楽天グループが2026年8月10日に発表した「2026年1〜6月期の連結決算」は、売上収益が前年同期比13%増の1兆3,090億円、IFRSベースの営業損益が504億円の黒字となりました。前年同期の66億円の赤字から大きく改善し、1〜6月期としては7年ぶりの営業黒字です。ECを中心とするインターネットサービスとフィンテックが利益成長をけん引し、モバイル事業の赤字縮小も寄与しました。
親会社の所有者に帰属する中間損益は109億円の赤字でしたが、前年同期の1,244億円の赤字から損失額が大幅に縮小しました。特に直近の4〜6月期は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が77億円となり、前年同期の510億円の赤字から587億円改善しました。四半期ベースの最終黒字は6年ぶりであり、長期にわたり投資家の最大の懸念材料となってきた楽天モバイルへの先行投資を抱えながら、グループ全体が収益回復局面に入ったことを示す決算となりました。
以下にて詳しく見ていきましょう!!
- 4〜6月期は売上収益、EBITDA、Non-GAAP営業利益が過去最高
- 国内ECは流通総額1.5兆円、構造改革で利益成長が加速
- フィンテックが最大の利益エンジン、銀行・証券も最高益
- フィンテック再編で2030年3月期に年850億円以上の相乗効果へ
- 楽天モバイルは1,075万回線、赤字縮小とARPU上昇が進展
- 年間2,000億円の設備投資を堅持、下半期に基地局建設を加速
- 低軌道衛星による直接通信、通信インフラの新たな成長軸へ
- 財務不安は後退、2026年の社債償還原資を確保
- AIで経済圏の回遊と利益率向上を狙う
- 投資家が注目すべきは「最終黒字の定着」とモバイルの改善速度
- 【Dear Overseas Investors: Summary in English】
4〜6月期は売上収益、EBITDA、Non-GAAP営業利益が過去最高
2026年4〜6月期の連結売上収益は前年同期比11.6%増の6,655億円となり、第2四半期として過去最高を更新しました。インターネットサービス、フィンテック、モバイルの全セグメントが増収となり、特定事業だけに依存しないトップラインの拡大が確認されました。
非経常的な項目などを除いた連結Non-GAAP営業利益は、前年同期比109.6%増の420億円でした。楽天モバイルがMNOサービスを開始して以降、第2四半期として過去最高です。IFRS営業利益も前年同期比126.9%増の200億円となりました。
事業のキャッシュ・フロー創出力を示す連結EBITDAは前年同期比11.7%増の1,153億円となり、こちらも第2四半期として過去最高を記録しました。物流事業では倉庫貸し出しサービスの最適化などに伴い約170億円の損失を計上しましたが、インターネットサービスとフィンテックの利益成長がこれを吸収しました。ネットスーパー事業および物流事業で自社保有する倉庫については、簿価全額の減損処理が完了したとしています。
投資家にとって重要なのは、今回の黒字化が一時的な資産売却益だけで実現したものではなく、各事業の収益力向上とモバイルの損失縮小を伴っている点です。ただし、物流関連の損失やモバイルへの継続投資など、今後も四半期ごとに利益が振れやすい要素は残っています。
国内ECは流通総額1.5兆円、構造改革で利益成長が加速
4〜6月期のインターネットサービスセグメントは、売上収益が前年同期比4.2%増の3,381億円、Non-GAAP営業利益が68.6%増の231億円となりました。売上高の伸びを大きく上回る利益成長を達成しており、楽天市場や楽天トラベルなどのコア事業の成長に加え、ネットスーパーや海外サービスなど、成長投資事業の採算改善が寄与しました。
国内EC流通総額は前年同期比5.3%増の1兆5,322億円でした。国内ECのNon-GAAP営業利益は30.8%増の297億円となり、主要事業の成長と事業ポートフォリオの最適化が利益率の改善につながっています。トラベル事業の取扱高は17.2%増と好調で、レジャー需要を着実に取り込みました。広告事業の売上収益も15.6%増の656億円と、2桁成長を維持しています。
広告事業では、楽天市場や楽天トラベルにおける検索連動型広告、ターゲティングディスプレイ広告へのAI活用が成長に貢献しました。楽天市場では、店舗ごとの専門知識を備え、商品提案や問い合わせ対応を行う「AI店長」の開発も進めています。楽天市場のAIコンシェルジュ経由では、従来の検索経由に比べ購入までの時間が約41%短縮され、平均注文単価が17%上昇したとのデータも示されました。
一方、会社側は7〜9月期について、前年に発生したふるさと納税制度改定前の駆け込み需要の反動を想定しています。EC事業の基調は堅調ですが、前年同期との比較では一時的に成長率が鈍化する可能性があり、次回決算では特殊要因を除いた実力値の見極めが必要です。
フィンテックが最大の利益エンジン、銀行・証券も最高益
4〜6月期のフィンテックセグメントは、売上収益が前年同期比27.0%増の2,954億円、Non-GAAP営業利益が60.1%増の692億円となりました。主要事業がそろって増収増益となり、グループの利益を支える最大の柱として存在感を一段と高めています。
楽天カードのショッピング取扱高は9.4%増の7.1兆円でした。キャッシュレス決済の拡大と顧客単価の上昇を背景に、売上収益は18.3%増、Non-GAAP営業利益は16.2%増となりました。金利上昇による金融費用の増加に対しては、リボ払いや「あとから分割」の料率変更などを通じて収益性を改善しています。
楽天銀行は2026年6月末時点で1,846万口座、単体預金残高は13.3兆円となり、それぞれ前年同期比8.1%、13.9%増加しました。預金を上回るペースで運用資産を積み上げたほか、日本銀行の政策金利引き上げも金利収益の追い風となりました。楽天銀行の4〜6月期の経常収益は36.3%増の784億円、経常利益は26.1%増の302億円となり、いずれも4〜6月期として過去最高です。
楽天証券の総合口座数は14.5%増の1,439万口座、NISA口座数は21.3%増の792万口座となりました。NISA口座は7月に800万口座を突破しています。活発な株式市場に加え、投資信託残高や受入手数料の増加が寄与し、営業利益は前年同期比136.5%増の209億円と、四半期として過去最高を更新しました。
フィンテック再編で2030年3月期に年850億円以上の相乗効果へ
楽天グループは2026年10月1日を効力発生日として、楽天銀行、楽天カード、楽天証券ホールディングスを楽天銀行を中心とする一つのグループに集約する計画です。資金調達の最適化、顧客基盤の拡大、データ連携、AI活用を進め、フィンテック事業間の相乗効果を高めます。
会社側は、カード・証券の外部借入を楽天銀行からの借り入れへ切り替えることや、証券の顧客預託金を銀行へ移管することなどにより、資金効率を改善する考えです。また、楽天カードの引き落とし口座として楽天銀行を利用する顧客を増やし、楽天証券との「マネーブリッジ」を活用して生活口座化を促進します。
定量化済みの相乗効果は、2027年3月期に年約50億円、2028年3月期に約330億円、2029年3月期に約660億円、2030年3月期には850億円以上を目指しています。計画通りに実現すれば、フィンテックは単なる利益の補完役ではなく、グループ全体の資金調達コストと企業価値を左右する中核事業になります。一方で、組織再編に伴う一時費用や少数株主との利害調整、金融規制への対応も注視すべき論点です。
楽天モバイルは1,075万回線、赤字縮小とARPU上昇が進展
4〜6月期のモバイルセグメントは、売上収益が前年同期比8.3%増の1,214億円となりました。Non-GAAP営業損失は331億円で、前年同期から41億円改善しています。楽天モバイル単体の売上収益は11.9%増の1,013億円、Non-GAAP営業損失は67億円改善して323億円となりました。楽天モバイル単体のEBITDAは6.4%増の59億円です。
2026年6月末の全契約回線数は前年同期から178万回線増加し、1,075万回線となりました。短期解約を目的とする契約の流入を抑えながら、継続利用が見込める顧客を中心とした純増構造の確立を進めています。調整後MNO解約率は1.38%と、前年同期の1.40%から小幅に改善しました。
エコシステムへの貢献を含むARPUは前年同期比60円増の2,921円、収益と費用の双方を考慮した正味ARPUは42円増の2,516円でした。データ使用量の増加に加え、セキュリティや端末補償などのオプション拡充が単価上昇に寄与しています。会社資料によると、データ利用量の中央値が1ギガバイト増えるごとにB2CのデータARPUが約31円上昇する相関も確認されています。
モバイルセグメント全体のEBITDAは28.4%減の68億円でした。楽天シンフォニーで前年に計上した為替差益の反動があったほか、エネルギー事業では中東情勢などを背景とする原価上昇が影響しました。契約回線数とARPUは改善しているものの、モバイルセグメント全体では依然として営業赤字が続いており、黒字化の速度が株価評価を左右する状況に変わりはありません。
年間2,000億円の設備投資を堅持、下半期に基地局建設を加速
楽天モバイルの4〜6月期の設備投資額は393億円、1〜6月期累計では655億円となりました。年間2,000億円の計画に対する進捗率は約33%であり、単純計算では下半期に投資が集中する形です。
三木谷浩史会長兼社長は、基地局の設置場所確保や工事設計など、2026年内の電波発射目標に向けた前工程は約9割が完了していると説明しました。期初計画分の基地局建設に必要な工事会社のリソースも確保済みで、下半期に工事と電波発射を加速する方針です。
JR山手線では全30駅のうち25駅で5Gネットワークの構築が完了し、池袋、鶯谷、御徒町、秋葉原、浜松町の残る5駅も2026年度内の整備を予定しています。東京メトロ沿線では帯域幅の拡張とMIMOの導入を進め、通信速度を最大2倍に高める計画です。
設備投資の加速は通信品質と解約率の改善につながる一方、短期的にはキャッシュ・フローの負担要因になります。年間計画を達成しながら、営業赤字と資金流出をどこまで抑えられるかが、下半期の重要な確認事項です。
低軌道衛星による直接通信、通信インフラの新たな成長軸へ
楽天モバイルは、総務省の「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業(J-LEO)」の間接補助事業者に採択されました。米AST SpaceMobileと協業し、日本国内で運用・管理する低軌道衛星コンステレーションを活用した衛星ダイレクト通信サービスの構築を目指します。
楽天モバイルは、J-LEO事業とは別にAST SpaceMobileの衛星を利用する商用サービスを2026年第4四半期から開始することを目指しています。将来的には山間部や離島、災害時など、地上基地局だけでは十分にカバーできない地域で、市販スマートフォンと衛星を直接接続する構想です。
政府はJ-LEO事業に対して3年間で約1,500億円を支援する計画とされます。衛星の保有・運用に関する権限を国内で確保し、有事にも安定的な通信網を維持する狙いがあります。楽天にとっては国土強靱化への貢献に加え、地上ネットワークを補完する新たな事業機会となる可能性がありますが、サービス開始時期、対応端末、通信品質、収益モデルなどは今後の具体化を待つ必要があります。
KDDIから提供を受けているローミングについては、自社でカバーできるエリアから順次縮小する一方、地方などKDDIのカバーが必要な地域では10月以降も契約に基づき継続する方針です。自社網への移行によるローミング費用の削減と、通信品質の維持を両立できるかが焦点となります。
財務不安は後退、2026年の社債償還原資を確保
財務面では、楽天グループが2026年5月に保有有価証券の一部を売却し、約2,000億円を調達しました。4月には817億円の米ドル建て永久劣後債、6月には200億円の円建てシニア債を全額償還しています。会社側は2026年中の社債償還に必要な原資を確保済みと説明しました。
2027年以降の償還については、国内外での社債発行、銀行借入、資産流動化、証券化、資産売却などを組み合わせ、市場環境に応じて対応する方針です。モバイルのキャッシュ・フロー改善や赤字事業の収益性向上によって、外部調達への依存を抑える「セルフファンディング」も強化します。
これまで楽天株の評価を抑えてきた要因の一つが、多額のモバイル投資と社債償還を巡る財務懸念でした。2026年分の資金手当てが完了したことで短期的な警戒感は後退します。ただし、2027年以降も償還は続くため、資産売却に過度に依存せず、営業キャッシュ・フローで資金需要を賄える体質へ移行できるかが中期的な評価ポイントです。
AIで経済圏の回遊と利益率向上を狙う
三木谷会長兼社長は決算説明会で、AIを徹底的に活用して業務効率を高め、それを基盤に営業利益率を引き上げる考えを示しました。楽天市場の商品提案、トラベル予約、広告配信、顧客対応などにAIエージェントを組み込み、グループ内サービスの相互利用を促進します。
楽天トラベルでは、AI活用ユーザーの平均宿泊予約額が非利用ユーザーに比べ13%高く、家族旅行・グループ旅行の宿泊予約数が29%多いという実績が示されました。AIが単なるコスト削減手段にとどまらず、客単価の上昇やクロスユースの拡大に結び付けば、楽天経済圏の競争力と収益性を同時に高める要因になります。
一方、AI開発費は2026年第1四半期から各事業へ配賦されており、導入コストに見合う利益効果を継続的に示せるかが問われます。AI利用者のコンバージョン率や客単価の改善が、事業全体の成長率にどこまで波及するかを見極める必要があります。
投資家が注目すべきは「最終黒字の定着」とモバイルの改善速度
楽天グループは2026年12月期の売上収益について、前年から1桁台後半の成長を見込んでいます。会社資料では税引前利益および税引後利益の通期黒字化を目指す方針が示される一方、親会社帰属ベースの通期最終黒字については2027年12月期の達成を目標としています。利益指標の定義によって目標時期が異なる点には注意が必要です。
今回の決算では、ECとフィンテックがモバイルの損失を補う従来の構図から、モバイル自身も回線数、ARPU、営業損失の各面で改善に貢献する段階へ進みつつあることが確認されました。4〜6月期の最終黒字化は大きな節目ですが、1〜6月期ではなお109億円の最終赤字であり、黒字が継続的なものになったと判断するには、今後数四半期の推移を確認する必要があります。
株式市場では、フィンテック再編による年850億円以上の相乗効果、モバイルの損失縮小、AIによる利益率向上、財務負担の軽減が評価材料になり得ます。反対に、年間2,000億円の設備投資、モバイルの黒字化時期、2027年以降の社債償還、金利・為替・中東情勢などはリスク要因です。楽天株の再評価には、四半期黒字という一度の成果だけでなく、営業キャッシュ・フローを伴う持続的な最終黒字の定着が求められます。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK
EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Rakuten Returns to Quarterly Profit as E-Commerce and Fintech Offset Mobile Losses
Rakuten Group reported revenue of ¥1.309 trillion for the first half of 2026, up 13% year on year. IFRS operating profit reached ¥50.4 billion, marking the company’s first first-half operating profit in seven years. The net loss attributable to owners of the parent narrowed sharply to ¥10.9 billion from ¥124.4 billion a year earlier.
For the April-June quarter, consolidated revenue rose 11.6% to a record ¥665.5 billion, while Non-GAAP operating profit more than doubled to ¥42.0 billion. Profit attributable to owners of the parent was ¥7.7 billion, representing Rakuten’s first quarterly bottom-line profit in six years.
Fintech remained the main earnings driver. Segment revenue increased 27.0% to ¥295.4 billion, and Non-GAAP operating profit advanced 60.1% to ¥69.2 billion. Rakuten Bank’s deposits reached ¥13.3 trillion, while Rakuten Securities had 14.39 million general accounts and 7.92 million NISA accounts.
The Internet Services segment also posted solid growth, supported by Rakuten Ichiba, travel services, advertising and improved profitability at investment-stage businesses. Segment Non-GAAP operating profit increased 68.6% to ¥23.1 billion.
The Mobile segment remained in the red, but its Non-GAAP operating loss narrowed by ¥4.1 billion to ¥33.1 billion. Total mobile subscriptions reached 10.75 million, up 1.78 million year on year, while ARPU rose by ¥60 to ¥2,921. Rakuten plans to maintain its ¥200 billion annual capital expenditure program and accelerate base-station construction in the second half.
Key issues for investors include whether Rakuten can sustain quarterly profitability, further reduce mobile losses, execute its fintech restructuring and manage bond redemptions beyond 2026. The group’s use of AI across commerce, travel and advertising may provide additional scope for margin expansion.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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