日本銀行は12月19日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物レートの誘導目標)を0.25%引き上げ、0.75%とする追加利上げを決めました。1995年以来、約30年ぶりの高い水準となります。新たな政策金利は12月22日から適用され、決定は政策委員9人の全員一致でした。日銀は2026年以降も、経済・物価情勢を見極めながら利上げを継続する方針を改めて示し、異次元緩和からの金融正常化をさらに進める構えです。以前から織り込み済みだったことではありますが、案の定、決定しましたね。以下にて詳しく見ていきましょう!
0.75%でも「緩和的」――実質金利マイナスを強調
今回の利上げ後も、日銀は金融環境をなお「緩和的」と位置づけています。物価変動を考慮した実質金利は「大幅なマイナスが続く」とし、景気や物価上昇を下支えする効果が続くとの認識を示しました。そのうえで、経済・物価の改善が進めば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と明記し、利上げ継続路線を強くにじませています。
利上げ再開の背景――「下振れリスク低下」と賃上げ継続への自信
植田和男総裁は12月19日の記者会見で、インフレ率と成長率の「下振れリスクは低下した」と説明しました。日銀が重視する「賃金と物価がともに上昇するメカニズム」についても、維持される可能性が高いとの見立てです。
注目点は2026年春闘です。企業の対応方針や日銀のヒアリング情報を踏まえ、「今年に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」との見方を示しました。米国の関税政策が日本経済に及ぼす影響についても、不確実性は残るとしつつ「当初の想定より軽微」「不確実性は低下している」との認識が強まっており、企業収益は高水準を維持する見通しを掲げています。賃上げの原資となる収益が保たれるなら、価格転嫁と賃上げの好循環が続きやすい――この判断が利上げ再開を後押ししました。
市場の次の争点――利上げペースとターミナルレート、中立金利の距離感
今回の利上げは市場の事前予想の範囲内との受け止めが多く、関心は早くも「どの速度で、どこまで上げるのか」に移っています。目安となるのが、景気を熱しも冷ましもしない中立金利ですが、日銀は推計に幅があり不確かとして、事前に特定するのは難しいとの立場です。植田総裁も、中立金利は重要としつつ「ばらつきが大きい」と述べ、必要に応じて再推計を試みる考えを示しました。
一方で、現状の政策金利は「推計された中立金利の下限にはまだ距離がある」との趣旨も語っており、投資家にとっては「利上げ余地が残る」シグナルとして受け止められやすい局面です。日銀は利上げを進めながら、経済・物価、金融機関の貸出動向などへの影響を確認し、緩和度合いを見極める構えで、今後の会合ごとにデータと市場環境がより重みを増しそうです。
株式市場は「材料出尽くし」――日経平均は反発、物色は大型株にも波及
19日の東京株式市場では、日経平均株価が前日比505円高の4万9507円で取引を終え、反発しました。日銀が利上げを発表した後も、市場では「重要イベント通過」による安堵感が広がり、上げ幅が一時700円を超えて節目の5万円に迫る場面もありました。AI・半導体関連の主力株が相場を押し上げたほか、出遅れ感のあった大型株にも買いが広がり、銀行株の上昇も目立ちました。年末に株価が上がりやすいとされる経験則への期待も重なり、短期的にはリスク選好を支える要因になっています。
債券・為替が握る「株の上値」――長期金利2%超えと円安の物価波及に警戒
もっとも、株式市場が楽観一色というわけではありません。国内債券市場では、長期金利の指標となる新発10年国債利回りが節目の2%を超えました。金利上昇が続けば、株式のバリュエーション(評価)面で重荷になりやすく、実際に取引時間中も金利の上昇とともに日経平均が上げ幅を縮める場面がありました。植田総裁は、長期金利は「市場で形成されることが基本」としつつ、急騰局面では機動的にオペを実施する可能性にも言及しています。
為替についても、円相場が1ドル=155円前後で推移するなか、円安が輸入物価を通じて物価上昇を長引かせるリスクが意識されています。本日、利上げ決定したのに為替は円安方向に進んでおりますから、当面の物価高が予想されますよね。植田総裁は、企業の価格設定行動が積極化している環境下で、円安が基調物価に影響する可能性を「注意したい」と述べました。利上げが遅れ、インフレが加速した場合には、将来的に急ピッチの利上げを迫られ、市場の混乱を招きかねない――そのリスク回避の意味合いも、今回の決定ににじみます。
▼為替推移(2025年12月19日 19:11時点)

為替推移(2025年12月19日 19:11時点)
投資家の見取り図――「緩やかな正常化」期待と、金利上振れリスクの綱引き
今回の利上げは、日銀が“景気を支えつつ正常化を進める”というメッセージを改めて示した点で、投資家にとって大きな節目です。実質金利が大幅なマイナスである限り、日銀は「緩和度合いを少し弱める操作」にとどめつつ、賃上げと物価上昇の好循環が続くかを確認しながら、次の一手を探る構図になります。
当面の市場は、①2026年春闘の賃上げの強さ、②円安が物価に与える波及、③長期金利の上昇ペース、④金融機関の貸出動向――といった材料を手掛かりに、次回以降の利上げ時期と到達点を織り込みにいく展開が想定されます。株式市場にとっては「イベント通過の追い風」と「金利上昇の向かい風」のせめぎ合いが続き、年末は底堅さが意識されても、年明け以降は金利・為替次第で神経質な局面が増えそうです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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2025年12月20日
日銀は利上げしたのに、なぜ円安は加速したのか ――市場が失望したのは「金利水準」ではなく「その先の道筋」

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
BOJ Raises Policy Rate to 0.75%, Signals Continued Normalization
The Bank of Japan (BOJ) decided on December 19 to raise its policy rate by 25 basis points to 0.75%, marking the highest level in about 30 years. The move, approved unanimously by the policy board, takes effect on December 22 and reflects growing confidence in Japan’s economic and inflation outlook.
Governor Kazuo Ueda said downside risks to growth and inflation have declined, citing resilient corporate profits and expectations for continued solid wage increases in the 2026 spring labor talks. While uncertainty remains over U.S. trade policies, the BOJ now views their impact on Japan as more limited than initially feared.
Despite the hike, the BOJ stressed that financial conditions remain accommodative, with real interest rates still deeply negative. The central bank reiterated its intention to continue adjusting the degree of monetary easing if economic and price improvements persist, signaling further rate hikes beyond 2026.
Markets largely viewed the decision as expected. Japanese equities rose on relief that a key policy event had passed, while investor focus shifted to the pace of future hikes, the terminal rate, and how close policy is to Japan’s estimated neutral rate. Rising long-term yields and yen weakness, however, remain key factors for global investors monitoring Japan’s policy normalization path.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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