不動産大手5社の第1四半期決算、企業ごとに明暗
不動産大手の2027年3月期第1四半期決算が出揃てきました。STOCK EXPRESSでもお伝えしたように、8月6日に住友不動産、東急不動産HD、8月7日に三井不動産、三菱地所、などが続々と決算を発表しました。対象期間は2026年4月1日から6月30日までです。
売上高の規模では三井不動産が首位を維持しました。一方、前年同期比の伸び率を見ると、三菱地所が売上高39.4%増、営業利益94.3%増と突出した成長を記録しています。住友不動産と東急不動産HDも営業増益を確保したのに対し、三井不動産と野村不動産ホールディングスは前年同期の物件売却や分譲計上の反動などにより、減収減益となりました。
不動産会社の四半期業績は、オフィスや商業施設から得られる継続的な賃貸収益だけでなく、マンションの引き渡しや大型物件の売却時期によって大きく変動します。このため、第1四半期の増減率だけで年間の優劣を判断するのではなく、通期計画に対する進捗、今後の売却予定、賃貸事業の収益力、金利上昇による資金調達コストなどを総合的に見る必要があります。
それぞれの企業の決算発表内容、さらには、不動産業界の展望について、以下にて深堀りしていきましょう。
売上高首位は三井不動産、前年同期の反動で減収減益
売上高首位となった三井不動産(8801)の2027年3月期第1四半期連結業績は、売上高6,169億3,000万円で前年同期比23.1%減、営業利益1,035億700万円で同35.4%減となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益も758億1,800万円と同39.0%減少しています。
売上高営業利益率は約16.8%です。大幅な減収減益ではあるものの、前年同期には分譲事業などで大型案件の計上があり、その反動が数字に表れた面があります。実際、賃貸事業の外部顧客向け売上高は前年同期の2,260億円から2,413億円へ増加し、同事業の営業利益も460億円から547億円へ伸びました。基盤となる賃貸事業は堅調であり、連結全体の減益率だけでは見えにくい底堅さも確認できます。
2027年3月期通期の連結業績予想は、売上高2兆8,000億円で前期比3.3%増、営業利益4,100億円で同3.1%増です。第1四半期の売上高進捗率は約22.0%、営業利益進捗率は約25.2%となります。会社側は通期予想を据え置いており、今後の物件売却や分譲引き渡しによって年間では増収増益を目指す計画です。
投資家にとっては、賃貸事業の成長に加え、分譲事業で計上を予定する大型案件の進捗が焦点となります。また、同社は総資産が10兆円を超える国内最大級の総合不動産会社であるだけに、資産効率の改善や政策保有株式の縮減、株主還元の拡充も株価評価を左右する材料になりそうです。
◎三井不動産の決算発表詳細は、下記記事参照:
https://stockexpress.jp/mitsuifudosan20260807/
三菱地所が大幅増収増益、営業利益は約2倍に
売上高2位の三菱地所(8802)は、今回の決算で最も強い増益率を示しました。2027年3月期第1四半期の売上高は4,976億8,500万円で前年同期比39.4%増、営業利益は1,212億4,000万円で同94.3%増です。売上高営業利益率は約24.4%に達し、規模と収益性の両面で存在感を示しました。
営業利益が前年同期の約2倍となった背景には、国内外の物件売却や住宅関連事業の計上時期が寄与したとみられます。丸の内を中心とする安定的なオフィス賃貸収益を基盤としながら、開発物件の売却によって利益を積み上げる同社の事業モデルが、第1四半期には良い方向に表れました。
2027年3月期通期予想は、売上高2兆円で前期比14.5%増、営業利益3,700億円で同12.2%増です。第1四半期の進捗率は売上高が約24.9%、営業利益が約32.8%となり、5社の中でも営業利益の進捗が高い水準にあります。
もっとも、四半期ごとの不動産売却益は振れが大きいため、この伸び率がそのまま年間を通じて続くとは限りません。投資家は、丸の内エリアのオフィス空室率や賃料改定、海外事業の採算性、今後の売却計画などを確認する必要があります。それでも、通期計画に対する好調な滑り出しは、株式市場にとってポジティブな材料といえます。
◎三菱地所の決算発表詳細は、下記記事参照:
https://stockexpress.jp/mitsubishiestate20260807/
東急不動産HDは小幅減収ながら2桁営業増益
売上高3位の東急不動産ホールディングス(3289)は、売上高2,857億7,400万円で前年同期比0.8%減、営業利益465億9,300万円で同12.7%増となりました。売上高はほぼ横ばいでしたが、利益面では2桁増益を実現しています。売上高営業利益率は約16.3%となりました。
売上高を大きく増やさずに営業利益を伸ばした点は、事業構成の改善や高採算案件の寄与を示すものとして注目されます。同社はオフィスや商業施設、住宅に加え、ホテル、リゾート、再生可能エネルギー、資産運用など幅広い事業を展開しています。この多角化が収益機会を広げる一方、ホテル需要や電力市場、金利環境など複数の外部要因から影響を受ける構造でもあります。
通期では売上高1兆4,000億円で前期比12.4%増、営業利益1,900億円で同13.9%増を見込んでいます。第1四半期の進捗率は売上高が約20.4%、営業利益が約24.5%です。営業利益はおおむね4分の1に達しており、出だしとしては堅調と評価できます。
今後は、広域渋谷圏を中心とした大型再開発の収益化や、ホテル・リゾート事業の成長、再生可能エネルギー事業の利益貢献が焦点です。大型開発には先行投資や資金負担も伴うため、成長投資と財務健全性のバランスが中長期の企業価値を左右しそうです。
住友不動産は高い利益率を維持、営業利益は過去最高圏
売上高4位の住友不動産(8830)は、売上高2,810億1,600万円で前年同期比4.2%減となった一方、営業利益は1,028億4,600万円で同1.0%増となりました。売上高営業利益率は約36.6%と、今回取り上げた主要各社の中で最も高い水準です。
減収の中でも増益を確保できたことは、オフィスビル賃貸を中心とする収益基盤の強さを映しています。東京都心に多数の賃貸ビルを保有する同社は、賃料収入を継続的に得られるストック型事業の比重が高く、不動産売却の計上時期による影響を相対的に受けにくい点が特徴です。マンション販売や注文住宅、リフォームなど市況変動の影響を受ける事業を抱えながらも、主力の賃貸事業が全体を支えています。
2027年3月期通期予想は、売上高1兆700億円で前期比1.2%増、営業利益3,200億円で同7.0%増です。第1四半期時点の進捗率は売上高が約26.3%、営業利益が約32.1%となり、利益面では順調な進捗です。
同社を見るうえでは、東京都心のオフィス需要と賃料上昇の持続性が重要です。一方、金利上昇局面では借入コストの増加が不動産会社全般の課題となります。高い営業利益率を維持しつつ、増加する金融費用をどこまで吸収できるかが今後の注目点です。
◎住友不動産の決算発表詳細は、下記記事参照:
https://stockexpress.jp/sumitomorealtydevelopment20260806/
野村不動産HDは減収減益、通期計画達成には下期偏重を注視
売上高5位の野村不動産ホールディングス(3231)は、売上高1,910億6,400万円で前年同期比13.7%減、営業利益255億4,000万円で同30.6%減となりました。売上高営業利益率は約13.4%です。
同社は「プラウド」ブランドのマンションをはじめ、オフィス、物流施設、資産運用、仲介・管理などを展開しています。第1四半期は住宅や収益不動産の引き渡し、売却時期の違いが業績に影響したと考えられます。不動産分譲は物件の完成・引き渡し時に売上高と利益を計上するため、四半期単位では業績が大きく変動しやすい事業です。
2027年3月期通期では、売上高1兆800億円で前期比14.6%増、営業利益1,400億円で同1.3%増を計画しています。第1四半期の進捗率は売上高が約17.7%、営業利益が約18.2%にとどまり、5社の中では低めです。ただし、マンションの引き渡しや物件売却が下期に集中する事業計画であれば、現時点の進捗率だけで未達を判断することはできません。
今後は、住宅分譲の契約状況や利益率、物流施設などの収益不動産売却、資産運用部門の受託資産拡大がポイントとなります。建築費や人件費の上昇が住宅価格と採算に及ぼす影響にも注意が必要です。
ヒューリックが大手5社を追う、上期売上高は38.8%増
大手5社を追う存在として、ヒューリック(3003)の成長にも注目が集まります。同社は12月期決算を採用しているため単純比較はできませんが、2026年12月期第2四半期累計、すなわち2026年1月1日から6月30日までの売上高は4,165億9,600万円で前年同期比38.8%増、営業利益は803億1,300万円で同7.0%増となりました。売上高営業利益率は約19.3%です。
ヒューリックは1957年に、富士銀行、現在のみずほ銀行が保有していた不動産を母体とする日本橋興業として設立され、2007年に現在の商号へ変更しました。銀座や日本橋、新宿など東京都心の駅近物件を中心に、オフィスビルや商業施設、ホテル、高齢者施設などへ積極的に投資しています。銀座エリアに多数の物件を保有することから、「銀座の大家さん」と呼ばれることもあります。
2026年12月期の会社計画では売上高予想を公表していない一方、営業利益は2,100億円で前期比12.4%増を見込んでいます。第2四半期累計の営業利益進捗率は約38.2%です。下期に予定する不動産売却の規模と採算が、通期計画達成の鍵を握ります。ヒューリックのIR情報でも最新の決算資料を確認できます。
◎ヒューリックの決算発表詳細は、下記記事参照:
https://stockexpress.jp/hulic20260728/
「不動産の商社化」へ、鉄緑会運営会社の買収を決定
ヒューリックは2026年7月7日、東京大学受験指導専門塾「鉄緑会」を運営する東京教育研の全株式を取得することを決定しました。中長期経営計画で掲げる「不動産の商社化」の一環であり、同社が手掛けるこども教育事業との相乗効果を狙います。買収金額は公表されていません。
鉄緑会は、中高一貫校の生徒を主な対象とする東大受験指導専門塾です。名称の「鉄」は東京大学医学部の同窓会組織である鉄門倶楽部、「緑」は東京大学法学部の自治会である緑会に由来します。1983年の設立後、2007年にはベネッセコーポレーションの傘下に入りました。
ヒューリックによる買収は、単なる賃貸ビル事業から教育、観光、高齢者施設などへ収益源を広げる戦略を象徴しています。不動産と教育サービスの組み合わせによって、校舎物件の開発・運営や教育関連事業の拡大につなげられるかが注目されます。一方、本業と異なる事業領域への投資では、買収価格に見合う利益やキャッシュフローを生み出せるか、投資後の運営を適切に管理できるかが重要です。
◎ヒューリックの鉄緑会買収に関する詳細は、下記記事参照:
https://stockexpress.jp/hulic20260707/
東京建物は減収ながら17.1%営業増益
東京建物(8804)も12月期決算のため大手5社と対象期間が異なりますが、2026年12月期第2四半期累計の売上高は1,944億1,500万円で前年同期比6.9%減、営業利益は398億5,200万円で同17.1%増となりました。売上高営業利益率は約20.5%で、減収ながら収益性を改善しています。
通期予想は売上高5,240億円で前期比10.4%増、営業利益1,055億円で同10.2%増です。上期の進捗率は売上高が約37.1%、営業利益が約37.8%となります。同社も物件売却やマンション引き渡しの時期によって四半期業績が変動するため、下期に計画する案件の進捗が重要です。最新資料は東京建物のIR情報で確認できます。
東京建物は東京駅周辺の「八重洲・日本橋・京橋」エリアで大型再開発を進めるほか、住宅ブランド「Brillia」、物流施設、ホテル、資産運用などを展開しています。都心再開発による長期的な成長余地が期待される一方、建設費上昇や開発期間の長期化には注意が必要です。
投資家が注目すべきは利益率、金利、物件売却の3点
今回の決算では、売上高規模で三井不動産、増収増益率で三菱地所、営業利益率で住友不動産が目立ちました。東急不動産ホールディングスは小幅減収ながら2桁増益を確保し、野村不動産ホールディングスは下期に向けた挽回が課題となっています。さらに、ヒューリックと東京建物も営業増益となり、上位企業を追う動きを強めています。
投資家がまず確認したいのは、利益の中身です。大型物件の売却益による増益は業績を押し上げますが、毎年同じ規模で発生するとは限りません。オフィス賃料や管理収入など、継続性の高い利益がどの程度増えているかを見極めることが重要です。
次に、金利動向です。不動産会社は開発用地や建物の取得に多額の借入金を利用するため、金利上昇は支払利息の増加につながります。その一方、インフレ局面でオフィス賃料や住宅価格を引き上げることができれば、資産価値と収益の拡大が金利負担を補う可能性もあります。各社の固定金利比率、平均調達金利、借入期間などが重要な確認項目になります。
そして、通期計画に織り込まれた物件売却と住宅引き渡しの確度です。第1四半期時点では、三菱地所と住友不動産の営業利益進捗率が30%を超える一方、野村不動産ホールディングスは20%を下回りました。ただし、不動産業界では下期に利益計上が偏ることも珍しくありません。単純な進捗率だけでなく、契約済み案件や売却予定資産の状況まで確認する必要があります。
不動産株は資産価値の見直しと株主還元も焦点に
国内の不動産大手は、東京都心を中心に多額の含み益を持つ物件を保有しています。企業が保有資産を売却し、得られた資金を成長投資や自社株買い、増配に振り向ければ、資本効率の改善と株主価値の向上につながります。東京証券取引所が上場企業に資本コストや株価を意識した経営を求める中、不動産会社にも保有資産の入れ替えや政策保有株式の縮減が一段と求められています。
一方で、優良物件を売却し過ぎれば、将来の安定的な賃料収入が減少する可能性があります。売却益を確保しつつ、再開発や新規取得によって収益資産を育成する循環を構築できるかが重要です。投資家は短期的な利益の増減だけでなく、ROEや一株当たり純資産、ネット有利子負債、営業キャッシュフロー、株主還元方針なども含めて比較したいところです。
2027年3月期第1四半期は、企業ごとの物件計上時期によって明暗が分かれました。しかし、大手各社が通期で増収または増益を計画している点は共通しています。東京都心のオフィス需要、インバウンドによるホテル・商業施設需要、再開発、資産回転型ビジネスの拡大は追い風となる一方、金利上昇、建設費高騰、人手不足はリスク要因です。今後の中間決算では、各社がこうした環境変化を乗り越え、通期計画に沿って利益を積み上げられているかが最大の焦点となります。
私自身、不動産株を保有しており、この業界の今後に注目していきたいと思います。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Japan’s Major Property Developers Report Mixed First-Quarter Results as Mitsubishi Estate Delivers Strong Growth
Japan’s five major property developers reported mixed results for the first quarter of the fiscal year ending March 2027. Mitsui Fudosan remained the largest by revenue, recording revenue of ¥616.9 billion and operating profit of ¥103.5 billion. Both figures declined year on year, mainly reflecting the timing of property sales and condominium deliveries.
Mitsubishi Estate posted the strongest growth. Revenue increased 39.4% to ¥497.7 billion, while operating profit surged 94.3% to ¥121.2 billion. Its operating profit reached approximately 32.8% of the full-year forecast, indicating a strong start to the fiscal year.
Tokyu Fudosan Holdings reported a slight revenue decline of 0.8%, but operating profit rose 12.7% to ¥46.6 billion. Sumitomo Realty & Development maintained particularly high profitability, with operating profit of ¥102.8 billion and an operating margin of approximately 36.6%.
Nomura Real Estate Holdings recorded lower revenue and profit, with operating profit declining 30.6% to ¥25.5 billion. Its full-year performance will depend heavily on condominium deliveries and property sales scheduled for later quarters.
Hulic and Tokyo Tatemono, both of which use a December fiscal year-end, also reported higher operating profits for the six months ended June 2026. Hulic continues to expand rapidly and is diversifying beyond conventional property leasing, including through its planned acquisition of the operator of Tetsuryokukai, a prestigious preparatory school for University of Tokyo applicants.
For investors, key factors include the quality and sustainability of earnings, office rent growth, property-sale schedules, construction costs and the impact of higher interest rates. Capital efficiency, asset sales, share buybacks and dividend policies will also remain important drivers of valuations.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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