リガクHD、次世代半導体向けX線計測装置が起爆剤に ――キオクシア採用をテコに株価3連騰

リガクHD、次世代半導体向けX線計測装置が起爆剤に ――キオクシア採用をテコに株価3連騰 株式劇場

X線分析装置で世界シェア首位級のリガク・ホールディングス株式会社(268A)が、株式市場で一気に存在感を高めています。12月5日の株価は3連騰となり、取引時間中に一時1,180円まで上昇。午後1時4分時点で前日比148円高(+14.52%)の1,167円と大幅高で推移し、終値は1,140円(前日比+121円、+11.87%)となりました。この日の値上がり率 第3位。

▼リガクHD 株価推移(2025年12月1日〜5日)

リガクHD 株価推移(2025年12月1日〜5日)

リガクHD 株価推移(2025年12月1日〜5日)

その背景には、次世代半導体向けの新型X線メトロロジー装置「MF3400」の販売開始と、大手半導体メーカーによる採用決定という、業績拡大を期待させる材料が控えています。

XTRAIA MF-3400のイメージイラスト

XTRAIA MF-3400のイメージイラスト

リガクHDについて、以下にて詳しく見ていきましょう!

次世代X線メトロロジー「MF3400」が示す技術優位性

リガクHDが12月4日に発表したのが、半導体製造工程においてウエハー上の膜厚と組成を計測する新装置「MF3400」です。生成AIの普及やデータセンターの拡大に伴い、半導体には「高性能」と「省電力」を同時に満たすことが求められ、内部構造は平面的な設計から3D構造へと急速にシフトしています。

3D NANDフラッシュや先端ロジックでは、ナノレベルの金属膜・絶縁膜が多層的に積み上がり、その厚みや材質、結晶構造を、製品を壊さず(非破壊)かつ高精度に測定することが必須条件となっています。MF3400はこのニーズに応えるべく、
・X線強度を従来機比約2倍に高めた新X線源
・新たな搬送システムによるスループット向上(時間当たり測定ウエハー枚数が最大2倍)
・「蛍光X線」「X線反射率」「X線回折」の3つの分析機能を1台に統合
といった特徴を備えています。

これにより、「膜が何でできているか(材質)」「どれくらいの厚さか」「原子がどのような規則性で並んでいるか(結晶構造)」を、1台の装置で自動的かつ高速に把握できる点が最大の強みです。従来は複数の専用装置を使い分けていた品質管理プロセスを1台に集約できる可能性があり、顧客の量産ライン全体の生産性向上に直結する“ゲームチェンジャー”として市場が評価しているとみられます。

キオクシア量産ライン採用が信頼性の“保証書”に

この新製品の説得力をさらに高めているのが、3D NANDフラッシュメモリーの世界的リーダーであるキオクシアの量産ラインへの採用がすでに決定している点です。
単に「高性能な新製品を開発しました」というレベルではなく、世界トップクラスの半導体メーカーが自社の生命線である量産ラインに導入を決めた事実は、MF3400の性能・信頼性が実戦レベルで認められたことを意味します。
この導入実績は、他のDRAM・ロジック半導体メーカーにも大きなインパクトを与えるとみられ、「あのキオクシアが採用した装置」という強力なレファレンスが追随需要を生む可能性は高いと考えられます。会社側は、今回のMF3400と前モデルを合わせ、2026年度に60億円超の売上高を見込んでおり、中期的な成長ドライバーとして位置付けています。

「第3四半期が大底」――業績はV字回復局面へ

一方で、足元の業績だけを見ると、直近の株価急騰とは対照的な数字も並びます。2025年12月期第3四半期(1〜9月累計)は、減収減益となり、営業利益は前年比44.6%減と大きく落ち込みました。このギャップをどう評価するかが、投資家にとっての重要なポイントです。
会社側は決算説明の中で、第3四半期を「大底」と位置付けています。その背景としては、
・半導体市場全体で、量産向け投資が一時的にスローダウンし、研究開発向け投資へのシフトが進んだこと
・前年度に中国の補正予算による特需があった反動減
・部品事業の一部(EUV向け多層膜など)が在庫調整の影響で一時的に低迷
といった主にマクロ要因・一時要因が重なったことが挙げられます。いずれも同社の技術競争力が揺らいだわけではなく、需要のタイミングの問題と見ることができます。

第4四半期は売上125億円・営業利益率55%の“歴史的水準”計画

注目されるのが、第4四半期(10〜12月)の会社計画です。半導体部門だけで売上高125億円、営業利益率は**55%**という、装置メーカーとしても歴史的な高水準を見込んでいます。
これほど強気にも見える数字について、市場は当初懐疑的な見方も持っていましたが、その確度が高いと受け止められ始めたことで、今回の株価急騰につながっていると考えられます。
決算資料などによると、第4四半期の売上予想のうち、不確定要素のある案件(条件交渉中など)はすでに全体の5%程度まで縮小。言い換えれば、約95%は受注がほぼ固まっている案件で構成されており、計画達成に向けた視認性は高い状況です。
この高収益を支えるのが、まさに高付加価値の新製品MF3400をはじめとする先端装置です。大型案件の計上タイミングが第4四半期に集中することで、売上・利益率の急回復、いわゆるV字回復が実現するとのストーリーが描かれています。
もちろん、半導体市場は依然として外部環境の変動が大きく、短期的な需給や投資動向には不確実性が残りますが、現時点では会社側が示す強気計画に対し、市場が一定の信頼を寄せ始めていると言えそうです。

「Lab to Fab」戦略で描く長期成長ストーリー

リガクHDの中長期的な成長戦略のキーワードとなっているのが**「Lab to Fab(ラブ・トゥ・ファブ)」**です。
これは、長年にわたり大学や研究機関向けに提供してきた世界最高水準の分析技術(Lab)を、半導体工場など産業界の量産ライン(Fab)で使える計測・検査装置へと展開していくというコンセプトです。
MF3400はまさにこの戦略が結実した代表例であり、研究室レベルの超高精度分析を、量産ラインで求められるスピード・安定性で提供することに成功しました。同社はこの成功モデルを、今後は次のような成長分野へ水平展開していく方針です。

・次世代電池分野:電池を分解せずに内部の状態を3次元的に可視化し、性能・寿命・安全性の評価に応用
・ライフサイエンス・医薬品分野:有効成分の結晶構造を原子レベルで解析し、新薬開発の効率化や品質保証に活用

また、半導体分野では次の成長戦場とされる「アドバンスド・パッケージング(高度パッケージ技術)」向けの検査装置開発も進めています。複数のチップを縦横に積み重ねて接続する“チップの超高層ビル群”を、非破壊で高精度に評価できる計測技術は、今後さらに重要性を増すことが予想されます。
こうした動きは、リガクHDが単なる装置メーカーにとどまらず、産業構造の高度化・高性能化を支える“インフラ的存在”へと進化していく可能性を示唆しています。

40億円規模の自社株買い・安定配当で株主還元も強化

成長投資と並んで、株主還元姿勢も投資家にとって見逃せないポイントです。リガクHDは現在、最大40億円(発行済み株式総数の2.62%)規模の自己株式取得を進めており、11月末時点で既に約32.6億円、計画の8割以上を取得済みです。
自社株買いは、一株当たり価値の向上に加え、会社側が「現状の株価は割安」と判断しているメッセージとも受け取られます。経営陣の自信の表れとして、市場はポジティブに評価している模様です。
配当についても、連結配当性向30%を目処とした方針を掲げており、今期は年間18.8円の配当を予定。成長投資と株主還元のバランスに配慮したキャピタルアロケーションを志向している点は、中長期投資家にとって安心材料と言えるでしょう。

投資家として押さえておきたいポイントとリスク

リガクHDの株価は、新製品「MF3400」の成功とキオクシア採用という強力な材料、そして第4四半期以降のV字回復期待を背景に、大きく上昇しています。中長期的にも「Lab to Fab」戦略のもと、半導体から電池・ライフサイエンスまで応用範囲を広げる成長ストーリーは魅力的です。

一方で、投資判断にあたっては以下の点にも留意が必要です。
・半導体投資サイクルの変動による装置需要のブレ
・個別大型案件への依存度が高いことによる四半期ベースの業績変動
・新分野(電池・ライフサイエンスなど)への事業展開が計画通り進むかどうか

足元の株価は、短期間で大きく上昇しているだけに、短期的な過熱感や調整リスクも意識する必要があります。ただし、技術的優位性・高付加価値製品による収益力・明確な成長戦略・株主還元姿勢という「技術・業績回復・経営戦略」の三拍子が揃いつつあることは確かです。
半導体業界の競争軸が、「1つのチップをどこまで微細化できるか」から、「複数のチップをいかに賢く組み合わせるか」へと移行する中で、複雑な立体構造内部を非破壊で“見通せる”企業の重要性は今後さらに高まる可能性があります。
リガク・ホールディングスが、その新しい産業構造の鍵を握るプレーヤーへと成長できるか――今回の株価上昇は、そのポテンシャルに市場が一歩先回りして反応し始めた局面と捉えることもできそうです。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK EXPRESS車掌 SHUN

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Rigaku Holdings Shares Surge on Breakthrough X-Ray Metrology Tool Adoption — New Semiconductor Inspection Technology Triggers Strong Investor Interest

Rigaku Holdings (268A), a global leader in X-ray analysis systems, saw its shares rally for a third consecutive day on December 5, closing 11.9% higher at ¥1,140. The surge followed the announcement of its next-generation semiconductor metrology system MF3400, which has already been selected for use in Kioxia’s 3D NAND mass-production line.

The MF3400, designed to measure film thickness and composition in advanced semiconductor wafers, significantly boosts throughput by doubling X-ray intensity and integrating an enhanced wafer-handling system. The tool also combines three analytical functions—XRF, XRR, and XRD—into a single platform, enabling manufacturers to evaluate material, thickness, and crystal structure simultaneously. This multifunctional design is expected to streamline quality-control workflows and support the industry’s rapid shift toward complex 3D device architectures driven by AI and hyperscale data-center demand.

Rigaku forecasts over ¥6 billion in sales from the MF3400 series by FY2026, with additional adoption under evaluation by DRAM and logic chipmakers. While the company posted weaker results through Q3 due to delayed investment cycles and temporary market headwinds, management emphasizes that Q3 represented the “bottom,” with a sharp recovery expected in Q4. Approximately 95% of forecasted semiconductor-segment revenue for the quarter is already backed by secured orders, supporting an exceptional projected operating margin of 55%.

Beyond the near-term rebound, Rigaku’s long-term strategy centers on its “Lab to Fab” model—leveraging research-grade analytical technology for high-volume manufacturing applications. Following success in semiconductors, the company aims to expand into next-generation battery and life-science markets. Shareholder returns also remain a priority, with a ¥4 billion share buyback program already more than 80% executed.

For global investors, Rigaku now stands out as a key enabler of advanced semiconductor manufacturing—particularly as industry competition shifts from simple scaling to sophisticated 3D integration.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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