9月2日の東京株式市場で、小物家電メーカーの株式会社ツインバード(東証スタンダード、証券コード6897)の株価が大幅に反発しました。一時は前日比93円、率にして13.88%高となる763円まで上昇し、終値は同32円高、4.78%高の702円となりました。
▼ツインバード株価推移(2026年9月1日~2日)

ツインバード株価推移(2026年9月1日~2日)
株価上昇の直接的なきっかけとなったのは、パソコン周辺機器メーカーのバッファローを率いる牧寛之社長が、ツインバード株の6.98%を保有する大株主に浮上したことです。牧氏は単なる純投資にとどまらず、ツインバードの資本政策や第三者による買収提案に対して、株主として積極的に関与する可能性を示しました。
ツインバードをめぐっては、ジャパネットホールディングスが1株800円でのTOB(株式公開買い付け)と完全子会社化を提案しています。しかし、ツインバードの取締役会は8月31日、企業価値や株主共同の利益の観点から、この提案に反対する意見を表明しました。
こうした状況に牧氏の大量保有が加わったことで、市場では「牧氏がツインバード株をさらに買い増すのではないか」「ジャパネットHDがTOB価格を引き上げるのではないか」「第三者が対抗提案を行う可能性もあるのではないか」といった思惑が広がり、短期資金を巻き込んだ買いにつながりました。
以下にて深堀していきます。
株価上昇の直接要因は、牧寛之氏による6.98%の大量保有
9月1日付で関東財務局に提出された大量保有報告書により、牧寛之氏がツインバード株を6.98%保有していることが明らかになりました。上場企業の株式を5%超取得した場合、金融商品取引法に基づく大量保有報告書の提出が必要となります。
市場が特に注目したのは、6.98%という保有比率だけではなく、報告書に記載された保有目的です。牧氏は、ツインバードが公表した中期経営計画や資本政策を着実に実行し、「株主総利回りの最大化」が達成されることを期待して保有するとしています。
さらに、ツインバードに対する第三者からの買収提案については、すべての株主が公平に支配権プレミアムを享受できる取引を支持する姿勢を示しました。一方、既存株主の利益を損なったり、特定の株主を差別的に取り扱ったりする手続きや取引には反対し、必要に応じて「あらゆる手続き」を取る趣旨も記載されています。
これは、牧氏がツインバードの経営や買収をめぐる動向を静観するだけではなく、株主価値向上のために一定の働きかけを行う可能性を示す内容です。大量保有報告書の保有目的には、状況に応じて重要提案行為などを行う可能性も盛り込まれており、市場では「物言う株主」としての動きが意識されました。
牧氏はBASEなどへのTOB実績を持つ投資家
牧寛之氏は、パソコン周辺機器メーカーのバッファローを率いる事業会社の経営者である一方、上場企業に幅広く投資する投資家としても知られています。
特に市場参加者が意識しているのが、2025年に電子商取引支援サービスを手掛けるBASEや、完全栄養食を展開するベースフードに対してTOBを実施した経緯です。事業会社の経営者が、割安と判断した上場企業の株式を取得し、株主価値の向上や資本関係の構築を目指す行動として注目されました。
このため、ツインバード株の6.98%取得についても、市場では一般的な資産運用目的の投資とは受け止められていません。今後、牧氏が保有比率をさらに高める可能性や、ツインバードの資本政策に具体的な提案を行う可能性、さらには何らかの買収提案につながる可能性まで意識されました。
もっとも、牧氏がツインバードにTOBを実施すると決まったわけではありません。現時点で確認できる事実は、同氏がツインバード株を6.98%保有し、株主総利回りの最大化や、公平な支配権プレミアムを伴う買収取引を支持する姿勢を示したことです。
9月2日の株価上昇には、こうした事実に加え、過去の投資実績から連想された将来の行動に対する期待が大きく反映されたと考えられます。
ジャパネットHDの1株800円TOB提案にツインバードは反対
ツインバードをめぐる状況を理解するうえで欠かせないのが、ジャパネットHDによる買収提案です。ジャパネットHDは6月19日、ツインバード株を1株800円で取得するTOBを実施し、同社を完全子会社化する方針を公表しました。
ただし、これは公表時点ですぐに始まったTOBではありません。ツインバードが公開買い付けに賛同することなどを前提条件とし、条件が満たされた場合に2026年10月下旬をめどに開始する予定とされていました。ジャパネットHDによるTOB開始予定の公表では、ツインバードの技術力とジャパネットの販売力を組み合わせることで、商品開発や販売拡大を目指す構想が示されています。
これに対し、ツインバードは8月31日、取締役全員の一致により、TOBに反対する意見を決議しました。同社は、ジャパネットHDの傘下に入った場合、既存の家電量販店との取引が停止または縮小するリスクがあるほか、高付加価値商品やB2B事業の成長が停滞する可能性があると説明しています。
ツインバードによれば、量販店経由の売上高は全体の約3分の1を占めます。ジャパネットHDとの資本関係が強まることで、競合する販売チャネルとの関係が悪化すれば、2027年2月期に約23億円、5年間の累計では約87億円規模の売上高を失う可能性があると試算しています。ツインバードの反対意見表明資料では、量販店との関係、高付加価値ブランドへの影響、B2B事業への経営資源配分など、複数のリスクが説明されています。
また、ツインバードは「多品種小ロット・高付加価値」を重視する企業であるのに対し、ジャパネットHDは分かりやすい機能を持つ商品を大規模に販売するビジネスモデルを得意としています。ツインバードは、この経営方針の違いがブランド価値や人材、燕三条地域の取引先との関係に悪影響を及ぼす可能性があると主張しています。
TOBへの反対表明で急落した株価が、牧氏の登場で反転
ツインバードがジャパネットHDのTOB提案に反対したことを受け、9月1日の株式市場では売りが先行しました。一時は制限値幅の下限となるストップ安水準まで下落する場面がありました。
投資家が警戒したのは、ツインバードが反対したことで、ジャパネットHDによる1株800円のTOBが開始されない可能性が高まったためです。TOB価格を株価の上限に近い水準として買っていた投資家にとっては、買収プレミアムが消滅するリスクが生じました。
一方、9月1日には牧氏の大量保有報告書が提出されました。この情報によって、買収をめぐる構図は「ツインバード対ジャパネットHD」だけではなく、6.98%を保有する新たな大株主を加えたものへと変化しました。
牧氏が全株主に公平な支配権プレミアムを与える取引を支持する姿勢を示したことから、市場では、ジャパネットHDとの交渉を促す存在になるとの期待が高まりました。前日に急落した反動もあり、9月2日は買い戻しと新規の思惑買いが重なって、一時763円まで上昇したとみられます。
ジャパネットHDによるTOB価格引き上げの思惑も
9月2日の株価上昇を支えたもう一つの材料が、ジャパネットHDによるTOB価格の引き上げ観測です。現在示されているTOB予定価格は1株800円ですが、ツインバードはTOBそのものに反対しており、買い付け開始の前提条件は満たされていません。
ジャパネットHDがツインバードの完全子会社化を引き続き目指す場合、同社経営陣や既存株主からの支持を得るため、価格や買収後の経営方針などの条件を見直す可能性があるとの思惑が生じます。牧氏という有力株主の登場は、買収価格を含む条件交渉に影響を与える可能性があります。
また、牧氏自身による追加取得や、別の第三者による対抗買収提案が行われれば、ツインバードの経営権をめぐる競争が起きる可能性もあります。一般的に複数の買い手候補が存在する状況では、株主が受け取る支配権プレミアムが拡大するとの期待が高まりやすくなります。
ただし、TOB価格の引き上げや対抗提案は、現時点では市場の観測にすぎません。ジャパネットHDが条件を変更する保証はなく、牧氏が追加取得やTOBを行うことも決定されていません。期待先行で株価が上昇した局面では、新たな材料が出なければ反落する可能性にも注意が必要です。
新中期経営計画とPBR1倍以上への期待
牧氏が大量保有報告書で言及したツインバードの新中期経営計画も、今後の株価を考えるうえで重要です。ツインバードは8月31日、「新 中期経営計画2026-2030」を発表し、高付加価値製品への集中や収益性の高いB2B領域への事業転換を進める方針を示しました。
成長の柱として期待されているのが、ツインバード独自の冷却技術であるFPSC、フリー・ピストン・スターリング・クーラーを活用した事業です。FPSCはヘリウムガスを冷媒に使用するスターリング冷凍機で、医療、研究、物流など、厳格な温度管理が求められる分野への展開が期待されています。
同社はコロナ禍の2020年、ワクチン輸送用保冷庫への需要拡大を背景に業績期待が高まり、株価は上場来高値の2,399円を付けました。しかし、特需が一巡した後は業績と株価が低迷し、直近の株価は高値から約7割下の水準にありました。
新中期経営計画では、収益構造の改革とともに、PBR1倍以上を意識した資本政策の実行が掲げられています。PBRが1倍を下回る状態は、株式市場における企業価値が帳簿上の純資産を下回って評価されていることを意味します。
牧氏が「株主総利回りの最大化」に言及したことで、市場では、成長投資に加えて増配や自社株買いなど、より積極的な株主還元策が促されるとの期待も生まれました。買収思惑だけでなく、ツインバード自身が中期経営計画を着実に実行し、資本効率を改善できるかどうかも中長期的な焦点になります。
今後の焦点は牧氏の追加取得とジャパネットHDの対応
今後の最大の注目点は、牧氏がツインバード株を追加取得するかどうかです。保有比率が1%以上増減した場合には変更報告書の提出が必要になるため、今後の大量保有報告書の動向が株価材料となる可能性があります。
次に注目されるのが、ジャパネットHDの対応です。ツインバードの反対意見によって、当初予定していた条件のままTOBを開始することは難しくなっています。ジャパネットHDが提案を撤回するのか、価格や買収後の経営方針を修正して再提案するのかが焦点です。
さらに、ツインバード経営陣が新中期経営計画に基づき、業績改善や資本政策をどの程度早く実現できるかも重要です。買収提案を拒否して独立経営を続ける以上、株主に対して、1株800円の買収提案を上回る企業価値を中長期的に実現できることを示す必要があります。
ツインバードの株価が9月2日に上昇した主因は、牧氏の6.98%保有が判明し、追加取得、株主提案、ジャパネットHDによるTOB価格の引き上げ、対抗提案といった複数の思惑が一気に広がったことです。
一方で、今回の上昇は業績の上方修正などによるものではなく、買収や資本政策をめぐる期待が中心です。今後の株価は、牧氏、ジャパネットHD、ツインバード経営陣の三者がどのような行動を取るかによって、大きく変動する可能性があります。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Why Did Twinbird’s Share Price Rise? Buffalo President Hiroyuki Maki Emerges as a 6.98% Shareholder
Shares of Twinbird Corporation surged on September 2, briefly rising 13.88% to ¥763 before closing 4.78% higher at ¥702.
The rally followed the disclosure that Hiroyuki Maki, president of computer-peripheral maker Buffalo, had acquired a 6.98% stake in Twinbird. His filing stated that he expects the company to maximize total shareholder returns and may make important proposals as a shareholder.
Investor interest was particularly strong because Maki has previously launched tender offers for listed companies, including BASE and Base Food. The market is therefore speculating that he could increase his stake or take a more active role in Twinbird’s capital strategy.
Twinbird is also the target of a proposed ¥800-per-share tender offer by Japanet Holdings. However, Twinbird’s board has rejected the proposal, citing risks to its relationships with electronics retailers, premium brand strategy and B2B growth plans.
Maki’s arrival as a major shareholder has raised expectations that Japanet could improve its offer or that another transaction may emerge. These scenarios remain speculative, and no additional purchase or competing tender offer has been announced.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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