大手石油開発企業 株式会社INPEX(インペックス/1605、東証プライム)は2月12日大引け後(15:30)、国際会計基準(IFRS)による2025年12月期決算と2026年12月期の業績見通しを発表しました。通期の最終利益は2025年12月期が前の期比7.8%減の3,938億円となり、2026年12月期も前期比16.2%減の3,300億円を見込むなど、利益面では慎重なガイダンスです。一方で、今期の年間配当を前期比8円増の108円へ増配する方針を示し、市場の関心は「減益予想でも増配できる根拠」に集まっています。
25年12月期は減益も、原油安を吸収した収益構造が鮮明に
2025年12月期は、原油・ガス価格の下落が売上収益を押し下げました。国際原油価格は年間を通じて下落傾向が見られ、期末にはブレント原油が60.85米ドルまで低下し、同社の平均販売価格も1バレル当たり70.69米ドルと、前期比で10.51米ドル下落しています。こうした環境下で、売上収益は前期比11.2%減の2兆113億円となりました。
ただし、利益の落ち込みが相対的に小さかった点は投資家にとって重要です。最終利益は7.8%減にとどまりました。要因を分解すると、平均単価下落と円高(売上の平均為替レートが1米ドル149.60円で前期比円高)が減収要因となる一方、販売数量は原油で前期比4.1%増と伸び、数量面で一定の下支えが効いた構図です。さらに、探鉱費や販管費の抑制も見られ、コストコントロールの成果がにじみます。
イクシスLNGが利益の柱に 会計上の一時要因も還元余力を押し上げ
セグメント別では、海外O&G(イクシスプロジェクト)の存在感が際立ちます。イクシスは売上収益こそ販売価格下落で減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比9.1%増の2,708億円と増益を確保しました。原油・ガス価格の逆風下でも稼げるプロジェクトの比重が高まっている点は、同社の利益耐性を読み解くうえでの核心です。
また、その他の営業収益には、イクシスLNGを構成する豪州子会社の資本金を一部有償減資したことに伴い、在外営業活動体の換算差額の累計額を資本から純損益に振り替えた影響として347億円が含まれています。これはキャッシュ創出力とは別の性格を持つ要素ではあるものの、IFRS上の利益を押し上げ、結果として株主還元の議論においても無視できない材料になり得ます。
26年12月期は保守的ガイダンス 前提油価63ドル・為替151円が示す含み
2026年12月期の見通しは、売上収益が前期比5.9%減の1兆8,930億円、営業利益が同15.7%減の9,570億円、最終利益が同16.2%減の3,300億円と、減収減益を想定しています。会社側は、主に油価を当期比で安く設定したことや、アジア地域における探鉱活動の増加に伴う探鉱費の増加などを背景に挙げています。
注目すべきは前提条件です。ブレント原油を通期平均で1バレル63米ドル、為替を1米ドル151円として算出しており、外部環境を保守的に置いたうえでの見通しであることが読み取れます。投資家から見れば、実際の油価・為替が前提を上回る局面では上振れ余地が生まれやすく、四半期ごとの修正余地を残したガイダンスとも解釈できます。
減益予想でも増配へ 累進配当と総還元性向50%以上が“軸”
それでも同社が増配を打ち出した背景には、株主還元方針の明確化があります。2025〜2027中期経営計画期間中は、1株当たり年90円を起点とする「累進配当」による安定還元に加え、機動的な自己株式取得も行い、総還元性向50%以上を目指す方針です。この枠組みに沿い、2025年12月期は年間100円(中間50円・期末50円)を予定し、2026年12月期は年間108円(中間54円・期末54円)へ引き上げる計画を示しました。
エネルギー企業の配当は原油価格に連動しやすく、局面によっては増減が大きくなりがちです。その中で、同社が累進配当を「コミットメント」として掲げ、減益見通しでも増配方針を貫いたことは、株主還元の予見可能性を高めるメッセージとして受け止められやすいでしょう。
4Qは最終利益が減少も、採算性は上昇 “量と効率”への転換が示唆
直近の10〜12月期(第4四半期)に目を向けると、連結最終利益は前年同期比27.2%減の1,004億円と落ち込みました。一方で、売上営業利益率は49.0%から53.5%へ上昇しており、採算性の改善が確認できます。価格要因で利益が振れやすい一方、コスト管理や事業ポートフォリオの質の改善によって「稼ぐ力」そのものを押し上げようとする動きが表れている点は、投資家が評価軸を整理するうえで重要です。
投資家の視点:INPEXは「原油価格連動株」から「還元重視のエネルギーインフラ株」へ近づくか
今回の決算は、表面的には減益と慎重な見通しが並びます。しかし、原油安の逆風下でも利益が大きく崩れにくくなっていること、イクシスLNGを中心とする高収益資産が利益を下支えしていること、そして累進配当と総還元性向50%以上を掲げて増配に踏み切ったことは、同社の性格が変わりつつあることを示します。
今後の焦点は、保守的に置かれた前提条件に対して実績がどこまで上振れするか、探鉱費増を含む投資局面で利益・キャッシュフローの質を維持できるか、そして還元強化の方針がどの程度「継続性」を持って実行されるかです。原油・為替・地政学といった不確実性は残るものの、減益見通しでも増配を決断した今回のガイダンスは、投資家に対し“配当の下支え”を強く印象付ける内容となりました。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」
ぜひ、ブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699
【Dear Overseas Investors: Summary in English】
INPEX Projects Lower Earnings but Raises Dividend, Highlighting Resilient Cash Flow
INPEX Corp. (TSE: 1605) reported a decline in net profit for the fiscal year ended December 2025, but announced a dividend increase for 2026, underscoring confidence in its cash flow stability despite weaker oil prices.
Net profit for FY2025 fell 7.8% year-on-year to ¥393.8 billion, as lower crude prices weighed on revenue. Brent crude averaged around $70 per barrel during the year, down significantly from the previous period. Revenue declined 11.2% to ¥2.01 trillion. However, profit proved relatively resilient compared with the drop in oil prices, supported by higher crude sales volumes and cost controls.
The Ichthys LNG project remained a key earnings driver, posting solid profit growth despite softer commodity prices. In the fourth quarter, net profit fell 27.2% year-on-year to ¥100.4 billion, though the operating margin improved to 53.5%, reflecting enhanced cost efficiency.
For FY2026, INPEX forecasts net profit of ¥330.0 billion, down 16.2% year-on-year, based on conservative assumptions of $63 per barrel Brent and an exchange rate of ¥151 per dollar.
Despite the projected earnings decline, the company plans to raise its annual dividend to ¥108 per share, up from ¥100 in FY2025. Under its medium-term plan, INPEX targets a total payout ratio of 50% or more, combining progressive dividends with flexible share buybacks.
The results suggest INPEX is positioning itself not only as an oil-linked producer, but increasingly as a cash-generative energy infrastructure player with a strong shareholder return commitment.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





コメント