自社株買い規模を2500億円に拡大、長期成長戦略を再構築
フジ・メディア・ホールディングス(HD)が9月30日、これまで2029年度までに1000億円超としていた自社株買いの規模を2500億円規模に拡大すると発表しました。さらに、成長投資についても当初計画の5年で2500億円から、長期的に累計4000億円規模へと拡大を検討するとしています。株主還元と事業成長の両立を明確に打ち出した形です。

フジテレビ本社/2025年5月10日. (C) 撮影:SHUN(STOCK EXPRESS編集部)
私は時々、撮影でフジテレビに行くのですが、今フジテレビを巡って何が起きているのでしょうか。以下に見ていきましょう。
村上ファンド側の要求に応える形で改革を加速
今回の方針転換の背景には、アクティビスト投資家である村上世彰氏が率いる投資会社「レノ」からの強い要請がありました。レノは9月末までに企業価値向上に関する具体策を公表するよう書簡で求め、PBR(株価純資産倍率)1倍の早期実現や、不動産子会社サンケイビルのスピンオフ(分離)検討状況の開示を要求していました。
フジ・メディアHDは当初、11月10日に予定される決算発表までに方向性を示すと表明していましたが、今回の発表はそれに先立つかたちで改革への姿勢を明確化したものです。これにより、村上氏側の意向を事実上受け入れる構図となりました。
株主構成と市場の注目
村上氏および長女の野村絢氏を含む関係投資会社のフジ・メディアHD株保有比率は17.33%(8月28日時点)に達しており、筆頭株主の座を占めています。加えて、米ダルトン・インベストメンツが7.51%、SBI系レオス・キャピタルワークスが5.1%を保有。三者合計で約2400億円(9月末時点の株価ベース)に上る持ち分を持つなど、経営への影響力は無視できない規模です。
このような動きは、企業統治改革が進む日本市場において、アクティビスト投資が「企業価値向上の触媒」として期待される流れを象徴しています。
ROE8%超を目標、資産整理と成長分野への再投資
フジ・メディアHDは、自己資本利益率(ROE)8%以上の実現を新たな中期目標に掲げました。将来的な営業利益を750億円程度、自己資本を6500億円程度に引き上げる方針です。
24年3月期の営業利益は335億円にとどまりましたが、人権問題による影響を乗り越え、メディア・コンテンツ事業や不動産事業の収益性を見極めて整理を進めるとしています。また、保有資産についても売却を含めた見直しを検討し、創出した資金を成長性の高い事業領域に再投資する計画です。
成長戦略の柱:「安定収益」と「高収益」領域の明確化
事業構成については、安定的に利益を上げられる分野と、高収益が期待できる分野に再編成します。特に、知的財産(IP)の創出・獲得、新規事業開発を高収益領域と位置づけ、グループ全体の収益ドライバーとして強化していく方針です。
自社株買いによる株主価値向上と同時に、長期的な成長基盤の再構築を進めることで、PBR1倍超の達成を狙います。
今後の注目ポイント
フジ・メディアHDの次なる焦点は、11月10日に予定される決算発表です。この場で新たな成長戦略や資本政策の詳細が示される見込みであり、投資家にとって重要な判断材料となります。
市場では、自社株買い拡大が株価を押し上げる要因として好感される一方、村上氏との対立構造やサンケイビルのスピンオフ方針など、経営判断の行方にも注目が集まっています。先週、この発表があったわりには、フジ・メディアHDの株価は下落基調でしたが、明日から始まる来週、どうなっていくか、見極めていきたいと思います。
フジ・メディアHDが「アクティビスト対応」を契機にどこまで企業価値向上に踏み込めるのか――同社の次の一手が、日本企業の資本効率改善の象徴となる可能性もあります。フジテレビを巡る株主との攻防は、2005年のライブドア騒動の際に世間を騒がせましたが、20年たった今、再び村上氏を中心とした株主の動きに注目が集まっていることは実にドラマティックですよね。どのような展開になっていくのか、期待が高まります。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」
ぜひ、ブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699





コメント