太平洋工業、株価はTOB価格を大幅に上回り、MBO成立見通しに不透明感!TOB期間を再延長【太平洋工業 劇場・第2章】

太平洋工業、株価はTOB価格を大幅に上回り、MBO成立見通しに不透明感!TOB期間を再延長 M&A・TOB・アクティビスト

自動車部品メーカーの太平洋工業株式会社(本社:岐阜県大垣市)は、経営陣による自社株買収(MBO)を目的とした株式公開買い付け(TOB)期間を10月23日まで延長すると発表しました。今回で3度目の延長となります。買付価格は1株2,050円のまま据え置かれましたが、市場株価は大きく上回る水準で推移しており、TOB成立は依然として不透明な状況です。9月18日の記事(エフィッシモが太平洋工業株を買い増し)にてお伝えして以降、この展開には続編が続きますね。以下に詳しく見ていきましょう。

株価はTOB価格を大幅に上回り、成立見通しに不透明感

太平洋工業は、創業家が出資する特別目的会社(SPC)を通じて7月28日よりTOBを開始しました。当初の期限は9月8日まででしたが、株主の応募状況を踏まえた結果、今回で三度目の期間延長となりました。
10月7日時点の終値は2,647円と、TOB価格の2,050円を約30%上回る水準です。会社側は延長の理由について、「株主にさらなる判断機会を提供し、買付成立の確度を高めるため」と説明しています。

同社はトヨタ自動車を主力顧客に持ち、タイヤバルブやタイヤ空気圧監視システム(TPMS)などで高いシェアを誇ります。買付目標は発行済株式数の62.02%以上の取得とされています。

▼太平洋工業 株価推移(2025年7月〜10月8日)

太平洋工業 株価推移(2025年7月〜10月8日)

太平洋工業 株価推移(2025年7月〜10月8日)

投資家からは「価格が低すぎる」との批判も

一方で、国内外の機関投資家からはMBO価格への強い反発が出ています。
米運用会社GMOの日本株責任者ドリュー・エドワーズ氏は、「プロセスが公正ではなく、価格が低すぎる」と指摘。太平洋工業の事業価値や資産規模を踏まえると、「純資産価値を下回る水準での買収は常識を疑う」と強い懸念を示しました。

また、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーも、「株主に有利な条件を提示しようとする企業努力が足りていない」とコメント。今回のMBOを「保守的なMBOの典型例」と位置づけています。

アクティビスト勢力の動きも注目 エフィッシモが11%超を保有

太平洋工業株を巡っては、旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントがMBO発表後に買い増しを進め、現在は発行済み株式の約11.47%を保有しています。
エフィッシモは「投資および経営陣への助言、重要提案行為」を目的としており、TOBへの賛否は明らかにしていませんが、対抗提案や買収競争の可能性も意識されています。

東証の新ルール下で初のMBO案件、少数株主保護の試金石に

今回の案件は、東京証券取引所が7月に導入した新たな上場制度改正後、初のMBO事例です。新制度では、買収手続きや価格の公正性に関する説明責任、独立委員会の意見開示が義務付けられています。

市場関係者の間では、太平洋工業のケースが少数株主保護の新ルールの実効性を試す象徴的な事例になるとの見方が広がっています。
一部の専門家は、今回のような案件が契機となり、東証がMBOに関する規制を一段と強化する可能性を指摘しています。

経営陣と株主の「溝」、今後の行方に注目

太平洋工業のMBOを巡っては、創業家主導の非公開化の是非と、株主の適正な利益確保という二つのテーマが交錯しています。
株価がTOB価格を大幅に上回る現状では、応募意欲の低下によるMBO不成立リスクも否めません。

23日のTOB期限までにどのような動きがあるのか、アクティビストの動向や東証の対応も含め、市場関係者の注目が集まっています。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

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【続報】(2025年10月16日)
エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが太平洋工業株を12.49%まで買い増したことが判明。保有比率は9月22日報告時点の11.47%から上昇しており、買い増しを続けていることが明らかとなりました。

【続報(2)】(2025年10月24日)
太平洋工業、TOB価格を引き上げ!村上ファンド系との攻防で、株価は一時3,000円台を回復
太平洋工業、TOB価格を引き上げ!村上ファンド系との攻防で、株価は一時3,000円台を回復【太平洋工業 劇場・第3章】
自動車部品メーカーの太平洋工業株式会社(本社:岐阜県大垣市)の株価が10月24日に大幅に上昇しました。背景には、同社の経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)に関連したTOB(株式公開買い付け)価格の引き上げ発表があります。旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」が買い増しを続けており、影響力を強めております。

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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