なぜ住友化学の株価は上昇に転じたのか?――第1四半期の大幅黒字転換と割安株見直し、石化市況改善が追い風

なぜ住友化学の株価は上昇に転じたのか?――第1四半期の大幅黒字転換と割安株見直し、石化市況改善が追い風 住友グループ

住友化学が7%超の急伸、東証プライム値上がり率2位に

住友化学株式会社<4005>の株価が上昇基調を強めています。2026年8月21日の終値は、前日比37.5円高、率にして7.18%上昇の559.8円となり、東証プライム市場の値上がり率ランキングで2位に入りました。株価は75日移動平均線に到達し、中期的な下落局面からのトレンド転換を意識させる動きとなっています。

▼住友化学 株価推移(2026年7月末〜8月21日)

住友化学 株価推移(2026年7月末〜8月21日)

住友化学 株価推移(2026年7月末〜8月21日)

直近1カ月の株価推移を見ると、住友化学株は大きく下落した後、短期間で急速に切り返しています。7月下旬には530円台から550円台で推移していましたが、8月上旬には一時482円まで下落しました。その後は徐々に値を戻し、8月中旬には520円台から530円台を中心にもみ合う展開となりました。8月19日には512円まで押し戻される場面もあったものの、8月21日の大幅高によって約1カ月ぶりの高値水準を回復しました。

7月23日の終値が553円前後だったことを踏まえると、1カ月を通じた上昇率自体は限定的です。しかし、その間に株価は一時10%を超えて下落し、そこから急反発しています。単に元の水準へ戻ったというだけでなく、業績回復に対する市場の評価が変化し始めた可能性があります。

今回の株価上昇を支えた最大の要因は、住友化学が8月4日に発表した2027年3月期第1四半期決算の大幅な改善です。加えて、PBR1倍割れという割安感、外資系証券による目標株価引き上げの動き、シクリカルバリュー株を見直す市場環境などが重なり、買いが加速したと考えられます。
住友化学の株価が上昇に転じた要因について、以下にて深堀りしていきます。

第1四半期は売上高9.9%増、最終損益は407億円の黒字へ

住友化学の2027年3月期第1四半期、2026年4~6月期の売上収益は、前年同期比9.9%増の5,781億9,900万円となりました。コア営業利益は同125.2%増の623億3,600万円、営業利益は同139.8%増の610億4,100万円に拡大しています。親会社の所有者に帰属する四半期利益は407億8,200万円となり、前年同期の45億2,300万円の赤字から大幅な黒字転換を果たしました。住友化学「2027年3月期 第1四半期決算概要」

営業利益が前年同期の約2.4倍となっただけでなく、最終損益まで黒字に転換した点は、業績回復の広がりを示しています。単なる売上高の増加ではなく、本業の収益力と最終利益の双方が改善したことで、投資家が住友化学の再建局面に対して、これまでより前向きな評価を与えやすくなりました。

通期会社計画は、売上収益が前期比1.4%増の2兆3,600億円、コア営業利益が同3.2%増の2,150億円、営業利益が同16.6%増の1,770億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同14.9%増の700億円です。第1四半期終了時点で、営業利益は通期計画の約34.5%、当期利益は約58.3%まで進捗しました。

四半期を均等に考えた場合、第1四半期の標準的な進捗率は25%です。これを大きく上回ったため、投資家の間で通期業績の上振れ期待が高まったことは自然な流れといえます。

石油化学部門の急回復が利益を大きく押し上げる

今回の業績改善をけん引したのが、石油化学関連事業を含む「エッセンシャル&グリーンマテリアルズ」部門です。同部門の第1四半期売上収益は前年同期比48億円増の1,702億円となり、コア営業損益は前年同期の55億円の赤字から272億円の黒字へ転換しました。改善額は327億円に達しており、住友化学全体の増益幅に対して非常に大きな影響を与えています。

背景には、持分法適用会社であるサウジアラビアのラービグ・リファイニング・アンド・ペトロケミカル・カンパニー、通称ペトロ・ラービグの交易条件改善があります。さらに、合成樹脂などで市況が上昇し、在庫評価との差益が発生したことも利益を押し上げました。

住友化学は総合化学メーカーであり、石油化学製品の価格や原料価格、製品と原料の価格差であるスプレッドの動向によって、利益が大きく変動する傾向があります。そのため、石油化学市況の好転は、利益の回復速度を一気に高める要因になります。第1四半期決算は、こうしたシクリカル企業特有の業績回復力が表れた内容だったといえます。

アグロ&ライフソリューション部門も好調でした。農薬の国内販売が堅調だったほか、円安によって輸出採算が改善し、飼料添加物メチオニンの交易条件も好転しました。同部門の売上収益は前年同期比121億円増の1,090億円、コア営業利益は74億円増の96億円となっています。

一方、すべての事業が一様に増益となったわけではありません。ICT&モビリティソリューション部門では、半導体プロセス材料の需要が拡大したものの、構造改革に伴う譲渡益の剥落や固定費増加などによって、コア営業利益は前年同期比53億円減の130億円となりました。住友ファーマ部門も増収を確保した一方、研究開発費の増加などからコア営業利益は22億円減の188億円でした。

それでも、石油化学関連部門と農薬・飼料添加物関連部門の改善が、他部門の減益を吸収しました。市場は今回の決算を、個別の一時的な利益だけではなく、事業ポートフォリオ全体として利益を確保できる状態へ近づいた兆候として評価した可能性があります。

第1四半期で通期純利益計画の約58%、上振れ期待が浮上

株価を強く刺激したのが、最終利益の高い進捗率です。第1四半期の親会社帰属利益407億8,200万円に対し、通期計画は700億円です。わずか3カ月で年間計画の約58%を確保したことになり、単純な進捗率だけを見れば、業績上振れへの期待が生まれやすい状況です。

さらに、住友化学は今回、それまで未定としていた2027年3月期上期の業績予想を公表しました。上期の売上収益は1兆1,700億円、コア営業利益は1,250億円、営業利益は1,220億円、親会社帰属利益は700億円を見込んでいます。上期だけで通期の親会社帰属利益計画と同額を見込んでいることになります。

この計画は、第1四半期の好調さを裏付ける一方、下期について会社が慎重な前提を置いていることも示しています。会社側は通期予想を据え置き、今後の業績動向を精査したうえで、第2四半期決算発表時に改めて説明する方針としています。

したがって、第1四半期の進捗率が高いからといって、直ちに年間利益が大幅に上振れると決めつけることはできません。しかし、石油化学市況やペトロ・ラービグの採算が会社想定よりも良好に推移すれば、通期予想の見直しが意識される可能性があります。株式市場は、正式な上方修正に先回りする形で住友化学株を買い戻したとも考えられます。

PBR0.8倍台の割安感、シクリカルバリュー株として再評価

業績改善に加え、株価指標面の割安感も買い材料になりました。提供された市場データによると、8月21日終値付近の予想PERは約13.2倍、PBRは約0.84倍です。PBRが1倍を下回る状態は、株式市場が住友化学の純資産価値に対して、なお慎重な評価を付けていることを意味します。

住友化学の2026年3月期ROEは6.4%で、化学業界の中央値とされる6.5%前後とほぼ同水準です。少なくとも資本効率だけを見れば、業界平均から大きく劣後しているわけではありません。それでもPBRが1倍を下回っているのは、現在の利益が持続的なものなのか、あるいは石油化学市況の改善に伴う一時的な回復なのかについて、市場が判断を保留しているためと考えられます。

逆にいえば、今後の四半期決算でも増益が続き、年間利益の上振れや財務体質の改善が確認されれば、PBR1倍割れを修正する余地があります。業績回復局面にある低PBR銘柄を探す投資家にとって、住友化学が有力なシクリカルバリュー株として浮上したことが、8月21日の大幅高につながった可能性があります。

直近では外資系証券による目標株価引き上げの動きも伝えられています。好決算を受けてアナリストの業績予想や株価評価が引き上げられれば、機関投資家による見直し買いを促す要因になります。株価が75日移動平均線に到達したことも、テクニカル面での買い戻しや、売り方の買い戻しを誘ったとみられます。

財務体質も改善、有利子負債は3カ月で193億円減少

住友化学を評価するうえでは、利益だけでなく財務体質の改善も重要です。2026年6月末の有利子負債は1兆1,322億円となり、2026年3月末から193億円減少しました。親会社所有者帰属持分比率は29.6%から30.5%へ0.9ポイント上昇し、D/Eレシオも0.93倍から0.80倍へ低下しています。

住友化学は中長期的なD/Eレシオの目安を0.7倍程度としています。依然として目標水準には届いていないものの、負債削減と資本増強が進み、財務改善の方向性が確認できたことはプラス材料です。

同社の自己資本比率は、化学業界の一般的な水準と比較すると低く、財務レバレッジが高い状態にあります。レバレッジの高い企業は、業績回復局面では株主利益が大きく増えやすい一方、市況悪化時には利益や財務への影響も増幅されます。

今回のように営業利益が急拡大する局面では、財務レバレッジの高さが株価上昇の勢いを強めることがあります。しかし、負債水準そのものは依然として大きいため、今後も営業キャッシュ・フローの創出と有利子負債の削減を継続できるかが、中長期的な企業価値向上の鍵になります。

年間16円への増配計画も株価の下支え材料

株主還元の改善も見逃せません。住友化学は2027年3月期の年間配当について、中間配当8円、期末配当8円の合計16円を予想しています。前期の年間13.5円から2.5円の増配となる計画です。

8月21日の終値559.8円を基準にすると、予想配当利回りは約2.9%となります。極めて高い利回りとはいえないものの、業績回復に増配が伴っていることは、経営再建の進展を示す材料になります。

利益の回復が一過性ではなく、フリー・キャッシュ・フローの改善や負債削減につながれば、将来的には一段の株主還元拡充も期待されます。低PBR銘柄に対して資本効率改善や積極的な株主還元を求める市場の流れも、住友化学に対する評価を支える可能性があります。

上昇相場の持続には「利益の質」の確認が必要

住友化学の株価が上昇に転じた背景には、第1四半期の大幅増益、最終黒字への転換、通期計画に対する高い進捗率、PBR1倍割れの割安感、財務指標の改善、増配計画、証券会社による評価引き上げといった複数の材料があります。

一方で、今回の増益には、石油化学市況の上昇に伴う在庫評価差益や、ペトロ・ラービグの交易条件改善など、市況に左右されやすい要素も含まれています。石油化学市況が再び悪化した場合や、原油・ナフサ価格が急変した場合には、利益が反対方向へ振れるリスクがあります。

為替も重要です。第1四半期の平均為替レートは1ドル=159.57円と前年同期の144.59円から大幅な円安となり、農薬をはじめとする輸出事業の採算改善に寄与しました。今後、急速な円高が進めば、輸出手取りの減少や海外事業の円換算額縮小につながる可能性があります。

また、第1四半期の営業キャッシュ・フローは50億円にとどまり、前年同期の240億円から減少しました。棚卸資産や営業債権が増加した影響もあり、フリー・キャッシュ・フローは443億円のマイナスでした。会計上の利益が増えた一方、現金収支には改善余地が残っています。今後は利益だけでなく、その利益がどの程度キャッシュとして回収されるかも注目されます。

投資家が確認すべきなのは、今回の利益増加が単なる「市況回復による戻り」なのか、構造改革や事業競争力の向上を伴う「収益力の切り上がり」なのかという点です。石油化学部門の黒字が続くか、ICT関連材料が再び増益へ転じるか、住友ファーマの成長と研究開発投資を両立できるか、有利子負債をさらに削減できるかが焦点となります。

住友化学株は「回復期待」から「持続性を確認する局面」へ

8月21日の急伸は、住友化学の業績回復を株式市場が改めて評価した動きとみられます。第1四半期の営業利益が前年同期の約2.4倍となり、最終損益が赤字から407億円超の黒字へ転換したインパクトは大きく、低PBRの大型化学株を見直すきっかけになりました。

特に、石油化学関連部門が大幅な赤字から黒字へ転換したことは、住友化学の利益構造が正常化へ向かっているとの期待につながっています。有利子負債の減少やD/Eレシオの改善、増配計画も、従来の財務不安を和らげる材料です。

もっとも、株価が本格的な上昇トレンドへ移行できるかどうかは、次回以降の決算にかかっています。第1四半期の好調さが第2四半期以降も続き、通期予想の上方修正につながれば、PBR1倍に向けた評価修正が進む可能性があります。反対に、市況要因や在庫評価差益の反動によって利益が鈍化すれば、再び慎重な見方が強まることも考えられます。

住友化学株は、業績悪化を警戒する段階から、回復の持続性を見極める段階へ移ったといえます。今後は四半期ごとの増益率だけでなく、コア営業利益、最終利益、営業キャッシュ・フローが同じ方向へ改善していくかが、株価の一段高を左右するポイントになりそうです。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Why Has Sumitomo Chemical’s Share Price Rebounded?

Sumitomo Chemical Co., Ltd. surged 7.18% to ¥559.8 on August 21, ranking second among gainers on the Tokyo Stock Exchange’s Prime Market. The rally reflected renewed investor confidence following the company’s strong first-quarter results for the fiscal year ending March 2027.

Revenue increased 9.9% year on year to ¥578.2 billion, while operating profit more than doubled to ¥61.0 billion. Profit attributable to owners of the parent reached ¥40.8 billion, reversing a ¥4.5 billion loss recorded a year earlier.

The Essential & Green Materials segment was the main earnings driver. Improved trading conditions at Petro Rabigh and inventory valuation gains accompanying higher synthetic resin prices lifted the segment’s core operating profit to ¥27.2 billion, compared with a ¥5.5 billion loss in the previous year.

First-quarter net profit already represented approximately 58% of the company’s full-year forecast of ¥70 billion. This strong progress has raised expectations for a potential upward revision, although management retained its full-year outlook and remains cautious about second-half earnings.

The stock’s valuation also attracted investors. Based on the supplied market data, Sumitomo Chemical was trading at approximately 13.2 times forecast earnings and 0.84 times book value. Its below-book valuation suggests that the market is still questioning the sustainability of the earnings recovery, leaving room for a re-rating if profit growth continues.

The balance sheet is gradually improving. Interest-bearing debt declined by ¥19.3 billion from the end of March, while the debt-to-equity ratio improved from 0.93 to 0.80. The planned annual dividend was also raised to ¥16 per share from ¥13.5 in the previous fiscal year.

Key risks include volatile petrochemical market conditions, raw-material prices, foreign-exchange movements, high debt levels and weak free cash flow during the first quarter. Investors should therefore focus on whether the recovery reflects a lasting improvement in earning power or merely a cyclical rebound.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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【STOCK EXPRESS(ストックエクスプレス)】(略称:STOCK.EX)株主視点の経済ニュース考察を発信してまいります!
語り手は、SHUN
渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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