楽天グループ株、年初来安値で「そろそろ買い」か? 680円台に映る割安感と、金利上昇があぶり出す落とし穴

楽天グループ株、年初来安値で「そろそろ買い」か? 680円台に映る割安感と、金利上昇があぶり出す落とし穴 株式劇場

楽天グループ(4755)の株価が、再び年初来安値を更新しました。9月25日は一時678.2円まで下落し、終値は680.2円。1月に付けた年初来高値1,026円から、およそ34%安い水準です。かつて1,000円を超えていた株が680円台で買える。そう聞けば、投資家としては、そろそろ反発を狙いたくもなってくるものです(汗。

しかし、株価の下落率と企業価値の割安さは同じではありません。楽天グループの場合、投資家として値踏みしているのは、成長を続けるEC・金融事業の価値だけでなく、楽天モバイルの投資負担、社債の償還、そして上昇する金利に耐えながら利益を積み上げられるかという点です。今の680円台は「安くなった楽天」を買える機会なのでしょうか。それとも、まだ見えない負担を映した価格なのでしょうか。以下にて深堀りして考察してみます。

年初来安値の背景に、金利上昇という新たな重荷

▼楽天グループ株価推移(2026年1月〜9月25日)

楽天グループ株価推移(2026年1月〜9月25日)

楽天グループ株価推移(2026年1月〜9月25日)

9月25日の東京市場で、楽天グループ株は前日終値691.8円からさらに下げ、一時678.2円を付けました。年初来安値の更新です。同じ日の国内債券市場では、長期金利が一時3.115%に達したと報じられました。楽天グループのように借り入れや社債による資金調達を続ける企業にとって、金利の上昇は見過ごしにくい環境変化です。

もちろん、長期金利が上がったからといって、楽天グループの既存の借入金や社債の利払いが一斉に増えるわけではありません。固定金利で調達した資金の条件は、通常、その満期まで維持されます。問題になるのは、今後の借り換えや新たな資金調達です。より高い金利で資金を確保することになれば、事業で生み出した利益のうち、利払いに回る部分が増えかねません。

楽天グループは、通信網の整備を続けながら、既存の債務にも対応する必要があります。金利が低かった時期には将来の成長を期待して許容されていた投資負担も、金利上昇局面では厳しく評価されやすくなります。9月25日の売りを金利だけで説明することはできませんが、投資家が財務負担を改めて意識する材料にはなったと考えられます。

発端は8月決算――「黒字なのに売られた」理由

足元の下落をたどると、大きな節目は8月10日に発表された2026年1~6月期決算にあります。上期の連結営業損益は504億円の黒字となり、前年同期の赤字から改善しました。4~6月期には売上収益が6,655億円と、第2四半期として過去最高を記録しています。数字だけを見れば、楽天グループの事業は前進していました。

◎関連記事:【楽天グループ 決算発表】EC・金融がけん引し4〜6月期は6年ぶり最終黒字!上期営業黒字504億円

それでも、市場が注目した4~6月期の営業利益は約200億円で、市場予想を約140億円下回りました。物流事業で計上した約170億円の損失が、その主な要因です。倉庫の利用計画が想定どおりに進まず、減損損失などを計上しました。決算発表後、株価は大幅に下落しています。

ここに株式市場の厳しさがあります。前年より利益が増えたかどうかだけでは、株価の反応は決まりません。投資家が事前に期待していた利益を上回ったか、そしてその利益が今後も続くかが問われます。物流の損失が一時的なものであっても、「これで損失計上は一巡した」と期待していた投資家には、再び想定外の費用が現れたように映ります。

会社は対象となる自社保有倉庫の簿価について、全額を減損済みと説明しています。したがって、同じ資産について同規模の減損が繰り返されると決めつけることはできません。ただし、市場が次に確認したいのは、追加損失の有無だけではないでしょう。投資した資産から、計画どおりの収益を得られるかという資本配分の精度も問われています。

楽天モバイルは成長している。それでも赤字は大きい

楽天グループを評価するうえで、避けて通れないのが楽天モバイルです。2026年6月末の全契約回線数は1,075万回線と、前年同期から178万回線増加しました。4~6月期のARPUも2,921円で、前年同期を60円上回っています。利用者を増やし、1回線当たりの収入を高めるという方向には進んでいます。

その一方で、モバイル部門の4~6月期のNon-GAAP営業損益は331億円の赤字でした。前年同期から損失は縮小したものの、依然として四半期で数百億円規模の赤字です。契約回線数の増加を評価する投資家と、黒字化までの距離を重く見る投資家。その見方の差が、楽天グループ株の評価を難しくしています。

しかも、通信サービスは利用者が増えれば投資を止められる事業ではありません。通信品質を維持し、混雑する地域を改善し、競合他社と渡り合うには、基地局などへの支出が続きます。楽天モバイルが示した2026年度のネットワーク関連設備投資計画は2,000億円。会社は計画を据え置き、下半期に基地局建設を加速させる方針です。

投資家にとっての核心は、契約回線数がさらに増えるかどうかだけではありません。顧客獲得にかかる費用や通信網への投資を差し引いた後、モバイル事業がいつ、どれほどの現金を生み出せるようになるかです。回線数の伸びが続いても、投資負担の増加がそれを上回れば、財務への圧力は残ります。

「社債償還が不安」はどこまで正しいのか

財務不安を考えるとき、期限を分けて見る必要があります。楽天グループは、2026年に償還を迎える社債について、原資を確保済みと説明しています。2026年5月には保有有価証券の売却によって約2,000億円を調達し、同年4月と6月には一部の社債を償還しました。「すぐに社債返済の資金が足りなくなる」という見方は、会社の開示とは合いません。

一方、会社は2027年以降の社債償還について、市場環境に応じた手段で対応する方針も示しています。社債の発行、借り入れ、資産の売却や流動化など、選択肢はあります。ただ、どの手段を、どの条件で使えるかは、その時の金利や市場環境に左右されます。

ここが株価の「落とし穴」になり得ます。足元の資金を確保していることと、将来にわたり有利な条件で資金調達できることは別です。金利上昇が長引く場合には、借り換えコストの増加が利益や投資余力を圧迫する可能性があります。ただし、将来の金利負担額を現時点で決め打ちすることもできません。市場が気にしているのは、最悪の事態が確定したからではなく、その不確実性に価格を付けているからです。

一方で、楽天の稼ぐ力を見落としてはいけない

株価が下がると、グループ全体が行き詰まっているように見えがちです。しかし、楽天グループには利益を伸ばしている事業があります。2026年4~6月期のフィンテック部門は、売上収益が前年同期比27.0%増の2,954億円、Non-GAAP営業利益が同60.1%増の692億円でした。楽天カード、楽天銀行、楽天証券などの事業が成長を支えています。

国内ECも伸びています。同四半期の国内EC流通総額は前年同期比5.3%増の約1兆5,322億円。ECと金融で得た顧客がモバイルを利用し、モバイルの利用者が楽天市場やカードを使う。楽天グループが描く経済圏の強みは、こうした事業間のつながりにあります。

金利上昇も、グループのすべての事業に同じ方向で作用するわけではありません。借り換えコストが上がる可能性がある一方、金融事業には収益面で追い風となる部分もあります。楽天株を見る際には、モバイルの赤字だけを切り取るのでも、金融事業の好調だけで安心するのでもなく、グループ全体で生み出す利益と必要な資金を合わせて見る必要があります。

680円台は割安なのか――株価の「値引き率」だけでは判断できない

年初来高値から約34%の下落は、視覚的にも大きな値下がりです。しかし、株式に定価はありません。1,026円が適正価格だったと証明されていなければ、680円台を自動的に「約3割引き」と呼ぶこともできません。高値を付けたときに織り込まれていたモバイルの成長期待や金利環境が変われば、投資家が妥当と考える価格も変わります。

安値圏で買う魅力は、期待が低くなった後に事業改善が確認できれば、株価の再評価が起き得ることです。モバイルの赤字縮小が加速し、設備投資を続けながら現金収支も改善する。さらに、社債の借り換えを無理のない条件で進められる。そうした実績がそろえば、現在の懸念が和らぐ余地があります。

反対に、モバイルの収益化が遅れ、投資負担や調達コストが想定以上に膨らめば、過去の高値から大きく下がった株価にも、なお下値余地はあります。「これだけ下がったのだから、もう下がらないはず」という考えは、投資判断の根拠にはなりません。

買うか待つかを考える際、次の決算で見たいこと

今の楽天グループ株を検討するなら、次の決算で最も見たいのは、楽天モバイルの回線数と利益がそろって改善するかです。回線数が増えても、1回線当たりの収入が伸び悩んだり、顧客獲得費用が増えたりすれば、黒字化までの道のりは長くなります。営業損失の縮小が続くか、設備投資を進めたうえで現金収支がどう変わるかが重要です。

もう一つは、物流を含むモバイル以外の事業で、大きな想定外の損失が再び出ないかです。金融とECの成長が続いても、別の事業の損失が利益を打ち消せば、市場が見込む全社利益には届きません。そして財務面では、2027年以降の償還に向け、資金調達の条件と負担がどのように示されるかを見極めたいところです。楽天グループのIRカレンダーでは、第3四半期決算の発表を2026年11月13日に予定しています。

「今すぐ買っても大丈夫か」に、株価水準だけで答えを出すことはできないでしょう。現時点では、成長事業の価値を先回りして評価する投資と、モバイルの収益化や借り換えの実績を確認してから判断する投資とで、引き受ける不確実性が異なります。680円台は投資家の関心を集める価格ですが、本当の買い場だったかどうかは、次の四半期以降に利益と現金収支が証明していくことになります。楽天グループの次の決算発表(2026年度第3四半期決算)は、2026年11月13日(金)に予定されています。どんな内容になるか… また記事にてお伝えしますね。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK EXPRESS車掌 SHUN

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Rakuten Group Hits a Year-to-Date Low: Bargain Opportunity or Value Trap?

Rakuten Group shares fell to ¥678.2 intraday on September 25, their lowest level this year. The stock has dropped about 34% from its January high, raising a question for investors: has the sell-off gone too far?

The company’s e-commerce and fintech businesses are growing, while Rakuten Mobile continues to add subscribers. Yet the mobile segment remains loss-making and requires substantial network investment. A logistics-related loss also caused second-quarter operating profit to miss market expectations. Rising interest rates have added concern about the cost of future refinancing.

Rakuten says it has secured funding for its 2026 bond redemptions. The key question is whether mobile earnings and cash flow improve fast enough to support continued investment and future debt repayments. The lower share price may offer upside if that progress becomes clear, but the decline alone does not establish that the stock is cheap.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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