太平洋工業、TOB価格を引き上げ!村上ファンド系との攻防で、株価は一時3,000円台を回復【太平洋工業 劇場・第3章】

太平洋工業、TOB価格を引き上げ!村上ファンド系との攻防で、株価は一時3,000円台を回復 M&A・TOB・アクティビスト

自動車部品メーカーの太平洋工業株式会社(本社:岐阜県大垣市)の株価が10月24日に大幅に上昇しました。トヨタ自動車(7203)向けの部品供給を主力とする同社の株価は、一時前日比271円高(+9.84%)の3,025円まで上昇し、終値は2,960円(前日比+206円、+7.48%)で取引を終えました。

▼太平洋工業 株価推移(2025年10月21日〜24日)

太平洋工業 株価推移(2025年10月21日〜24日)

太平洋工業 株価推移(2025年10月21日〜24日)

背景には、同社の経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)に関連したTOB(株式公開買い付け)価格の引き上げ発表があります。STOCK EXPRESSでも動向を追ってきた同社。9月18日の記事(エフィッシモが太平洋工業株を買い増し!)でもお伝えしたように、MBOをしようとしたものの、旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが買い増しを進めており、投資家の熱視線を集めております。果たして今、何が起きているのでしょうか?以下に見ていきましょう。

TOB価格を2,050円から2,919円に引き上げ

10月23日、太平洋工業は創業家が出資する特別目的会社(SPC)を通じて実施しているTOBについて、買い付け価格を1株あたり2,050円から2,919円に引き上げると発表しました。また、買い付け期限も当初の10月23日から11月7日まで延長されます。

同社によると、MBO公表後、株価が従来のTOB価格を上回って推移していたことから、株式価値を十分に反映した価格水準への見直しが必要と判断したとしています。

村上ファンド系エフィッシモが保有比率を拡大

太平洋工業の株式をめぐっては、旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」が買い増しを続け、10月8日時点で保有比率は12.49%に達していました。

同社はMBO公表後の8月以降、村上世彰氏および長女の野村絢氏と面談を重ね、TOB価格の見直しを求める意見を受けてきたと説明しています。今回の価格引き上げは、両氏の意見を踏まえ、TOB成立の可能性を高めることを目的としたものです。太平洋工業は、村上氏らがTOBに応募する意向を口頭で確認したとしています。

10月8日の記事(太平洋工業、株価はTOB価格を大幅に上回り、MBO成立見通しに不透明感!)にてお伝えしたように、太平洋工業の案件は、東京証券取引所が7月に導入した新たな上場制度改正後、初のMBO事例。新制度では、買収手続きや価格の公正性に関する説明責任、独立委員会の意見開示が義務付けられており、今回のケースが少数株主保護の新ルールの実効性を試す象徴的な事例になるとの見方が広がっています。

株価は新TOB価格を上回って推移、市場では追加引き上げ観測も

10月24日の市場では、新たなTOB価格である2,919円を上回る水準で株価が推移しました。市場関係者の間では、ファンド勢の動きや買収価格の妥当性をめぐり、さらなる価格引き上げの思惑も広がっています。

京都府地盤の西村証券の瀧山裕二チーフストラテジストは、「これまでのファンドの動きを踏まえ、一段の価格つり上げを意識した投資家の思惑が残っている」と指摘しています。もっとも、「PBR(株価純資産倍率)が解散価値の1倍程度に達しており、TOB価格は妥当な水準に近い」として、今後の値動きは徐々に落ち着くとの見方も出ています。

岐建もTOBに応募を表明

また、太平洋工業株式の4.06%を保有する建設会社の岐建株式会社(岐阜県大垣市)が、今回のTOBに応募することを公表しています。主要株主による応募表明は、TOB成立に向けた追い風となる可能性があります。

太平洋工業のTOB価格引き上げは、株主構成やファンドとの交渉を踏まえた現実的な対応とみられます。株価は一時的に過熱感を示しているものの、引き上げ後の価格が企業価値を適正に反映する水準との見方もあり、今後はTOB成立の成否が市場の焦点となりそうです。果たしてどうなっていくでしょうか。動向をウォッチしたいと思います。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK EXPRESS車掌 SHUN

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【太平洋工業:今までの展開】
・第1章:エフィッシモが太平洋工業株を買い増し!保有比率10.45%に ~MBOとアクティビストの思惑が交錯~
・第2章:太平洋工業、株価はTOB価格を大幅に上回り、MBO成立見通しに不透明感!TOB期間を再延長

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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