── EPC苦戦の一方で、中長期の成長テーマが浮上 ──
東洋エンジニアリング株式会社(TOYO ENGINEERING CORPORATION)の株式が、深海レアアース開発とカーボンニュートラル関連事業という2つの成長テーマを背景に、投資家からの注目を集めています。株価はすでに高値圏にあり、短期的な過熱感を警戒する声も出ていますが、機関投資家を中心に中長期での再評価余地を指摘する見方も根強い状況です。
伝統的EPC専業から「脱炭素×資源安全保障」企業へ
東洋エンジニアリングは、化学プラントや石油精製プラントなどのEPC(設計・調達・建設)事業を70年以上手掛けてきた老舗エンジニアリング企業です。国内外で多数の実績を持ち、プロセス設計や合成ガス技術で高い評価を受けてきました。
一方で同社は近年、「カーボンニュートラル時代のインフラソリューション企業」への転換を掲げ、脱炭素燃料やCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)、そして深海レアアース開発といった新領域に積極的な投資を行っています。単なるプラント建設会社から、エネルギー転換と資源安全保障の両面で日本の産業構造を支える存在へと変貌しつつある点が、株式市場でも意識され始めています。
足元決算は増収減益、EPCの採算悪化が重荷
2025年3月期第3四半期(2024年4〜12月)の連結業績は、売上高2,056億円と前年同期比9%増と堅調な伸びを示しました。大型案件が進捗していることを反映したものです。しかし、営業利益は20億円と63%の大幅減益となり、利益面では厳しさが際立つ決算となりました。
要因としては、固定価格契約が主流のEPCビジネスにおいて、資材価格や人件費の高騰といったコスト増を十分に転嫁できていない構造的な問題が挙げられます。親会社株主に帰属する四半期純利益も23億円と25%減少し、中期経営計画で掲げる「2023〜2025年度3カ年平均で純利益50億円以上」という目標達成には、最終四半期での大幅な巻き返しが不可欠な状況です。
こうした中、同社は「採算性の低い案件は受注しない」「価格競争に巻き込まれない」という方針を明確化し、EPC事業自体の質を高める方向に舵を切っています。短期的には売上や受注のブレが生じる可能性はありますが、中長期の収益安定に向けた“体質改善期”にあるとも言えます。
脱炭素インフラで技術優位、非EPC比率の向上がカギ
カーボンニュートラル関連では、東洋エンジニアリングが長年培ってきたアンモニア・尿素プラントなどの合成技術が、燃料アンモニア、SAF(持続可能な航空燃料)、グリーンメタノールといった次世代燃料の製造プロセスにそのまま応用できる点が強みです。
日本国内では、燃料アンモニアやSAF分野を中心に、同社が関わりうるEPC需要は累計5兆円規模とも試算されています。加えて、プラント完成後の運転・保守(O&M)や、DX-PLANT・HEROといったデジタルソリューションによる運転最適化サービスなど、非EPC領域の収益機会が広がっていることも重要です。
同社は2025年度に非EPC比率25%、2030年度には50%を目標に掲げています。景気変動の影響を受けやすいEPCに対し、O&Mやデジタルサービスは長期契約で安定性が高く、利益率も高いケースが多いことから、この指標の進捗は投資家が注視すべきポイントとなります。
深海レアアースは「国家戦略×オプション価値」
もう一つの成長ドライバーが、深海レアアース開発です。日本近海、特に南鳥島周辺の深海には、高濃度のレアアースを含む「レアアース泥」が膨大な量で存在するとされており、これが商業ベースで採取可能になれば、日本はレアアースの自給体制に近づくと見られています。
ただし、水深5,000〜6,000mの深海からレアアースを回収する技術は世界的にも前例がなく、技術的ハードルは非常に高いと言えます。東洋エンジニアリングは、JAMSTECとともにこの難題に挑む立場にあり、海底で採掘・選鉱までを行う「レアアース・サブシー・ファクトリー」構想の中核を担っています。
深海レアアースは放射性物質をほとんど含まないとされ、環境負荷が相対的に小さいことも大きな特徴です。世界的に環境規制が強まる中、クリーンなレアアース資源としてプレミアム評価を受ける可能性も指摘されています。
現時点で収益貢献はありませんが、地政学的緊張の高まりとともに、その「オプション価値」が市場で意識されやすいテーマだと言えます。
3つのシナリオで見る東洋エンジニアリングの株価イメージ
東洋エンジニアリング株を評価する上では、単一の予測に依存するのではなく、複数のシナリオを想定してリスクとリターンを整理しておくことが有効です。
まずベースシナリオでは、中期経営計画はおおむね達成軌道に乗るものの、劇的なサプライズまでは伴わないケースを想定します。既存EPC事業はコスト高の影響を受けつつも採算が徐々に改善し、純利益50億円目標は辛うじて達成、あるいはわずかな未達にとどまるイメージです。一方で非EPC比率25%という重要指標は予定通り達成し、カーボンニュートラル関連案件も着実に増加していきます。レアアース事業は計画通り技術開発が進むものの、商業化は2030年代前半と見込まれ、短期的な業績押し上げ効果は限定的です。このケースでは、株価は現在水準から中期的に2〜4割程度の上昇余地が見込まれるものの、“大化け”というよりは堅実な成長ストーリーとして評価される展開が想定されます。
次にブル(強気)シナリオです。こちらはカーボンニュートラル市場とレアアース開発の両面で追い風が強まり、同社の変革が市場予想を上回るスピードで進むパターンです。燃料アンモニアやSAFなどの大型案件を2026年前後に相次いで獲得し、数千億円規模のプロジェクトがポートフォリオに加わります。その結果、非EPC比率25%という目標を前倒しで達成し、O&Mやデジタルサービスの利益貢献も一段と高まります。さらにレアアースを巡る地政学リスクが再燃し、日本政府が国産レアアース開発への支援を強化した場合、同社技術の戦略的重要性がクローズアップされます。技術的なマイルストーン達成のニュースなどが重なれば、投資家の評価は一気に変わり、長期的には株価が現在の2倍近くまで再評価される可能性も否定できません。
一方、ベア(弱気)シナリオでは、EPC事業の採算悪化が長引き、インフレとコスト高に苦しめられる状況が続くことを想定します。価格転嫁が進まず、第3四半期で見られたような低収益が常態化すると、カーボンニュートラル分野への投資余力も制約されます。脱炭素インフラ市場では国内外の競合が増え、価格競争が激しくなることで、同社の技術優位が十分な収益に結びつかないリスクもあります。レアアース開発も予算や技術面での制約から遅延し、商業化の目処が見えにくくなった場合、市場は同社を再び「リスクの高いEPC企業」として評価し直す可能性があります。この場合、株価は現在水準から2〜3割程度の下落リスクを抱える展開も想定されます。
SWOTで整理する東洋エンジニアリングのポイント
こうした多様なシナリオを踏まえつつ、同社の立ち位置をSWOTの観点で整理しておくと、投資判断の手掛かりがより明確になります。
まず強みとしては、アンモニアや化学プラントで培ってきた70年以上の合成技術とエンジニアリング実績が挙げられます。これが燃料アンモニアやSAF、グリーンメタノールなどの脱炭素燃料プラントにスムーズに展開できる点は大きな優位性です。また、DX-PLANTやHEROなどのデジタルサービスは、一度プラントが稼働すれば長期にわたり安定収益を生み出すポテンシャルを持っています。さらに深海レアアースという世界的にも希少性の高い技術開発に関わっていることは、将来的に独自のポジションを築く可能性を秘めています。
一方で弱みとしては、EPC事業の収益性が依然として不安定な点が挙げられます。固定価格契約の多さからコスト変動のリスクを自社が抱え込みやすく、インフレ局面では利益を圧迫しやすい構造です。また、中期経営計画の数値目標の達成に黄信号がともりつつあることは、市場との信認という点で慎重な見方を誘いやすい要素となっています。
機会の面では、カーボンニュートラルという世界的な潮流が追い風となります。日本国内だけでなく、アジア新興国を含めて今後膨大なインフラ投資が想定される分野であり、先行して主要案件を獲得できれば、長期のO&Mやライセンス収入に結びつく可能性があります。レアアースについても、中国依存からの脱却という国家戦略が明確である限り、政府支援の拡大や開発加速が期待しやすい環境が続きます。
一方、脅威としては、世界的なインフレの長期化や資材価格の高止まりがEPC事業の足を引っ張るリスクがあります。また、脱炭素関連市場には多くの競合企業が参入しており、価格競争が激化した場合、想定ほどの高収益モデルを築けない可能性も否定できません。レアアース開発に関しても、技術的な難度の高さや国家予算の制約、さらには国際情勢の変化によってプロジェクトの優先度が変動するリスクがあります。
投資家に求められるスタンス:短期のブレと中長期テーマのバランス
東洋エンジニアリングへの投資は、短期的にはEPC事業の収益変動をどう許容するか、中長期的には脱炭素インフラと深海レアアースという2つの成長テーマをどこまで評価するか、というバランスが問われる銘柄だと言えます。
決算ごとに、営業利益率の改善度合いや非EPC比率の推移、脱炭素関連の大型案件の受注状況、レアアース技術の進捗といった指標を継続的に確認していくことが重要になります。短期的なボラティリティを受け入れられる投資家にとっては、日本のエネルギー戦略と資源安全保障という大きなテーマに連動する銘柄として、ポートフォリオの一部に組み入れる選択肢になり得ます。一方で、安定性を重視する投資家であれば、非EPC比率の目標達成や収益構造の安定化が確認されてから参入する「待ちのスタンス」も考えられます。
いずれにしても、東洋エンジニアリングは日本の産業構造転換の一角を担う可能性を持つ企業として、今後も市場の注目を集め続ける存在でありそうです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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2025年12月23日
東洋エンジニアリング、南鳥島レアアース期待で株価3連騰!

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Toyo Engineering: Positioned at the Crossroads of Decarbonization and Strategic Resources
Toyo Engineering is gaining renewed attention as Japan accelerates its energy transition and strengthens resource security. While the company faces short-term earnings pressure in its traditional EPC business due to rising material and labor costs, its mid- to long-term growth drivers are becoming increasingly compelling.
The company is leveraging more than 70 years of chemical-process expertise to enter high-growth decarbonization markets such as fuel ammonia, sustainable aviation fuel (SAF), green methanol, and CCUS. These emerging sectors are expected to create multi-trillion-yen infrastructure demand in Japan alone. Toyo aims to raise the share of non-EPC, high-margin services—such as plant optimization and digital O&M—to 25% by FY2025 and 50% by FY2030, a shift that could structurally improve profitability.
A second major catalyst is the deep-sea rare-earth project near Minami-Tori-shima, conducted with Japan’s JAMSTEC. Toyo plays a central role in developing unprecedented technology to extract rare-earth-rich seabed mud from depths of 5,000–6,000 meters. This “subsea factory” approach could allow Japan to secure a stable, environmentally cleaner rare-earth supply, reducing dependence on China. Although commercialization is expected in the early 2030s, the project carries significant strategic “option value,” especially amid rising geopolitical tensions.
In the near term, Toyo’s share price will be influenced by recovery in EPC margins, progress in non-EPC revenue expansion, large-scale decarbonization project wins, and technological milestones in rare-earth development. For investors with a medium- to long-term horizon, the company represents a unique play on Japan’s green transformation and resource-security strategy.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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