索する方針を強調しました。マンダムは、英投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」傘下のカロンHDと連携し、9月26日より1株1960円でのTOB(株式公開買い付け)を進めています。当初、TOB期間は11月10日までの予定でしたが、マンダム側が一部意見を変更したことにより、期限を11月19日まで延長しました。 しかし、村上世彰氏の長女でアクティビスト投資家として知られる野村絢氏らが、マンダム株を21%まで買い増したことにより、MBOの行方は不透明感を増しています。野村氏らはTOB価格を「著しく割安」と指摘し、「創業家が不当に利益を得る目的でMBOを推進している」と強く批判。追加取得の際は、マンダムが策定した情報開示の方針に従う姿勢を示しています。この記事で動向を詳しく分析します。

・第4章:マンダム、MBOを巡り攻防激化!村上世彰氏 長女が20%超を取得し、TOB成立は不透明に
マンダム、MBOを巡り攻防激化!村上世彰氏 長女が20%超を取得し、TOB成立は不透明に【マンダム劇場 第4章】
化粧品メーカーの株式会社マンダム(東証プライム:4917/Mandom Corporation)を巡り、経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)計画に対してアクティビスト投資家が強く反発する構図が鮮明になってきました。「物言う株主」として知られる村上世彰氏の長女・野村絢氏らが、同社株式の20%超を取得し、MBO実施を目的としたTOB(株式公開買い付け)に対し強い影響力を及ぼし始めています。この記事にて、動向を解説します。


・第5章:マンダム、MBO価格を3割引き上げ!創業家主導で非公開化に前進

マンダム、MBO価格を3割引き上げ!創業家主導で非公開化に前進【マンダム劇場 第5章】
マンダムは、CVCキャピタル傘下のカロンホールディングスが進めるMBOにおいて、TOB価格を1株1960円から2520円へ約3割引き上げました。これを受け、マンダム株を20%超保有する旧村上ファンド系の野村絢氏らと約5%保有のひびき・パース・アドバイザーズが応募契約を締結し、MBO成立の公算が大きく高まりました。背景には、日本市場の縮小を踏まえたアジア市場への長期的投資を進めるため、上場企業としての短期圧力を避けたい狙いがあります。CVCの海外ネットワークやデジタル戦略の支援を取り込み、非公開化後は成長戦略を加速させる見通しです。今後は他の買収提案の有無も注目されます。

【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Mandom MBO Faces Further Delay as Rival Bid Emerges

The management buyout (MBO) of Japanese cosmetics maker Mandom has entered a prolonged and increasingly complex phase. Caron Holdings, backed by European private equity firm CVC Capital Partners, has extended its tender offer (TOB) for Mandom shares to January 20, marking the fifth extension since the offer began in September.

Caron launched the MBO to take Mandom private in partnership with the founding family, aiming to enable long-term management free from short-term market pressure. However, the initial offer price was widely viewed as undervalued, attracting activist investors and pushing the stock above the TOB level. Caron later raised the offer price by about 30% to ¥2,520 per share, securing support from key shareholders.

Despite this, uncertainty has increased following reports that U.S. private equity firm KKR submitted a competing proposal at around ¥2,800 per share. Caron maintains that its offer provides shareholders with a faster and more certain exit, citing recent tender agreements as justification for the latest extension.

The key point of divergence between the two proposals lies in governance. Caron’s plan envisions significant reinvestment by Mandom’s founding family and a shared control structure, while KKR’s reported proposal would likely centralize control under KKR, with the founders retaining a smaller strategic stake.

The drawn-out process highlights how MBOs in Japan can evolve into competitive auctions if pricing and governance fail to satisfy the market. Investors are now watching closely to see whether Caron raises its bid again, KKR formalizes its proposal, or the privatization effort ultimately unravels.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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【STOCK EXPRESS(ストックエクスプレス)】(略称:STOCK.EX)株主視点の経済ニュース考察を発信してまいります!
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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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