米サブプライム自動車ローン大手が破産申請!2008年の住宅サブプライム危機との類似点は・・・

米サブプライム自動車ローン大手が破産申請!2008年の住宅サブプライム危機との類似点は・・・ 株式劇場

アメリカで自動車ディーラー向け融資を手がけるプライマレンド・キャピタル・パートナーズ(Primarend Capital Partners)は10月22日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。サブプライム(信用力の低い個人)層を主な顧客とする自動車販売店に融資を行っており、低所得層向け金融の一角で信用不安が再び意識されています。

同社は「バイ・ヒア・ペイ・ヒア(Buy Here, Pay Here)」と呼ばれる、販売と融資を一体で提供するディーラーに資金を供給してきました。しかし、債務の利払いが困難となり、数カ月にわたり債権者との交渉を続けた末に、今回の破産申請に至りました。
テキサス州裁判所に提出された書類によると、資産・負債はいずれもおよそ5億ドル(約760億円)と見積もられています。
プライマレンドは声明で、破産法の管理下で事業売却を進めつつ、既存の融資とローン管理を継続すると説明しました。また、既存の貸し手から破産手続き中のつなぎ融資(DIPファイナンス)を受ける確約を得ているとしています。

今回の破綻は、先月破綻したサブプライム自動車ローン会社トライカラー・ホールディングスに続くもので(10月17日の記事参照:米地銀の信用不安再燃、銀行株急落で市場に波紋広がる )、投資家心理に影を落としています。トライカラー社は現在、詐欺や不正行為の疑いで調査を受けており、サブプライムローン延滞率の高止まりが全体の信用市場に波及する懸念も強まっています。

米金融界では、こうした破綻連鎖を受けて信用市場への警戒感が広がっています。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは先日の決算会見で、「ゴキブリが1匹いれば、他にもいる」と述べ、今後さらに信用問題が顕在化する可能性を指摘しました。一方で、ブラックロックなど一部大手は「借り手の信用力は全体的に堅調」との見方を示しています。
それでも、低所得層を中心とする消費者ローン市場では返済遅延が急増しており、金融引き締めの長期化と景気後退リスクが重なる中、サブプライム関連の信用不安が再燃する可能性が注目されています。

2008年の住宅サブプライム危機との類似点

サブプライムと言えば、思い出されるのが、リーマンショックのきっかけとなった2008年の事例。2007〜2008年の米国では、住宅ローン市場におけるサブプライム貸出が膨張し、その後、信用不安から世界的な金融危機へと発展しました。

この時のポイントを振り返ると:
・住宅価格がピークを迎えた2006年頃以降、下落に転じたことで、借り手の返済負担が増大し、住宅ローン(特に変動金利型)で返済不能になるケースが急増しました。
・それが証券化商品(MBS=モーゲージ担保証券)やデリバティブ(CDS=‐信用デフォルトスワップ)へと連鎖し、金融機関の損失が雪だるま式に拡大。
・その結果、米株式市場では主要指数がピーク時から約50%近く下落。さらに景気後退を伴う金融危機(いわゆる「リーマン・ショック」)に発展しました。
・危機後、信用リスクの連鎖が制御できない「信用市場の氷結」/流動性の枯渇が発生し、金融・実体経済双方に打撃を与えました。

このように、サブプライムという信用力の劣る借り手が多数含まれるローンが、資産価格の下落や返済不能の増加によって引き金となり、信用リスクが金融システム全体に伝播したのが2008年以前の構図です。

今回との比較・警戒点

今回のプライマレンド破綻は、規模・構造ともに2008年事案と完全に同じではありませんが、いくつかの警戒すべき共通点があります。

(1)借り手の信用力が低い点
住宅では「サブプライム住宅ローン」が焦点となりましたが、自動車ローン/ディーラー融資においても「信用力の低い個人」が対象となっています。今回のケースも同様です。

(2)返済困難・延滞の増加リスク
報道によれば、自動車ローン延滞が記録的高水準という情報もあり、低所得層向けローンの返済環境が悪化している点は、住宅ローン危機の“前兆”に似ています。

(3)金融機関・融資元のエクスポージャー
プライマレンドのような融資提供者が破綻・再編に向かうと、その貸し手や証券化関与者、金融機関に波及リスクがあります。2008年でも、主流ではないが多くの影響が金融システムに広がりました。

(4)資産価格・景気サイドの逆風
景気減速、インフレや金利上昇、消費者の借入負担増などが重なると、サブプライム層の返済余力が削がれ、環境が悪化します。今回もこのような逆風下にあり、過去との類似点として警戒されます。

投資家として考えておくべきポイント

このような背景を踏まえ、投資家として考えておくべきポイントを下記にまとめてみます。

・信用市場の細部に注意:中心部ではなく、ややリスクが高いサブプライム向けの貸出・債務が“ほころび”始めた時、信用スプレッドの拡大、流動性低下、金融機関の損失計上などに繋がる可能性があります。

・関連銘柄・金融機関への波及リスク:自動車ローン、ディーラー融資、証券化商品、貸し手金融機関等が“次の影響先”となり得ます。プライマレンドの破綻が契機となってどのような動きが出るか注視が必要です。

・景気・金利環境との連動:景気後退、金利上昇、消費者負担増はサブプライム層向け返済能力を削ぐため、今回のようなローン市場での“きしみ”が先に出る可能性があります。

・過去の危機からの教訓:2008年の危機では、最初は比較的“ニッチ”なサブプライム住宅ローン市場の問題から始まり、徐々に金融システム全体へ影響が波及しました。今回も、低所得層向け自動車ローンという“隙間市場”が端緒となる可能性を念頭に置くべきでしょう。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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