造船業界の将来性が一段と高まっています。日米両政府は米国トランプ大統領の明日10月27日からの来日に合わせ、造船能力の増強に向けた協力覚書の締結を調整しています。両国で作業部会を設け、設計・部品仕様の共通化や先端技術の導入、人材育成まで幅広く連携し、世界トップシェアを誇る中国への依存を低減する狙いです。安全保障上の重要インフラである海上輸送の自律性を高める取り組みで、造船は国家政策の中核産業としての位置づけを強めています。
国内では、今治造船など主要17社で構成する業界団体(日本造船工業会)が、建造量倍増に向け3500億円規模の設備投資を表明する方針です。大型つり上げクレーンの導入などで既存ドックの回転率を高め、生産能力の底上げを急ぎます。政府は2035年に建造量を約1800万総トン(24年の約908万総トンの倍)へ引き上げる目標の検討に入っており、これを支える枠組みとして1兆円規模の官民投資基金の創設が与党内で議論されています。業界側は資金の一部として民間で計3500億円を拠出する意向を示し、残余を政府拠出で補完する構図です。
・IHI
・川崎重工業
・住友重機械工業
・内海造船
・名村造船所
・三井E&S
・三菱重工業
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背景には、世界の受注が中国に偏在している現状があります。国土交通省によれば、今後の建造量に反映される受注量で中国のシェアは2024年に7割超。一方、日本は8%まで低下しました。このまま依存度が高まれば有事の際の輸送に支障を来しかねないという問題意識が、日米の政策連携を後押ししています。覚書では、共同技術開発の円滑化や、日本で設計した部品を米国造船所で生産するなどの分業、修理や部品供給の相互融通も視野に入ります。AIなどの先端技術を活用した設計・機能の高度化、人材の獲得・育成の強化も盛り込まれる見通しです。
設備投資の矛先は、生産性のボトルネック解消に向かいます。なかでもゴライアスクレーン等の大型クレーンは建造工程の心臓部で、ブロック大型化と工期短縮の鍵を握ります。1基あたり100億円弱と高額で、国内では製造企業が限られ、納期は6~7年に及ぶ可能性があります。長期の納期リスクに耐える基金設計が求められており、LNG船の再開、設計の共通化、人材確保などへの活用も検討されます。
一方、需要面では環境規制の強化が追い風です。国際海運の脱炭素に向け、アンモニアやメタノール、LNGなど次世代燃料船の建造・改造需要が中長期で顕在化しています。ジャパンエンジンコーポレーションはアンモニア・水素対応エンジンで先行し、三井E&Sは船用エンジンに加え港湾クレーン事業を持つなど、技術と製品ポートフォリオで恩恵の波及が見込まれます。電装・計測では古野電気や東京計器、燃費直結の船底防汚塗料では中国塗料など、裾野は広く、政策・規制・需要の三位一体の追い風が産業全体に波及しやすい局面です。
造船所サイドでは、名村造船所や内海造船など汎用船を軸に手がける専業各社に、ドック回転率の改善と受注残の厚みが業績レバレッジとして働きやすい環境が整いつつあります。足元の市況は買い手市場から売り手市場へと転換しており、受注選別が可能になったことで採算改善が期待されます。日米での設計・仕様共通化は量産効果につながり、稼働率上昇と合わせて利益率の底上げに資する見通しです。
もっとも、リスクも存在します。世界貿易の鈍化や運賃指数の下落が船腹需給を冷やす可能性、基金の規模・時期・使途の不確実性、長納期設備の供給制約、燃料規格の覇権争いといった技術的不確実性、米中対立の深化に伴う地政学リスクなどが挙げられます。投資家にとっては、政策近接度(基金適用可能性)、受注残と設備余力、次世代燃料・電子化での技術優位、ボトルネック(クレーン等)での立ち位置といった選定軸で、中長期の再評価余地を見極めることが重要でしょう。
総じて、造船は「国家インフラ×安全保障×脱炭素」の複合テーマとして息の長い投資ストーリーになり得ます。日米協力枠組み、1兆円基金構想、業界3500億円投資が同時進行する現在の環境は、供給制約の解消と標準化による効率化、環境投資の需要取り込みを通じて、2035年の建造量倍増というマイルストーンを現実的な目標へと引き上げます。政策の後押しと民間の自己変革がかみ合えば、日本の造船は長らく停滞した世界シェアの巻き返しに向け、持続的な収益基盤の構築に踏み出す局面にあります。

最近では、半導体やAI企業の業績の伸びに目が行きがちですが、実は造船関連企業の株価も大幅に上昇しています。私自身、今まで造船銘柄を保有してこなかったので、春先あたりに保有しておけば… と思ったりしますが(汗。国家施策の追い風を考えますと、今からでも遅くないかもしれません。チェックしていきたいと思います。
造船といえば、造船太郎氏のお名前も思い浮かびますが(笑、彼も再び造船銘柄を仕込み始めているのでしょうか?気になるところです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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