住友グループの大手不動産会社、住友不動産株式会社 <8830> [東証プライム] が8月6日大引け後に発表した「2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)の連結決算」は、売上高が前年同期比4.2%減の2,810億1,600万円となった一方、親会社株主に帰属する四半期純利益は同15.4%増の851億6,100万円となりました。
マンションや戸建てなどの販売計上戸数が前年同期から約3割減少したことで減収となりましたが、主力のオフィスビル賃貸が好調に推移しました。既存ビルの稼働率改善や賃料引き上げが収益を押し上げ、不動産販売、ハウジング、不動産仲介など他部門の減益を補いました。
営業利益は前年同期比1.0%増の1,028億4,600万円、経常利益は同3.3%増の1,087億3,500万円でした。営業利益、経常利益、純利益はいずれも第1四半期として過去最高を更新しています。純投資目的で保有していた株式の売却を主因に特別利益160億6,100万円を計上したことも、最終利益の大幅な増加につながりました。
会社側は2027年3月期通期の連結業績予想を据え置きました。オフィス賃貸を中心に業績は順調に進捗しており、6期連続の経常最高益と14期連続の純利益最高益更新に向けて、堅調なスタートを切った格好です。以下にて詳しく見ていきましょう!!
減収でも営業増益、売上高営業利益率は36.6%へ上昇
第1四半期の売上高は前年同期の2,933億400万円から2,810億1,600万円へ122億8,800万円減少しました。それでも営業利益は前年同期の1,017億9,200万円から1,028億4,600万円へ10億5,400万円増えました。
この結果、売上高営業利益率は前年同期の34.7%から36.6%へ約1.9ポイント上昇しました。売上規模が縮小するなかでも利益を増やしたことから、今回の決算は単純な増収効果ではなく、収益構成の改善や各事業における採算性の高さが表れた内容といえます。
とりわけ、利益率が高く、継続的な賃料収入を生み出す不動産賃貸事業の成長が全社の収益力を押し上げました。一方、売上高の減少要因となった不動産販売事業も、販売価格の上昇を背景に利益の落ち込みを小幅にとどめています。
経常利益は前年同期から34億9,000万円増加しました。支払利息は前年同期の64億1,200万円から82億600万円へ増加したものの、受取利息・配当金が100億500万円から142億7,800万円へ増えたことで、営業外損益は前年同期から約24億円改善しました。
経常利益の通期計画3,000億円に対する進捗率は36.2%となりました。過去5年間の第1四半期平均進捗率である34.3%と比較すると、ほぼ平年並みからやや強い水準です。純利益については通期予想2,230億円に対して38.2%まで進み、利益面では順調な立ち上がりとなっています。

住友不動産渋谷ファーストタワー. 2026年8月8日. 撮影:STOCK EXPRESS編集部(Photographer: SHUN)
オフィス賃貸が最高益、空室率低下と賃料上昇が追い風
全社の利益成長をけん引したのは、東京都心部のオフィスビルを中心とする不動産賃貸事業です。同事業の売上高は前年同期比7.5%増の1,211億8,700万円、営業利益は同9.8%増の581億2,800万円となり、売上高、営業利益ともに第1四半期として過去最高を更新しました。
営業利益は前年同期から52億400万円増加しました。不動産販売事業の営業利益が17億800万円減少したほか、ハウジング事業とステップ事業も減益となりましたが、賃貸事業の増益がこれらを吸収し、全社ベースでの営業増益を実現しました。
賃貸事業の好調を支えた一つ目の要因は、既存ビルの空室率改善です。2026年6月末の既存ビル空室率は3.6%となり、3月末の4.3%から0.7ポイント低下しました。前年同期との比較では2.1ポイントの改善です。
働きやすいオフィス環境を求める企業の移転需要や、事業拡大、採用強化に伴う増床需要が続き、契約面積が解約面積を上回る状態を維持しています。空室率の低下により賃料収入の対象となる床面積が増えたことに加え、需給の引き締まりを背景とした賃料引き上げも浸透しました。
二つ目の要因は、新規ビルの稼働効果です。前期に竣工した「住友不動産六本木セントラルタワー」が通期で収益に寄与したほか、「住友不動産大崎ツインビル西館」と「住友芝公園ビル」も契約率が9割を超え、稼働を開始しています。
不動産賃貸事業の通期営業利益予想2,240億円に対する第1四半期の進捗率は26%です。数字だけを見ればおおむね計画線上ですが、会社側は同事業が「強含み」で推移しているとの認識を示しています。稼働率改善や賃料引き上げによる増収効果は今後さらに拡大するとみており、通期業績の上振れ余地を考えるうえでも、賃貸事業の動向が最大の焦点となります。
不動産販売は戸数3割減、それでも高い利益水準を確保
分譲マンションを中心とする不動産販売事業は、売上高が前年同期比11.0%減の1,225億3,300万円、営業利益が同3.4%減の489億4,100万円となりました。
「グランドシティタワー池袋」や「ガーデンハウス成増」などの引き渡しを開始しましたが、マンション、戸建て、宅地を合計した販売計上戸数は1,076戸となり、前年同期の1,511戸から435戸減少しました。減少率は約29%に達しており、販売計上戸数の落ち込みが全社売上高の主な減少要因となりました。
もっとも、計上戸数が約3割減ったのに対し、セグメント営業利益の減少率は3.4%にとどまりました。販売価格の上昇や採算性の高い物件の寄与により、戸数減少の影響を利益面で大幅に吸収したためです。セグメントの営業利益率は約40%に達しており、引き続き高い収益力を維持しています。
マンションの契約戸数は520戸と、前年同期の524戸から4戸減少しただけでした。2027年3月期に売上計上を予定している物件については、すでに概ね契約を終えており、営業活動の軸足は次期計上予定分へ移っています。
不動産販売事業の通期営業利益予想810億円に対する進捗率は約60%となりました。不動産販売は物件の引き渡し時期によって四半期ごとの利益が大きく変動するため、単純に通期換算することはできません。それでも、第1四半期時点で通期計画の6割に達したことは、今期の利益計画に対する一定の安心材料といえます。
一方、竣工から1年を超える完成済み販売中戸数は、前期末から36戸増加して1,177戸となりました。販売価格を維持しながら在庫を着実に消化できるかは、今後も確認が必要です。建設費や人件費が上昇するなか、コスト増を販売価格に転嫁しつつ、購入者の需要を維持できるかが中期的な収益性を左右します。
ハウジングは赤字拡大、先行指標の受注高は改善
ハウジング事業は、計上棟数の減少により減収となりました。売上高は前年同期比14.5%減の186億1,200万円、営業損益は40億3,300万円の赤字となり、前年同期の25億4,500万円の赤字から損失が拡大しました。
第1四半期の計上棟数は923棟と、前年同期の1,076棟から153棟減少しました。「新築そっくりさん」の計上棟数が133棟減の756棟、注文住宅が20棟減の167棟となったことが、売上高と利益を押し下げました。
一方、将来の売上につながる受注動向には改善がみられました。受注棟数は前年同期から13棟増の2,148棟となり、受注高は同7.1%増の461億9,900万円に伸びました。
「新築そっくりさん」の受注棟数は1,718棟と前年同期から5棟減少しましたが、一棟当たり単価の上昇によって受注高は6億2,800万円増の268億5,200万円となりました。注文住宅は受注棟数が18棟増の430棟、受注高が24億2,400万円増の193億4,700万円でした。
会社側は、受注が改善していることに加え、前期に積み上げた受注残が今後売上に計上されるとして、通期計画に対する進捗は計画通りと判断しています。第1四半期時点では赤字が拡大したものの、受注高の増加が第2四半期以降の売上と利益に結び付くかが注目されます。
仲介事業は弱含み、価格上昇で買い手の慎重姿勢強まる
不動産仲介などを手掛けるステップ事業は、売上高が前年同期比16.1%減の161億400万円、営業利益が同26.1%減の46億1,700万円となりました。
中古マンション市場では成約単価の上昇が続いていますが、価格上昇が長期化したことで買い手の慎重姿勢が強まり、特に東京都心部で成約件数が減少しました。引き渡しベースの仲介件数は5,818件と、前年同期の7,517件から1,699件減少しています。
仲介取扱高も前年同期比13.2%減の3,201億5,700万円となりました。一方、1件当たりの取扱単価は4,900万円から5,500万円へ上昇しています。物件価格の上昇によって単価は伸びましたが、件数の減少を補うには至りませんでした。
歩合給の廃止を含む人事給与制度改革に伴う営業体制再構築の一時的な影響や、店舗網の再編費用も利益を圧迫しました。同事業の通期営業利益予想220億円に対する進捗率は21%にとどまり、会社側も業績が弱含みで推移していると説明しています。
中古マンション価格がさらに上昇した場合、仲介単価の上昇が期待できる半面、購入者の予算制約によって取引件数が一段と減少する可能性があります。営業体制の再構築が完了し、仲介件数がどの段階で下げ止まるかが今後のポイントです。
株式売却益160億円を計上、純利益を大きく押し上げ
第1四半期の純利益が15.4%増となった背景には、本業の増益に加えて、保有株式の売却益があります。
特別利益は前年同期の51億8,100万円から160億6,100万円へ増加しました。このうち投資有価証券売却益は159億7,300万円を占めています。一方、特別損失は前年同期の47億2,100万円から6億7,900万円へ減少しました。
前年同期には従業員向けの株式報酬制度に関連する株式給付引当金繰入額42億9,800万円を特別損失として計上していましたが、当第1四半期には同様の損失がありませんでした。株式売却益の増加と特別損失の減少が重なり、特別損益は前年同期から約149億円改善しました。
この結果、税金等調整前四半期純利益は前年同期比17.4%増の1,241億1,600万円となり、純利益は113億8,500万円増加しました。
ただし、株式売却益は継続的な本業利益とは性質が異なります。純利益の進捗率が38%に達したことは評価材料ですが、投資家が業績の持続性を判断する際には、株式売却益を除いた営業利益や経常利益の動向も併せて見る必要があります。
今回の決算では営業利益と経常利益も過去最高を更新しており、増益が株式売却益だけに依存したものではありません。オフィス賃貸事業の成長という本業の裏付けがある点は、決算の質を評価するうえで重要です。
上場株式4,000億円を売却へ、資金はインド事業などに活用
住友不動産は、政策保有株式を含む上場有価証券について、今後おおむね10年間で時価4,000億円を売却する方針を示しています。
同社は前期末、今後の着実な売却に向け、56銘柄を管理処分信託に設定しました。対象銘柄の取得価格は822億円、前期末時点の時価は2,882億円相当です。前期には時価490億円分を売却し、当第1四半期には時価245億円分を売却しました。
会社側は、株式売却益を今後発生する特別損失や金利負担の増加と相殺する一方、売却によって得た資金をインド・ムンバイ事業などの成長投資へ活用する方針です。
住友不動産は多額の不動産と有価証券を保有しており、資産価値の大きさが強みである一方、資本効率の改善は継続的な経営課題となります。保有株式を現金化し、成長性の高い海外事業などへ再配分する取り組みは、持続的な利益成長と資産効率向上の両立を狙ったものです。
もっとも、不動産事業は有利子負債が大きくなりやすいため、金利上昇の影響には注意が必要です。第1四半期の支払利息は前年同期から約18億円増加しました。今後、保有株式の売却益によって金利負担の増加をどこまで吸収できるかも、最終利益の安定性を左右します。
自己資本比率は35.4%に改善、財務基盤を強化
2026年6月末の総資産は、前期末比564億円増の7兆2,421億円となりました。インド子会社への出資などにより、投資有価証券が増加したことが主な要因です。
負債合計は前期末から330億円減少し、4兆6,819億円となりました。社債の償還に加え、未払金や未払法人税などが減少しました。
純資産は前期末比894億円増の2兆5,601億円でした。第1四半期純利益851億円の計上によって利益剰余金が増加したほか、保有有価証券の評価差額も純資産の押し上げ要因となりました。
自己資本比率は前期末の34.4%から35.4%へ1ポイント改善しました。不動産賃貸事業の安定収益を背景に利益を積み上げ、財務基盤を強化していることは、金利上昇局面における耐久力を高める要素となります。
通期予想は据え置き、14期連続の純利益最高益を目指す
住友不動産は2027年3月期の通期連結業績予想を据え置きました。売上高は前期比1.2%増の1兆700億円、営業利益は同7.0%増の3,200億円、経常利益は同3.7%増の3,000億円、親会社株主に帰属する純利益は同4.9%増の2,230億円を見込んでいます。
第1四半期の通期計画に対する進捗率は、売上高が26.3%、営業利益が32.1%、経常利益が36.2%、純利益が38.2%となりました。利益面はいずれも単純な四半期基準となる25%を上回っています。
年間配当予想も1株52円で変更ありません。中間配当、期末配当ともに26円を予定しています。2026年1月1日付で普通株式1株を2株に分割しているため、前期の配当実績との比較では株式分割の影響を考慮する必要があります。
会社側は今期、6期連続の経常最高益と14期連続の純利益最高益更新を目標に掲げています。第1四半期で営業利益、経常利益、純利益がそろって過去最高を更新したことから、その達成に向けて順調なスタートを切ったといえます。
今後の焦点はオフィス賃料、マンション価格、金利負担
今後の最大の注目点は、東京都心部のオフィス市場が引き続き住友不動産の利益成長を支えられるかです。
既存ビルの空室率は3.6%まで低下しましたが、契約面積が解約面積を上回る状態が続いています。空室率がさらに改善する余地に加え、契約更新やテナント入れ替えの際に賃料をどこまで引き上げられるかが、賃貸事業の増益幅を左右します。六本木セントラルタワーなど新規ビルの稼働率向上も重要です。
不動産販売事業については、今期計上予定分の契約が概ね完了しているため、短期的な業績の見通しは比較的良好です。一方、建設コストや人件費の上昇を販売価格に転嫁し続けた場合、住宅購入者の負担が増し、将来の契約戸数に影響する可能性があります。高い利益率を維持しながら販売在庫を消化できるかが焦点です。
ハウジング事業では、改善した受注高が実際の売上と利益に転換されるかが問われます。ステップ事業では、中古マンション価格の上昇によって減少した仲介件数の回復と、営業体制再構築の成果が確認点となります。
また、金利上昇による支払利息の増加にも注意が必要です。住友不動産は保有株式の売却益で金利負担の増加を相殺する方針ですが、株式売却益は市況や売却時期によって変動します。本業の利益成長が金利負担の増加を上回り続けられるかが、中長期的な企業価値を考えるうえで重要になります。
今回の決算は、マンションなどの販売戸数が減少するなかでも、オフィス賃貸の成長によって全社の利益を伸ばした点で、住友不動産の安定した収益基盤を示しました。株式売却益という押し上げ要因を割り引いて見る必要はあるものの、本業の営業利益と経常利益も過去最高を更新しています。
オフィス市況の追い風を確実に利益へ結び付け、販売事業の高採算を維持しながら、弱含む仲介事業とハウジング事業を立て直せるか。14期連続となる純利益最高益の達成だけでなく、その先の持続的な成長力を見極める決算期となりそうです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。
なお、同タイミングで旧財閥系グループの不動産企業、三井不動産と三菱地所の決算発表もありました。下記記事にてご参照くださいませ。
・【三井不動産 決算】4~6月期は純利益39%減 「三田ガーデンヒルズ」の反動も、賃貸・管理事業は最高益
・【三菱地所 決算】4~6月期純利益は3倍で過去最高!海外大型物件の売却が寄与、通期最高益へ好発進
▼大手不動産企業の決算発表内容特集記事 公開!!
https://stockexpress.jp/realestate202608/

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Sumitomo Realty Posts Record Q1 Profit as Tokyo Office Market Strengthens
Sumitomo Realty & Development Co. (TSE: 8830) reported a 15.4% year-on-year increase in net profit to ¥85.2 billion for the April-June quarter, a record for the period. Revenue declined 4.2% to ¥281.0 billion, while operating profit rose 1.0% to ¥102.8 billion and recurring profit increased 3.3% to ¥108.7 billion.
The office leasing business drove earnings growth. Segment operating profit climbed 9.8% to ¥58.1 billion as the vacancy rate for existing buildings improved to 3.6% from 4.3% at the end of March. Higher rents and a full-quarter contribution from Sumitomo Fudosan Roppongi Central Tower also supported results.
Property sales revenue fell as the number of units booked declined by nearly 30%. However, higher selling prices helped maintain strong profitability, with segment operating profit reaching ¥48.9 billion, equivalent to about 60% of the full-year target.
Net profit also benefited from ¥16.1 billion in extraordinary gains, mainly from investment securities sales. The company maintained its full-year forecast for revenue of ¥1.07 trillion, operating profit of ¥320 billion and net profit of ¥223 billion. It is targeting a sixth consecutive record recurring profit and a 14th straight record net profit.
Investors will focus on further office rent increases and occupancy gains, as well as housing demand, construction cost inflation and rising interest expenses. The sustainability of core earnings growth, excluding securities-sale gains, will also remain a key consideration.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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