官民で出資を積み増し、民間32社で1676億円に
最先端半導体の国産量産を目指すラピダスを巡り、資本政策が大きく動きました。赤沢亮正経済産業相は2月27日、民間企業からの出資が計32社・総額1676億円に達したと発表しました。当初の想定(1300億円)を上回ったことで、民間側の関与の広がりと期待の強さを印象づける格好です。出資する32社は、ソニーグループ、ソフトバンク、トヨタ自動車、ホンダ、キヤノン、デンソー、富士通、NEC、古河電気工業、JX金属、NTT、そしてメガバンク3行らの名前があがっています。
これに加えて、政府側も情報処理推進機構(IPA)を通じて1000億円を出資したことが明らかになりました。従来、ラピダスは民間8社などから73億円を集めていましたが、今回の追加資本投入により、政府と民間32社の合計出資は約2750億円規模に膨らみました。さらに政府は2026年度当初予算案に追加出資分として1500億円を計上しており、4月以降に上乗せ出資を計画しています。この資金まで含めると、官民の出資額はおよそ4250億円に達する見通しです。
政府は筆頭株主でも「議決権は11.5%」、有事に備えた設計
注目されるのは、政府が大口出資を行いながら、平時の経営関与を抑えるよう設計している点です。一連の追加出資で政府は筆頭株主となる見込みですが、議決権比率は11.5%にとどめる方針とされました。民間主導で迅速な経営判断を実現するため、政府が保有する株式の大半は議決権なしとした格好です。
一方で、経営が悪化し、協議しても立て直しが見込めない場合などには、議決権なし株式を議決権ありに転換できる仕組みも用意されます。加えて、政府は取締役の選任・解任や合併など重要事項に拒否権を持つ「黄金株」も保有します。平時は民間主導、有事には統治権限を強められる――経済安全保障を背景にした“二段構え”の資本ガバナンスが、今回の出資スキームの特徴と言えそうです。
2ナノ量産は27年度後半目標、支援総額は累計3兆円規模へ
ラピダスは回路線幅2ナノメートルの最先端半導体を、2027年度後半に量産する目標を掲げています。政府はこれまで研究開発の委託費として1.7兆円を投じ、今後も2026~27年度に約9300億円を追加支援する方針です。政府出資分と補助金を合わせた累計支援は、3兆円規模に達する計算になります。
投資家目線では、国策としてのコミットメントが一段と強まったこと自体は安心材料になりやすい一方、目標達成に向けた実行段階のハードルの高さも改めて意識されます。2ナノ量産は世界的に見ても難易度が高く、量産技術の確立と顧客獲得、そして資金の継続確保が同時並行で求められるためです。
融資は最大2兆円意向、それでも資金ギャップが課題に
資金面では、国内メガバンク3行が2027年度以降に最大で計2兆円規模の融資を行う意向を示しています。もっとも、政府が予定する債務保証を活用することが前提とされ、資金調達は“官の関与”が重要な前提条件になっています。
一方、ラピダスは将来的に1.4ナノ半導体の量産も視野に入れており、2ナノ分を含めた総投資は7兆円超が必要と見積もられています。現時点で政府支援や民間の出融資で5兆円程度を確保する計画とされるものの、なお新たに2兆円超が必要になる試算です。今回の出資増額は前進である一方、長期戦の資金計画としては「序盤の資本増強」に過ぎず、追加的な出資・融資、さらには外部資本の呼び込みが焦点となります。
関連銘柄は「装置・素材・インフラ」へ視線、進捗管理がカギ
ラピダスは未上場であるため、株式市場では装置メーカー、材料メーカー、周辺インフラなどバリューチェーン企業への波及が注目されます。最先端プロセスでは、製造装置の更新や材料の高度化が同時に必要になり、設備投資のニュースフローが関連セクターの評価を左右しやすい局面が続きます。
もっとも、投資家にとって重要なのは、期待先行のテーマ性だけではなく、技術進捗と資金調達が計画通りに積み上がっているかを点検することです。今後は、追加出資の実行時期、メガバンク融資の具体化、量産工程の確立度合い、そして海外顧客の獲得状況が、関連銘柄を含めた市場の評価を左右するポイントになりそうです。
ラピダスへの出資企業一覧
ご参考に、出資企業名を下記にてご紹介します。
■既存出資会社
• トヨタ自動車 (7203)
• デンソー (6902)
• ソニーグループ (6758)
• ソフトバンク (9434)
• NTT (9432)
• 日本電気 (6701)
• キオクシアHD (285A)
• 三菱UFJ FG (8306)
■新規出資会社
【製造・精密・化学】
• 本田技研工業 (7267)
• 富士通 (6702)
• キヤノン (7751)
• セイコーエプソン (6773)
• 京セラ (6971)
• 富士フイルムHD (4901)
• 大日本印刷 (7912)
• 古河電気工業 (5801)
• ウシオ電機 (6925)
• 能美防災 (6744)
【エネルギー・商社・物流】
• ENEOS HD (5020)
• 北海道電力 (9509)
• 長瀬産業 (8012)
• NIPPON EXPRESS HD (9147)
• アルゴグラフィックス (7595)
【金融・銀行】
• みずほFG (8411)
• 三井住友FG (8316)
• 日本政策投資銀行 (非上場)
• 北洋銀行 (8524)
• ほくほくFG (8377)
• 千葉銀行 (8331)
• 九州FG (7180)
• 日本IBM (非上場)
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Japan Boosts Rapidus Funding to ¥267.6 Billion as Government Secures “Golden Share”
Japan’s government and 32 private-sector companies have committed a combined ¥267.6 billion (approx. $1.8 billion) in new equity funding to Rapidus, the state-backed chip venture targeting mass production of 2-nanometer semiconductors by fiscal 2027. Private companies contributed ¥167.6 billion—exceeding initial expectations—while the government invested ¥100 billion through a state agency.
Including previous funding, total equity contributions now reach roughly ¥275 billion, with additional capital planned that could lift cumulative public-private equity to about ¥425 billion. Separately, the government has already allocated ¥1.7 trillion in R&D support and plans a further ¥930 billion over fiscal 2026–27, bringing total state support to around ¥3 trillion.
While the government will become the largest shareholder, its voting rights will be capped at 11.5% under normal conditions. It will also hold a “golden share,” granting veto power over key strategic decisions. The structure is designed to preserve private-sector management autonomy while safeguarding national economic security interests.
Rapidus estimates total investment needs of more than ¥7 trillion, including future 1.4nm production. Although public funding and planned bank loans could cover around ¥5 trillion, a funding gap of over ¥2 trillion remains. Investors are closely watching pilot-line progress, additional financing commitments, and customer acquisition as key milestones in determining the project’s long-term viability.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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