東邦亜鉛、鉛製錬の副産物からレアアース回収へ――安中製錬所再編が事業再生の新たな柱となるか

東邦亜鉛、鉛製錬の副産物からレアアース回収へ――安中製錬所再編が事業再生の新たな柱となるか 次世代エネルギー関連株

亜鉛・鉛・銀の製錬を中心とする非鉄金属メーカー、東邦亜鉛株式会社(東証プライム 5707)が、鉛の製造過程で発生する副産物からレアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)を回収する新事業に乗り出します。群馬県安中市の安中製錬所に必要な設備を設け、同拠点の生産体制を再編する2029年度を一つの目標として、事業化に向けた検討を進める方針です。

レアメタルについては2029年度をめどに事業化を目指し、レアアースについても具体的な開始時期は未定ながら、将来的な商業生産を視野に入れています。亜鉛製錬事業の不振や海外鉱山の閉鎖によって厳しい経営環境に直面してきた同社にとって、既存の製錬技術と設備を生かした高付加価値事業への転換は、事業再生を左右する重要な取り組みとなりそうです。
この取り組みについて、以下にて詳しく見ていきましょう!!

鉛の副産物からネオジムやイットリウムを回収

一般的なレアアース生産では、レアアースを含む鉱石から目的の元素を分離・精製します。これに対して東邦亜鉛が検討しているのは、鉛鉱石から鉛を取り出した後に残る副産物を原料として活用する方法です。含有量は少ないものの、副産物の中には複数の有用元素が含まれており、これまで十分に利用されてこなかった資源を新たな収益源へ変える狙いがあります。

回収が見込まれる元素には、半導体製造装置などで使われるイットリウム、電気自動車(EV)のモーター用磁石に欠かせないネオジム、蛍光体などに用いられるランタンなどがあります。実際に回収できる元素や含有量は鉛鉱石の産地によって変動するため、生産品目や規模は今後の技術検証を通じて詰めていくことになります。

同社は、国内で不足する重要鉱物の安定供給に少しでも貢献できる規模を目指すとしています。現時点では生産量や売上高、利益への寄与額は明らかになっていませんが、実用化に成功すれば、従来の鉛・銀などに加えて複数の有価金属を回収できる事業構造へ移行する可能性があります。

中国依存を抑える非中国系サプライチェーンに期待

今回の計画が注目される最大の理由は、経済安全保障上の重要性です。レアアースの鉱山生産では中国が世界全体の約7割を占めているとされ、分離・精製工程まで含めれば、中国の存在感はさらに大きくなります。日本の製造業にとって、レアアースの調達先を多様化することは長年の課題でした。

一方、鉛鉱石については、中国の世界生産に占める割合が約4割にとどまり、日本は米国やオーストラリアなどからも調達しています。この鉛鉱石を起点としてレアアースを回収できれば、中国産のレアアース鉱石に直接依存しない、新たな供給ルートを国内に構築できる可能性があります。

特にネオジムは、高性能な永久磁石を通じてEVや産業用モーター、省エネルギー機器などに利用されます。イットリウムやランタンも、半導体、電子部品、光学材料など幅広い産業を支える元素です。生産規模が限定的であっても、供給途絶時の代替調達先として機能するのであれば、戦略的な価値は単純な売上規模以上に大きくなる可能性があります。

中国政府は2025年4月から一部のレアアース関連品目について輸出管理を強化し、重要鉱物を外交・通商政策上の手段として利用する動きを強めています。さらに、軍事転用が可能なデュアルユース品目を巡る管理も強化されており、日本企業にとって調達リスクの分散は急務となっています。こうした環境は、東邦亜鉛の構想に追い風となる可能性があります。

採算確保の鍵を握る分離・精製コスト

もっとも、レアアースを回収できることと、採算の取れる事業として成立させることは別の問題です。鉛鉱石に含まれるレアアースの濃度は一般的に低く、目的とする元素以外にもさまざまな不純物が混在しています。複数の元素を分離し、製品として販売できる純度まで高めるには、多くの工程とエネルギーが必要になると考えられます。

通常のレアアース鉱石を使用する場合と比べて処理コストが高くなる可能性があり、鉱石ごとの含有量のばらつきも安定生産を難しくする要因です。今後は、回収率、製品純度、設備の稼働率、薬品や電力の使用量などをどこまで改善できるかが、事業化を判断するうえで重要になります。

その一方で、東邦亜鉛には長年蓄積してきた製錬技術と既存設備があります。新たな工場を一から建設するのではなく、既存の工程や人材、分析技術を活用できれば、追加投資と処理コストを一定程度抑えられる可能性があります。鉛を製造した後に残る副産物を原料とするため、原料調達費の考え方も通常のレアアース事業とは異なります。これまで処分または低価格で扱われていた副産物から有価物を取り出せれば、資源利用効率の向上にもつながります。

同社が2026年2月に公表した競争力強化投資では、回収元素の多様化、高純度化、難処理複雑鉱石への対応に約30億5,000万円を投じる計画が示されています。溶媒抽出法などの湿式製錬プロセスに関する研究開発や設備の強化を通じ、貴金属・レアメタルの回収高度化を目指す方針です。今回の構想は、単独の新規事業というより、同社が進める製錬事業全体の高付加価値化と密接に結び付いた戦略とみられます。

レアアース価格の地域差が事業化を後押しする可能性

採算面で注目されるのが、中国による輸出管理の強化を背景としたレアアース価格の地域差です。中国国内と中国以外の市場で取引価格に差が生じれば、従来はコスト面で成立しにくかった非中国地域での生産にも、利益を確保できる余地が生まれます。

東邦亜鉛の計画では通常より高い生産コストが見込まれるものの、需要家が供給の安定性や原産国の多様化に一定の対価を支払うようになれば、価格だけでは測れない競争力を持つ可能性があります。日本国内で回収・精製された重要鉱物として、長期供給契約や特定用途向けの販売につなげられるかも焦点となります。

ただし、レアアース市況は政策や需給によって大きく変動します。現在の価格差が長期的に続く保証はなく、中国以外の地域で供給能力が増えれば、価格差が縮小する可能性もあります。東邦亜鉛には、特定元素の市況だけに依存せず、複数の有価金属を効率的に回収して原料全体の採算性を高める事業モデルが求められます。

競合が少ない独自ポジションを築けるか

国内では三菱マテリアル、三井金属、DOWAホールディングスなども鉛製錬事業を展開しています。ただし、これらの企業が手掛ける鉛製錬は、廃バッテリーなどを原料とするリサイクル製錬が中心で、鉛鉱石の副産物からレアアースを生産する事業とは原料構成が異なります。

東邦亜鉛が鉱石由来の副産物からレアアースを安定的に回収できれば、国内で独自性の高いポジションを築くことができます。さらに、分離・精製技術を磨くことで、レアアース以外のレアメタルや貴金属についても回収対象を広げられる可能性があります。

製錬会社の収益は、金属価格、為替、原料の買鉱条件、電力価格などに左右されやすいという特徴があります。回収元素の種類を増やし、一つの原料から得られる収益を最大化できれば、単一金属の市況変動に対する耐性を高められます。投資家にとっては、同社がどの元素をどの程度の純度と回収率で製品化できるのか、販売先を確保できるのかが今後の確認ポイントとなります。

安中製錬所の再編と事業再生を結ぶ重要プロジェクト

東邦亜鉛は、祖業である亜鉛製錬の採算悪化を受け、2025年3月末に安中製錬所で鉱石由来の亜鉛製錬を終了しました。1937年の創業以来、同社を支えてきた事業の縮小は大きな転換点でしたが、同社は安中製錬所そのものを閉鎖するのではなく、2029年度をめどに生産体制を再編する計画を進めています。

レアアース・レアメタルの回収構想は、この再編計画の一部です。既存設備と製錬技術を新たな用途へ振り向け、汎用品中心の事業から、希少性と戦略性の高い金属を扱う事業へ移行する狙いがうかがえます。実現すれば、安中製錬所は従来型の亜鉛生産拠点から、多種類の有価金属を回収する複合的な製錬・資源循環拠点へ変わる可能性があります。

同社は2024年3月期に、オーストラリアの鉱山閉鎖などに伴って464億円の連結最終赤字を計上しました。その後は資源事業からの撤退や亜鉛製錬事業の再編、鉛・銀製錬の収益強化などを柱とする事業再生計画を進めています。今回の新事業は、過去の損失を埋めるだけでなく、再生後の東邦亜鉛がどの分野で成長していくのかを示す試金石となります。

投資家が確認したい三つのポイント

投資家が最初に確認したいのは、技術的な実現可能性です。試験段階で回収できても、商業規模で安定的に操業できなければ、継続的な収益には結び付きません。鉱石ごとに異なる成分への対応力、回収率、純度、設備稼働率などが重要な判断材料になります。

次に注目されるのは、投資額と収益性です。設備投資の規模、生産能力、想定販売価格、操業コストが明らかになれば、投資回収期間を具体的に評価できるようになります。高コストでも戦略的な供給源として販売先を確保できるのか、政府の支援制度や需要家との共同開発を活用できるのかにも注目です。

三つ目は、事業再生計画全体への貢献度です。レアアース事業が話題性だけにとどまるのか、それとも鉛・銀、レアメタル、貴金属を組み合わせた収益の柱へ成長するのかによって、企業価値への影響は大きく異なります。売上規模だけでなく、利益率やキャッシュフローへの寄与を継続して確認する必要があります。

東邦亜鉛は「重要鉱物の国内供給企業」へ転換できるか

東邦亜鉛によるレアアース・レアメタル回収計画は、経営再建、安中製錬所の再編、経済安全保障という三つのテーマが重なる取り組みです。中国への依存を抑えた供給網への需要が高まるなか、国内で重要鉱物を生産できる意義は大きいといえます。

一方で、低濃度の副産物から目的元素を取り出すため、採算性と量産技術には不透明な部分が残ります。現段階で大幅な業績寄与を織り込むのは早く、今後公表される生産規模、設備投資額、販売先、量産開始時期などを慎重に見極める必要があります。

それでも、既存の製錬設備と技術を生かして回収元素を増やす戦略は、同社が抱えてきた収益構造上の課題を改善する可能性を秘めています。東邦亜鉛が従来型の亜鉛製錬会社から、鉛・銀を基盤にレアアースやレアメタルまで扱う重要鉱物供給企業へ転換できるか、2029年度に向けた進展が注目されます。

私自身、群馬県出身で、安中市に親戚もいることから、東邦亜鉛の安中製錬所は何度も見たことがあります。実に迫力ある光景。最近では、夜景映え写真の撮影スポットとしても人気があります。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Toho Zinc Plans Rare-Earth Recovery at Annaka Smelter as Part of Business Revival

Toho Zinc plans to recover rare earths and rare metals from by-products generated during lead production at its Annaka Smelter in Gunma Prefecture. The company aims to commercialize rare-metal production around fiscal 2029, while the timetable for rare-earth production has yet to be determined.

Potential products include yttrium for semiconductor-related equipment, neodymium for electric-vehicle motors, and lanthanum for phosphors. Although the amounts contained in lead-ore by-products are relatively small and vary by source, successful recovery could help establish a rare-earth supply chain less dependent on China.

The project also forms part of Toho Zinc’s restructuring program. The company ended zinc smelting from ore at the Annaka site in March 2025 following prolonged profitability problems. It now plans to reuse its existing smelting facilities and technical expertise to recover higher-value metals.

The main challenge is cost. Rare-earth concentrations in lead ore are generally low, while the removal of impurities requires complex processing. However, stronger export controls and widening price differences between China and other markets may improve the project’s commercial potential.

Investors should monitor the required capital expenditure, recovery rates, production scale, customer agreements and expected profitability. If commercially successful, the project could support Toho Zinc’s transformation into a strategically important supplier of critical minerals in Japan.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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