2025年10月、株式市場では「不動産を多く保有する企業」に対するアクティビスト(物言う株主)の関心が一段と高まっているようです。高市早苗政権誕生の可能性も高まる中、インフレ傾向と資産価値の上昇が進む中、企業の保有不動産が新たなターゲットとなりつつあります。
含み益膨らむ不動産資産、30兆円超に
主要上場企業の保有不動産の含み益は直近年度で約31兆円と、5年前から26%増加しているようです。一方、地価の上昇や開発需要の拡大を背景に、不動産を有効活用しきれていない企業が増えており、アクティビストはこうした「眠れる資産」に注目しています。
アクティビストが不動産売却や株主還元を迫るケースも増加しており、資産効率の向上を通じて日本株全体の上昇を支える要因となっています。
旧村上ファンド系、高島屋に大量保有 割安株狙いの動き鮮明に
9月22日には、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスと野村絢氏が高島屋株を合計で5.32%取得したと発表されました。取得額は約205億円に達し、株価は一時8%超の急騰を見せました。
高島屋はブランド力に比して株価が割安とされ、PBR(株価純資産倍率)は長らく1倍を割り込んでいます。不動産を含めた資産価値を考慮すると、アクティビストが「資本効率改善」を迫る余地が大きいと見られます。
市場では、経営陣への提言やTOB(株式公開買付け)など、さらなるアクションへの思惑が広がっています。
「土地持ち企業」への圧力 サッポロHD・フジ・メディアHDにも波及
アクティビストの矛先は、高級地に不動産を抱える「土地持ち企業」にも向けられています。
サッポロホールディングスには、シンガポールの3Dインベストメント・パートナーズが介入し、不動産子会社のスピンオフ(分離上場)を提案。経営資源を本業に集中させるよう求めています。サッポロHDは東京・恵比寿の商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」を保有しており、ここを巡って3社で争奪戦となっておりました。
また、フジ・メディアHDには米ダルトン・インベストメンツが取締役選任の株主提案を提出。不動産事業の切り離しを主張しています。こうした動きは「放送事業の外資規制」という壁を越えて、資産効率の改善を求める圧力として注目されています。
東京ガスや関西電力も標的に 潜在的含み益が狙い目
エリオット・インベストメント・マネジメントは、東京ガスに対して不動産の売却・収益化を通じた資本効率の向上を要請。関西電力にも約2,200億円の含み益を背景に、配当引き上げを求めていると報じられています。
含み益が株式時価総額を上回る企業も珍しくなく、三菱地所や片倉工業などはその代表格です。修正PBRを考慮すると、これら企業の株価は見かけ以上に割安であり、アクティビストの格好のターゲットとなる可能性があります。
今後の見通し 資産活用と株主還元の両立が焦点に
高市政権による財政拡大とインフレ進行は、企業の保有不動産価値を一段と押し上げる見通しです。一方で、コーポレートガバナンス改革が進む中、企業には「資産を活かす経営」が強く求められています。
ゴールドマン・サックスのカーク氏は、「アクティビストの提案は一般機関投資家にも支持されつつあり、今後の企業戦略に影響を及ぼす」と指摘しています。
アクティビストによる圧力は、短期的には株価上昇をもたらす一方で、企業にとっては資本政策と経営戦略の再構築を迫る契機ともなります。今後、土地を多く保有する企業に対する「不動産アクティビズム」は、株式市場の新たな潮流となる可能性があります。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」
ぜひ、ブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699





コメント