TDK株式会社(ティーディーケイ/東証プライム 6762)が7月31日 の大引け後(15:30)に発表した「2027年3月期第1四半期(2026年4~6月期)の連結決算」は、売上高とすべての段階利益が第1四半期として過去最高を更新する好決算となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比94.4%増の約805億円となり、事前の市場予想を大幅に上回りました。生成AI向けデータセンター投資の拡大を背景に、積層セラミックコンデンサー(MLCC)やアルミ電解コンデンサー、HDDヘッド、サスペンションなどの販売が伸びたほか、円安と収益構造の改善も利益を押し上げました。
会社側は通期業績予想を据え置きましたが、第1四半期時点で通期純利益計画の35.8%まで進捗しています。山西哲司最高財務責任者(CFO)は、上期決算の段階で通期見通しを改めて検討する方針を示しており、今後は業績予想の上方修正が焦点となりそうです。
3月末が決算期のTDK。今期の第一四半期(4月〜6月)は、どのようなスタートをきったのでしょうか。決算発表内容を以下にて深堀りしていきましょう!!
- 純利益は94.4%増、市場予想を6割以上上回る
- 通期純利益計画に対する進捗率は35.8%
- AIデータセンター向け受動部品が急拡大
- 大容量HDD向け磁気ヘッドとサスペンションも好調
- センサー事業は営業利益約2.9倍、MEMSセンサーが黒字転換
- 二次電池は販売数量減少でも増収増益
- 円安が売上高を725億円、営業利益を113億円押し上げ
- 第2四半期もHDD部品や二次電池の販売増を見込む
- 好決算の一方、フリーキャッシュフローは794億円の赤字
- 通期予想は据え置きも上方修正余地を残す
- 投資家の焦点はAI需要の持続性と上期時点の業績修正
- 【Dear Overseas Investors: Summary in English】
純利益は94.4%増、市場予想を6割以上上回る
第1四半期の売上高は前年同期比38.3%増の7,410億円、営業利益は同53.0%増の863億円、税引前利益は同64.0%増の945億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同94.4%増の805億円となりました。
純利益はQUICKコンセンサスの496億円を約310億円上回り、市場予想に対して6割以上の上振れとなりました。前年同期の415億円からほぼ倍増し、4~6月期として2年ぶりに過去最高益を更新しています。
売上高だけでなく、営業利益、税引前利益、純利益のすべてが第1四半期として過去最高となりました。売上営業利益率も前年同期の10.5%から11.6%へ1.1ポイント上昇しており、大幅な増収が着実に利益成長へつながった格好です。
営業利益の増減要因を見ると、販売数量の増加や製品構成の改善などによる押し上げ効果が351億円に達しました。コスト合理化も48億円の増益要因となり、販売費・一般管理費の増加や構造改革費用を吸収しました。

通期純利益計画に対する進捗率は35.8%
TDKは2027年3月期の通期純利益を前期比15.0%増の2,250億円と予想しています。これに対し、第1四半期だけで約805億円を稼ぎ出し、進捗率は35.8%に達しました。
この進捗率は過去5年間の平均である23.3%を大幅に上回っています。季節性や下期の需要変動を考慮する必要はあるものの、通期計画に対して極めて順調なスタートを切ったと評価できます。
会社側は今回、売上高2兆5,800億円、営業利益2,950億円、税引前利益3,000億円、純利益2,250億円とする通期予想を据え置きました。しかし、山西CFOは「4~6月期は期初想定より上振れ、足元の需要環境も非常に好調」と説明しています。
さらに、上期決算の時点で通期見通しを一度アップデートする考えを示しました。第2四半期もAIデータセンター向け部品や二次電池の販売が堅調に推移すれば、業績予想の上方修正に対する市場の期待が一段と強まる可能性があります。
AIデータセンター向け受動部品が急拡大
今回の決算で特に目立ったのが、受動部品事業の急成長です。同事業の売上高は前年同期比28.0%増の1,768億円、営業利益は同172.2%増の174億円となりました。営業利益は前年同期の64億円から約2.7倍に拡大し、営業利益率も4.6%から9.8%へ上昇しています。
生成AIの計算処理を担うAIサーバーや関連する電源・ネットワーク設備では、多数のコンデンサーやインダクターが必要になります。TDKでは、AIデータセンター向けMLCCの販売が増加したほか、アルミ電解コンデンサーへの引き合いも強まりました。
コンデンサー全体の売上高は前年同期比35.1%増の808億円となり、受動部品事業の成長をけん引しました。インダクティブデバイスも自動車市場向けの需要拡大により、売上高が同26.2%増の620億円へ伸びています。
山西CFOは「MLCCのみならずアルミ電解コンデンサーも引き合いが強い」と説明しました。AIサーバーの高性能化や消費電力の増大に伴い、電源を安定させる受動部品の搭載数量や性能に対する要求が高まっていることが、TDKにとって大きな追い風になっています。

大容量HDD向け磁気ヘッドとサスペンションも好調
AIデータセンター需要の恩恵は、受動部品だけにとどまりません。磁気応用製品事業の売上高は前年同期比49.6%増の816億円、営業利益は同51.8%増の96億円となりました。
生成AIの普及に伴って、学習データや生成データを保存するストレージ容量が急速に拡大しています。データセンターでは、低コストで大量のデータを保存できる大容量のニアラインHDD需要が堅調に推移しており、TDKが手掛けるHDDヘッドとHDDサスペンションの販売が増加しました。
磁気応用製品事業の営業利益率は前年同期の11.5%から11.7%へ上昇しました。販売数量の増加に加え、生産効率や製品構成の改善も収益性の向上につながったとみられます。
AI関連投資はGPUや半導体メモリーに注目が集まりやすいものの、実際のデータセンターには電源部品、受動部品、センサー、ストレージ部品など幅広い製品が必要です。TDKは複数の製品群を通じてAIインフラ投資の拡大を取り込んでおり、これが同社の強みとして改めて示されました。
センサー事業は営業利益約2.9倍、MEMSセンサーが黒字転換
センサ応用製品事業も大幅な増収増益となりました。売上高は前年同期比33.3%増の619億円、営業利益は同191.6%増の78億円でした。営業利益率は前年同期の5.8%から12.7%へ急上昇しています。
温度・圧力センサーは自動車市場や産業機器市場向けの販売が増加しました。磁気センサーもICT機器や産業機器向けが好調でした。
これまで収益改善が課題だったMEMSセンサーは、ICT市場や産業機器市場向けモーションセンサーの販売増加により黒字へ転換しました。販売規模の拡大に加えて事業構造改革の成果が表れ始めたことで、センサー事業全体の採算が大きく改善しています。
受動部品、磁気応用製品、センサーという複数の事業が同時に利益成長を実現したことは、今回の決算の重要なポイントです。特定の製品だけに依存するのではなく、AI、ICT、自動車、産業機器といった幅広い市場から成長機会を取り込んでいます。
二次電池は販売数量減少でも増収増益
売上高の過半を占めるエナジー応用製品事業は、売上高が前年同期比42.1%増の4,058億円、営業利益が同25.3%増の694億円となりました。
パソコンやスマートフォンなどICT関連製品の生産台数が減少した影響により、小型二次電池の販売数量は前年同期を下回りました。一方、バッテリーパック事業の拡大や材料価格上昇分の販売価格への転嫁が進み、事業全体では増収増益を確保しました。
また、産業機器市場向けの中型二次電池や産業機器用電源も販売が増加しました。営業利益率は前年同期の19.4%から17.1%へ低下したものの、営業利益額は554億円から694億円へ140億円増加しています。
ICT端末市場の台数が伸び悩む環境下でも、価格転嫁や製品構成の改善によって利益成長を維持した点は評価材料です。ただし、エナジー応用製品は全社利益に占める割合が大きいため、今後のスマートフォン需要や電池材料価格の動向は引き続き注視する必要があります。
円安が売上高を725億円、営業利益を113億円押し上げ
為替相場も今回の大幅増益に寄与しました。第1四半期の平均為替レートは1ドル159円43銭と、前年同期の144円59銭から約15円の円安になりました。対ユーロでも前年同期の163円78銭から185円32銭へ円安が進みました。
TDKによると、為替変動は売上高を約725億円、営業利益を約113億円押し上げました。営業利益の前年同期からの増加額299億円のうち、約4割が為替要因だった計算になります。
もっとも、為替効果を除いても営業利益は増加しており、今回の好決算は円安だけで説明できるものではありません。AIデータセンター向け販売の拡大、二次電池の価格転嫁、センサー事業の黒字化、コスト合理化など、本業の改善が同時に進んだ結果といえます。
第2四半期もHDD部品や二次電池の販売増を見込む
TDKは第2四半期の売上高について、第1四半期比で横ばいから3%増を見込んでいます。ただし、第2四半期の想定為替レートを1ドル150円、1ユーロ175円と、第1四半期実績より円高に設定しているため、為替による押し下げを織り込んだ予想となっています。
第1四半期と同程度の為替水準を前提にした場合、第2四半期の売上高は前四半期比6~9%増となる見通しです。受動部品では自動車向けインダクティブデバイスやサーバー向けアルミ電解コンデンサー、磁気応用製品ではHDDヘッドとサスペンションの販売増加を予想しています。
エナジー応用製品についても、ICT機器向け小型二次電池や産業機器向け中型二次電池の販売増加を見込んでいます。AIデータセンター関連だけでなく、二次電池や自動車向け部品にも成長が広がれば、第2四半期の業績は会社想定を上回る可能性があります。
好決算の一方、フリーキャッシュフローは794億円の赤字
損益面では極めて好調な決算となりましたが、キャッシュフローには注意すべき点があります。第1四半期の営業キャッシュフローは192億円のマイナスとなり、前年同期の590億円のプラスから大きく悪化しました。
投資キャッシュフローは602億円のマイナスで、営業キャッシュフローと合わせたフリーキャッシュフローは794億円の赤字となりました。前年同期は39億円の赤字だったため、赤字幅が大きく拡大しています。
一方、現金同等物残高は8,702億円と前年同期から1,598億円増えており、手元流動性は十分に確保されています。通期では600億円のフリーキャッシュフローを計画していますが、第1四半期の赤字を今後どのように回収していくかは、投資家が確認すべきポイントになります。
利益成長に加えて運転資金の改善や投資回収が進み、営業キャッシュフローがプラスへ転換するかが今後の企業価値評価を左右しそうです。
通期予想は据え置きも上方修正余地を残す
TDKは2027年3月期通期について、売上高を前期比3.0%増の2兆5,800億円、営業利益を同8.3%増の2,950億円、純利益を同15.0%増の2,250億円とする従来予想を据え置きました。
営業利益率は前期の10.9%から11.4%へ改善し、投下資本利益率(ROIC)は7.5%から8.0%へ上昇する計画です。年間配当は前期比4円増の1株40円を予定しています。
通期の為替前提は1ドル150円、1ユーロ175円です。第1四半期の実績は1ドル159円43銭、1ユーロ185円32銭だったため、会社計画は第2四半期以降の円高を想定した慎重な内容といえます。
TDKの為替感応度は、ドルが1円変動した場合、年間の売上高に約130億円、営業利益に約20億円の影響があるとされています。円安が長期化すれば業績の上振れ要因となる一方、急速な円高へ転じた場合には利益を押し下げる可能性があります。
投資家の焦点はAI需要の持続性と上期時点の業績修正
今回の決算は、TDKがAIデータセンター投資の恩恵を幅広い製品で取り込んでいることを示しました。MLCCやアルミ電解コンデンサーに加え、ニアラインHDD向け磁気ヘッドとサスペンション、センサー、電源関連製品まで需要が広がっています。
特に、受動部品とセンサー事業の利益率が大幅に改善したことは、TDKの収益源がエナジー応用製品以外にも拡大しつつあることを示す前向きな材料です。AI関連需要の拡大が続けば、全社の利益成長だけでなく、事業ポートフォリオの分散や収益の安定化にもつながる可能性があります。
一方、今後はAIデータセンター投資が現在の勢いを維持できるか、HDD関連需要が継続するか、スマートフォンやパソコンの生産減少が二次電池事業へどの程度影響するかを見極める必要があります。為替の追い風が弱まった場合でも、本業の成長によって利益を伸ばせるかが重要です。
市場予想を大幅に上回る純利益と35.8%という高い通期進捗率を踏まえると、現時点の通期予想には上振れ余地があると考えられます。山西CFOが示唆した上期時点での業績見通しの更新に向け、AI関連部品の受注、営業利益率、キャッシュフローの改善が次の注目材料となりそうです。
TDKといえば、かつてはカセットテープブランドのイメージでしたが、半導体等の未来のテクノロジーを支えるブランドへと変貌を遂げておりますね。今後の伸びに注目していきたいと思います。
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なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
TDK Q1 Net Profit Surges 94% to Record High on AI Data Center Demand
TDK reported a 94.4% year-on-year increase in net profit to ¥80.5 billion for the April–June quarter, significantly exceeding the QUICK consensus estimate of ¥49.6 billion.
Revenue rose 38.3% to ¥741.0 billion, while operating profit climbed 53.0% to ¥86.3 billion. Strong AI data center investment boosted demand for multilayer ceramic and aluminum electrolytic capacitors, as well as HDD heads and suspensions used in high-capacity storage systems.
A weaker yen lifted revenue by approximately ¥72.5 billion and operating profit by ¥11.3 billion. Profitability also improved, with the operating margin rising from 10.5% to 11.6%.
TDK maintained its full-year forecast for net profit of ¥225.0 billion. However, first-quarter profit already reached 35.8% of the annual target, raising expectations for an upward revision when the company reviews its outlook at the half-year stage.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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