~コスト高騰で採算性確保困難、エネルギー政策にも波及か~
大手商社の三菱商事(8058)が、秋田県と千葉県沖で進めていた大規模洋上風力発電事業から撤退する方向で最終調整に入っていることが明らかになりました。資材費や人件費の急騰により採算性の確保が困難と判断したもので、27日にも正式発表される見通しです。
昨日お伝えしたように、すでに鹿島建設は撤退の意向を明らかにしており、これを好感し株価が上昇しています。三菱商事もこれを機にますます株価上昇へと向かうでしょうか。
以下に背景を分析してみます。
計画概要と撤退の背景
三菱商事は、中部電力の子会社などと連携し、秋田・千葉の3海域で134基の風車を建設、総発電量170万キロワット規模を2028~2030年にかけて稼働させる計画を進めてきました。
2021年には、国が再エネ普及を目的に公募した「重点整備計画」の第一弾案件として落札し、官民連携による象徴的なプロジェクトと位置付けられていました。
しかし、今年2月に三菱商事は「コストの大幅な増加」を理由に計画の見直しを表明。その後の試算でも資材価格や人件費、建設コスト全般の上昇が顕著であり、最終的に事業撤退を決断する方向となった。すでに地元関係者には撤退方針を伝達済み。
市場への影響と投資家心理
この撤退報道を受け、関連する鹿島建設(1812)は「採算リスクの遮断」「資本効率の改善」との見方から株価が堅調に推移。市場では「リスク案件からの撤退は必ずしもネガティブではない(むしろプラス)」との評価が広がっています。
三菱商事株についても、同様の文脈で投資家心理が改善する可能性がある。短期的には「巨額投資リスクの回避」がポジティブに働き、株価押し上げ要因となる公算が大きい。ただし、中長期的には「成長領域の一つである再エネ分野からの後退」と受け止められれば、事業ポートフォリオ戦略に対する懸念材料となり得ます。
エネルギー政策への波及
今回の計画は国が進める再エネシフトの“旗艦案件”でもあったため、三菱商事の撤退は国のエネルギー政策に少なからぬ影響を与える見通し。新たな事業者公募が行われるとみられますが、世界的な建設コスト上昇や調達難の影響を受け、入札環境は依然厳しいでしょう。再エネ政策の推進に向け、官民双方でのリスク分担や制度設計の再考が求められる局面に差し掛かっています。
投資家視点では「リスク遮断による短期株価上昇」と「再エネ戦略後退による長期的評価の揺らぎ」が交錯する状況と言えるでしょう。
追加:三菱商事、洋上風力発電事業からの撤退を正式発表
【追加(2025.8.27)】
翌8月27日、三菱商事は千葉県と秋田県の沖合計3海域で計画する洋上風力発電事業から撤退すると発表しました(撤退するのは、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3海域すべて。)
想定通りの展開ですね。物価高や円安などに伴う建設コストの高騰を受け、採算が取れないと判断したとのこと。昨年度の連結決算にて、すでに洋上風力発電事業で522億円の損失を計上しており、継続すれば損失が増え続けることが想定される以上、早めに見切りをつけた撤退は正解でしょう。
大企業といえども民間企業ですからコスト度外視のボランティアのようなことはできないですよね… 経産省としては三菱商事に大きな期待をしていたと思いますが、社会情勢が大きく変わっているので、民間に過度な期待は難しいかと。国策として行うのであれば、国がコストを負担する必要があるでしょう。三菱商事ほどの体力がある企業が撤退したわけですから、このコストに耐えられる企業はなかなかないかと。
三菱商事連合は保証金200億円没収とのことで、一時的に株価は下がるかもしれませんが、今回の判断は長期的に見るとプラス材料だと感じます。三菱商事はプレスリリースにて「本件に関する損失は過年度に大部分を計上済みであり、追加の損失が生じる場合でも限定的となる見込み。」と発信しており、本件の打撃は少ないと思われます。
一方、三菱商事や三井物産など日本企業12社が核融合発電の実用化を目指す米国の新興企業「Commonwealth Fusion Systems(コモンウェルス・フュージョン・システムズ)」に出資したことが明らかになりました。エネルギー源の変化を感じさせられますね。
なお、念の為ではございますが、投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」
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