ソフト99、TOBをめぐり新局面へ!大株主キーパー技研が方針転換、エフィッシモの対抗TOBに応募【ソフト99劇場:第4章】

ソフト99、TOBをめぐり新局面へ!大株主キーパー技研が方針転換、エフィッシモの対抗TOBに応募 M&A・TOB・アクティビスト

カーケア用品大手の ソフト99コーポレーション(証券コード:4464)は、経営陣が主導するMBO(マネジメント・バイアウト)による株式の非公開化を目的に実施中のTOB(株式公開買い付け)をめぐり、新たな展開を迎えました。第2位大株主のキーパー技研KeePer技研)が10月24日、旧村上ファンド系の投資会社エフィッシモ・キャピタル・マネジメントによる対抗TOBに応募すると発表したためです。
この騒動については、STOCK EXPRESSでも注目しており、要所で度々報じてきました。9月30日の記事(ソフト99、MBOを巡り対抗TOB勃発!2位株主 KeePer技研の判断がカギに)にて、キーパー技研の動きがカギになるとお伝えしましたが、まさにそのキーマンの動きが出てきましたね。以下にて詳しく見ていきましょう。

MBOへの賛同から一転、対抗TOBへ応募

キーパー技研は当初、ソフト99創業家出身の田中秀明社長が全株式を保有する特別目的会社(SPC)を通じたMBOに賛同し、9月2日には公開買付応募契約を締結していました。しかし今回、同社はその方針を転換。TOB価格がソフト99側の2680円に対し、エフィッシモ側は4100円と1420円高いことを理由に、対抗TOBに応募する決定を下しました。

キーパー技研は、「低い買付価格を提示するMBOに応募する合理的理由を見出せない」とし、さらに「当初契約時点から状況が大きく変化しており、契約の有効性にも疑義がある」と説明しています。同社は今回の判断について、「企業価値の向上と株主共同の利益の観点から最善の選択」と強調しました。

キーパー技研の業績にも影響

今回の方針転換により、キーパー技研は2026年6月期の特別利益を当初見込みの約23億円から、約3倍となる67億円に上方修正する見通しです。これを受けて24日の同社株価は前日比2.71%高の3780円で取引を終えました。一方、ソフト99株価も21.97%高の3885円まで急騰し、後場ではストップ高買い気配となりました。

▼ソフト99株価推移(2025年9月〜10月24日)
ソフト99株価推移(2025年9月〜10月24日)

市場関係者の間では、「上場企業として株主への合理的な説明責任を果たすためには、価格差1420円という開きが決定的だった」との見方が広がっています。

MBOの成立に黄信号、期限迫る

ソフト99は、経営の自由度を高めることを目的に、堯(ぎょう)アセットマネジメントを通じて8月からTOBを実施してきました。当初の買付価格は2465円でしたが、対抗TOBの出現を受けて10月17日に2680円へ引き上げ、さらに期限も10月31日まで延長しています。(10月18日の記事参照:ソフト99、MBO vs. エフィッシモの対抗TOBで揺れる —MBOの株式公開買付価格引き上げ、期間も延長

9月24日時点では、キーパー技研の保有株数を加味すればMBO成立条件を満たす見通しでしたが、今回の方針転換により情勢は一変しました。MBOの成立は極めて厳しい局面を迎えており、今後のソフト99側の対応に注目が集まります。

今回のTOB競合は、上場企業のMBOにおける「買付価格の妥当性」や「株主利益の最大化」を改めて問う事例となりました。大株主による賛否の変化が株価に直結する展開は、今後のMBO案件においても重要な前例として注目されそうです。

日本株市場に吹くアクティビズムの追い風

Keeperが高値TOBに応募、企業統治の「当たり前」へ前進

日本市場で、株主利益を重視する「当たり前」の動きが着実に広がっています。カーコーティング大手のKeeper技研は、投資ファンドエフィッシモ・キャピタル・マネジメントによる高値での公開買付(TOB)に応募する方針を明らかにしました。一方、同社と関係の深いソフト99コーポレーションによる、より低い価格でのMBO(経営陣による自社買収)には応募しない姿勢を示しています。

Keeperはその理由として、「エフィッシモのTOB価格より1420円低い公開買付価格を提示するMBOに応募する合理性は見いだせない」と説明しています。さらに、「エフィッシモのTOBに応募することが企業価値の向上、ひいては株主共同の利益の観点から最善である」と明言しました。

この判断は、企業間の関係よりも株主の利益を優先する姿勢を示すものであり、日本企業のガバナンス意識が一段と成熟していることを象徴しています。

平成の「常識」からの決別

今回のKeeperの対応は、かつての日本的企業慣行と一線を画す動きとして注目されます。平成時代の象徴的な事例として知られるのが、ニッポン放送のTOBです。2005年、フジテレビが5950円でTOBを実施した際、市場価格はそれ以上だったにもかかわらず、多くの機関投資家が安値で応募しました。背景には「グループとの関係維持」を優先する姿勢があり、投資家としての本分である「預かり資金の利益最大化」が軽視されていました。

当時の記事では、「フジサンケイグループとの取引関係に配慮してライブドアに売却できなかった」という声も紹介されており、企業関係と株主利益の板挟みが生じていたことが明らかになっています。

「株主の利益を最優先」が新常識に

今回のKeeperの決断は、こうした旧来の「関係重視型」から「株主利益重視型」への明確な転換を示しています。日本企業が本来の企業価値向上のために、株主との信頼関係を再構築する流れが見え始めています。

このような動きは、国内だけでなくアメリカやアジアでも活発化している**アクティビズム(物言う株主)の潮流とも連動しています。企業の透明性や資本効率の改善が進むことで、最終的にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)**などの公的機関が運用する日本株全体のパフォーマンス向上にもつながる可能性があります。

「のろしの煙」が示す未来

世界各地でアクティビズムの「のろし」が上がるなか、日本もまたその一角を担う存在へと変わりつつあります。
Keeperの判断は一企業のニュースにとどまらず、日本市場全体の企業統治と投資家文化の成熟を象徴する出来事といえるでしょう。

「平成の常識」から脱却し、「株主の利益を守るのが当たり前」という新しい時代が、確実に始まっているのかもしれません。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK EXPRESS車掌 SHUN

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【ソフト99劇場:今までの展開】
・第1章:ソフト99 × エフィッシモ攻防戦――「PBR1倍割れMBO」に挑む対抗TOBの行方
・第2章:ソフト99、MBOを巡り対抗TOB勃発!2位株主 KeePer技研の判断がカギに
・第3章:ソフト99、MBO vs. エフィッシモの対抗TOBで揺れる —MBOの株式公開買付価格引き上げ、期間も延長

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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