金融庁は、上場企業のガバナンス改革をさらに進めるため、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を5年ぶりに改訂する方針を明らかにしました。今回の改訂では、企業が保有する現預金の使途や投資方針を明確にし、株主に説明責任を果たすことが求められる見通しです。
この方針は、企業が余剰資金を設備投資・研究開発・人的資本への投資などに積極的に振り向けることを促す狙いがあります。
財務省の法人企業統計によると、資本金10億円以上の企業が保有する現預金残高は2024年度に82兆円と、過去20年で約2倍に拡大しています。一方、株式市場では「日本企業は資金をため込み過ぎている」との指摘が根強く、今回の改訂はその課題に切り込む動きといえます。
高市政権で企業への“キャッシュ圧力”が強まる可能性も
自民党新総裁に就任した高市早苗氏の下では、こうした金融庁の動きに一層の政策的後押しが入るとの見方が広がっています。
高市氏は過去の著書や総裁選で、企業の「現預金課税」や「内部留保の使途の明示」を提唱しており、企業の手元資金の活用に対して強い問題意識を持つ政治家として知られています。
岡三証券の内山大輔シニアストラテジストは、「高市政権下では、企業統治コード改訂を通じてキャッシュリッチ企業への改革圧力が一段と強まる可能性がある」と分析しています。
また、野村証券の中川和哉ESGチーム・ヘッドも「高市政権は安倍政権の路線を踏襲しつつ、ガバナンス改革を加速させる」との見方を示しました。
投資家が注目すべき「キャッシュリッチ銘柄」
市場では、こうした政策変化を背景に、“キャッシュリッチ企業”が再び投資テーマとして脚光を浴びる可能性があります。
ネットキャッシュ(現金・預金から借入金を差し引いた純現金)が総資産の30%以上かつ自己資本比率50%以上を有する企業には、次のような銘柄が挙げられています(いずれも直近の決算時点)。
<社名:ネットキャッシュ比率(%)・自己資本比率(%)>
・オービックビジネスコンサルタント:77.2 ・ 76.2
・ビジョナル:76.2 ・ 70.5
・SANKYO:71.3 ・ 84.2
・任天堂: 60.4 ・ 89.3
・シマノ:59.3 ・ 90.2
・しまむら:49.9 ・ 88.3
・カプコン:49.5 ・ 72.3
・ネクソン:48.6 ・ 81.1
・GMOインターネット:47.6 ・ 50.0
・中外製薬:44.6 ・ 86.1
・東洋水産:42.7 ・ 80.9
これらの企業は、堅固な財務体質を維持しつつも、手元資金の活用方針次第では中長期的な株価上昇の余地を秘めています。
野村証券の中川氏は「企業がキャピタルアロケーション方針を示し、株主還元に加えて成長投資を拡大すれば、日本株全体にとってポジティブな要素になる」と述べています。
ガバナンス改革がもたらす投資機会
今回の統治指針改訂と高市政権の政策スタンスは、企業の資金運用方針に大きな変化を促す可能性があります。
今後は、資本効率の改善・成長投資の拡大・株主還元の強化をキーワードに、キャッシュリッチ企業への注目が一段と高まる見通しです。
投資家としては、企業の資本政策開示やガバナンス方針の変化を丁寧にフォローすることが求められます。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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