なぜエヌビディアの株価が上昇したのか? ――売上高962億ドルの最高益決算と「2028年1月期70%増収」見通し、AWS向け200万基のGPU供給が追い風

なぜエヌビディアの株価が上昇したのか? ――売上高962億ドルの最高益決算と「2028年1月期70%増収」見通し、AWS向け200万基のGPU供給が追い風 半導体関連銘柄

好決算だけでは説明できない、エヌビディア株の上昇

米半導体大手エヌビディアNVIDIA)の株価が、2026年8月26日の決算発表後の時間外取引で上昇しました。決算発表直後には売りが先行したものの、その後は一転して買いが強まり、一時は終値比で5%近く上昇する場面がありました。

株価上昇の最大の理由は、2026年5~7月期決算が市場予想を上回ったことに加え、決算説明会で示された中長期の成長見通しが、投資家の想定を大きく上回ったためでしょう。さらに、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)に対して、2027~2028年に追加で200万基のGPUを導入する大型契約も明らかになり、AI向け半導体需要が長期的に続くとの期待が強まりました。

一方、メモリー価格の高騰による利益率低下などの懸念も残っています。今回の株価上昇は、目先の好決算だけを評価したものではありません。利益率への逆風を抱えながらも、それを上回る売上成長によって利益を拡大できるとの見方が市場に広がったことが重要です。
以下にて深堀りしていきます。

売上高は前年同期の2倍超、市場予想を大幅に上回る

エヌビディアが発表した2027年1月期第2四半期、すなわち2026年5~7月期の売上高は、前年同期比約2.1倍となる962億2000万ドルでした。日本円に換算すると約15兆円に達する規模で、四半期として過去最高を更新しました。

市場では約922億ドルの売上高が予想されていましたが、実績はこれを約40億ドル上回りました。調整後1株利益も2.22ドルとなり、市場予想の2.10ドル前後を上回っています。純利益は前年同期比約2.3倍の596億ドルとなり、こちらも四半期ベースで過去最高を記録しました。

売上高と利益がともに市場予想を上回ったことで、AI向けGPU市場におけるエヌビディアの圧倒的な競争力が改めて確認されました。AI関連企業への期待が先行し過ぎているとの警戒感があるなかでも、エヌビディアは実際の売上高と利益を伴った成長を示しています。

同社は過去15四半期にわたり市場の売上高予想を上回っています。予想に対する上振れ幅が以前より小さくなっているとの指摘はあるものの、売上高が1000億ドルに迫る規模まで拡大したにもかかわらず、なお100%を超える前年同期比成長を続けていることは驚異的です。NVIDIAの決算発表

データセンター部門が2.2倍、AI投資ブームは継続

業績拡大をけん引したのは、引き続きデータセンター部門です。同部門の売上高は前年同期比約2.2倍の890億ドルとなり、市場予想の約851億ドルを上回りました。全社売上高の9割以上をデータセンター関連が占めており、エヌビディアがAIインフラ企業として急速に巨大化していることが分かります。

顧客別では、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズなどのハイパースケーラーと呼ばれる大規模クラウド事業者向け売上高が、前年同期比約2倍の487億ドルとなりました。世界の巨大テクノロジー企業は、生成AIの開発やクラウドサービスの高度化に向けて、引き続き巨額のデータセンター投資を行っています。

注目すべきなのは、成長がハイパースケーラーだけに依存していないことです。各国政府や国内企業が自国のデータ、言語、産業基盤を活用してAIを構築する「ソブリンAI」など、ハイパースケーラー以外への売上高も約2.4倍の403億ドルに拡大しました。

エヌビディアの顧客基盤が巨大IT企業から各国政府、AIクラウド事業者、一般企業、スタートアップへと広がっていることは、中長期的な成長を考えるうえで重要です。一部の大口顧客が投資を抑制しても、ほかの需要によって補える可能性が高まるためです。

8~10月期の売上高見通しも市場予想を上回る

エヌビディアは、2026年8~10月期の売上高について、前年同期比約89%増となる1080億ドル前後を見込んでいます。市場予想は集計機関によって若干異なりますが、おおむね1042億~1048億ドル程度であり、会社予想はこれを上回りました。

四半期売上高が初めて1000億ドルを突破する見通しとなったことは、AI向け半導体の需要が一時的なブームではなく、さらに拡大する可能性を示しています。ブラックウェル世代のAI半導体に加え、次世代プラットフォームへの移行も進めば、エヌビディアの成長が継続するとの期待につながります。

しかも、今回の売上高見通しには、中国のデータセンター向けAI半導体の販売が織り込まれていません。米国の輸出規制などにより、中国事業の先行きは不透明ですが、中国向け売上高を見込まなくても市場予想を上回る成長計画を示したことは、その他の地域における需要の強さを表しています。

将来的に輸出規制の運用が変化し、中国向け販売を一定程度再開できれば、追加の業績上振れ要因になる可能性もあります。ただし、米中関係や規制の行方は予測が難しく、中国市場については期待を先取りし過ぎない姿勢も必要です。

株価を反転させた「2028年1月期70%増収」の衝撃

決算発表直後の時間外取引では、エヌビディア株が一時下落しました。市場予想を上回る決算だったにもかかわらず、投資家が利益率の低下やAI投資の持続性に警戒したためです。

流れを変えたのが、コレット・クレス最高財務責任者(CFO)による中期売上高見通しでした。クレスCFOは決算説明会で、供給制約の影響が残るなかでも、2028年1月期の売上高が前期比で約70%増加するとの暫定的な見通しを示しました。市場では4割程度の増収が想定されていたため、会社側の見方は投資家の期待を大きく上回りました。

エヌビディアの株価には、すでにかなり高い成長期待が織り込まれています。そのため、単に市場予想をわずかに上回るだけでは株価が上昇しにくくなっています。しかし、巨大化した売上高が翌年度も約70%伸びるのであれば、現在の企業価値を支える利益成長が続く可能性があります。

株価が当初の下落から上昇へ転じたのは、市場が今回の決算を「成長率がピークアウトした結果」ではなく、「AI需要の拡大が今後も続くことを示す通過点」として評価し直したためです。Axiosの報道

AWS向けに追加200万基、AIエージェント需要を取り込む

株価を押し上げたもう一つの材料が、アマゾンとの提携拡大です。エヌビディアは、AWSの世界各地のインフラに対し、2027~2028年に追加で200万基のGPUを導入する計画を明らかにしました。

AWSは世界最大級のクラウドサービスであり、多数の企業が同社のインフラを利用してAIを開発・運用しています。200万基という導入規模は、AI向け計算需要の拡大が中長期にわたって続くとのアマゾン側の判断を示すものです。エヌビディアにとっては、将来の販売数量を裏付ける大型案件となります。

今後の需要源として期待されるのが、人間から与えられた指示に応じて自律的に作業する「AIエージェント」です。文章や画像を生成する従来型の生成AIに加え、AIエージェントが企業の業務、ソフトウエア開発、研究、物流などに広がれば、推論処理に必要な計算量は大幅に増える可能性があります。

AIモデルを開発するための「学習」だけでなく、完成したAIを継続的に動かす「推論」の需要が増えることで、GPU需要が長期間続くとの期待が高まっています。AWSとの大型契約は、こうした将来像を具体的な数量として示した点で、投資家心理を改善させました。

「AI企業とスタートアップの黄金時代」が意味するもの

ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は、AIが実際に有用な仕事を行う転換点に達し、新たなAI企業やスタートアップの「黄金時代」を迎えて需要が加速しているとの認識を示しました。

この発言の背景には、AI需要の構造変化があります。これまでのAI投資は、巨大テクノロジー企業による大規模言語モデルの開発が中心でした。しかし今後は、企業がAIを実務に組み込み、AIエージェントやロボティクス、自動運転、創薬、製造業向けデジタルツインなどへ用途が広がるとみられます。

利用する企業やサービスが増えれば、それに応じてAI推論を処理するデータセンターも必要になります。エヌビディアはGPU単体だけでなく、CPU、ネットワーク機器、ソフトウエア、AIモデル、システム全体を提供することで、AIインフラ投資の幅広い領域から収益を獲得できる体制を構築しています。

この総合的なエコシステムが、競合他社に対する同社の強みです。グーグルやアマゾンなどが独自のAI半導体を開発しているものの、GPUの性能だけでなく、CUDAを中心としたソフトウエア基盤や開発者層まで含めると、短期間でエヌビディアを置き換えることは容易ではありません。

メモリー高騰で粗利率は低下、楽観一色ではない

好決算と強気の成長見通しが評価された一方、投資家が注意すべきリスクもあります。なかでも最大の懸念は、メモリー価格の高騰による利益率の低下です。

エヌビディアは8~10月期の調整後粗利益率について、74%を中心にプラス・マイナス0.5ポイントと予想しました。市場予想の約74.8%を下回り、前四半期からも低下する見通しです。AIサーバーには大量の高性能メモリーが搭載されるため、メモリー価格やその他の部品価格が上昇すると、製品原価が膨らみます。

クレスCFOは、メモリー価格の上昇が会社の想定を上回っており、2028年にかけてさらに上昇する可能性があるとの認識を示しました。供給制約やコスト上昇が続けば、売上高が増えても、利益の伸びが売上高の伸びを下回る可能性があります。

もっとも、現時点での市場は、利益率の低下よりも販売数量と売上高の拡大を重視したと考えられます。仮に粗利益率が数ポイント低下しても、売上高が大幅に増加すれば、利益額そのものは成長できるためです。株価の持続的な上昇には、今後、売上成長と利益率のバランスを維持できるかが重要になります。

AI投資の過熱と「循環取引」への警戒も残る

エヌビディアをめぐっては、巨大テクノロジー企業によるAI投資が過剰ではないかとの議論が続いています。AIデータセンターには、半導体だけでなく、電力設備や通信網、冷却システム、土地などに巨額の資金が必要です。AIサービスから十分な収益を生み出せなければ、クラウド事業者が設備投資を見直す可能性があります。

また、エヌビディア自身がAI企業やインフラ事業へ出資し、その投資先がエヌビディア製品を購入する構造について、需要を人為的に生み出す「循環取引」ではないかとの懸念も市場では出ています。会社側はこうした見方を否定していますが、投資家は顧客企業の資金調達状況や、AIサービスが実際に生み出す収益にも注意する必要があります。

競争環境も無視できません。AMDなどの半導体メーカーに加え、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの大口顧客が独自半導体の開発を進めています。AI処理の一部が顧客企業の自社製チップへ移行すれば、長期的にはエヌビディアのシェアや価格決定力に影響する可能性があります。

今回の決算はこうした懸念を打ち消すほど強い内容でしたが、リスクそのものが消えたわけではありません。今後は、AI設備投資の伸び率、顧客の投資回収状況、競合製品の普及、メモリー価格、米中輸出規制などを継続的に確認する必要があります。

東京市場の半導体株にも波及するエヌビディア効果

エヌビディアの株価上昇は、米国市場だけでなく、日本のAI・半導体関連株にも追い風となります。同社の決算は世界のAI投資動向を映す重要指標であり、好決算が発表されると、半導体製造装置、検査装置、半導体材料、メモリーなどの関連企業に買いが波及しやすくなります。

日本時間8月27日早朝のシカゴ市場では日経平均先物が上昇し、エヌビディア決算を好感した投資家心理の改善が示されました。東京市場では、アドバンテスト、東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック、ソフトバンクグループ、キオクシアホールディングスなどが注目されやすい状況です。

特にメモリー需要の増加は、日本の半導体関連企業にも波及する可能性があります。AIサーバーに搭載される高帯域幅メモリーをはじめ、データセンター向けの記憶装置需要が拡大すれば、関連する製造装置や素材、メモリーメーカーの業績に追い風となるためです。

ただし、メモリー価格の上昇はメモリーメーカーにとって収益改善要因となり得る一方、エヌビディアなどの半導体設計会社やAIサーバーメーカーにはコスト増加要因となります。同じAI・半導体関連株でも、事業構造によって恩恵とリスクが異なる点には注意が必要です。

今後の株価を左右するのは「需要」から「収益性」へ

今回、エヌビディア株が上昇した直接的な理由は、売上高962億ドルという市場予想を上回る決算、1080億ドルの次四半期売上高見通し、2028年1月期の約70%増収見通し、そしてAWSへの追加200万基のGPU導入計画です。

これらの材料によって、AI向け半導体需要が近く失速するとの懸念が後退し、エヌビディアが今後も高成長を維持できるとの期待が強まりました。特に、決算発表直後の株価下落を反転させた中期見通しは、今回の相場反応を理解するうえで最も重要なポイントです。

一方、今後の焦点は、AI半導体が売れるかどうかだけではありません。メモリー価格や供給制約が続くなかで、どの程度の利益率を確保できるのか、巨額のAI投資を続ける顧客が十分な収益を得られるのかが問われます。

今回の決算は、エヌビディアがなお世界的なAI投資拡大の中心にいることを証明しました。ただし、株価には非常に高い成長期待も織り込まれています。今後は売上高の増加だけでなく、粗利益率、顧客企業の設備投資、次世代製品の供給状況、AIサービスの収益化まで含めて評価することが、投資判断の鍵になりそうです。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK
EXPRESS車掌 SHUN

株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」では、今後も最新情報を発信してまいります。
ぜひ、STOCK EXPRESS
トップページ
をブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699

【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Why Did NVIDIA Stock Rise? Record Earnings, a Strong Long-Term Outlook and a Major AWS Deal

NVIDIA shares reversed an initial post-earnings decline and rose more than 4% in after-hours trading after the company reported another record quarter and presented a stronger-than-expected growth outlook.

Revenue for the May–July 2026 quarter reached $96.22 billion, more than doubling year over year and exceeding Wall Street estimates. Adjusted earnings per share came to $2.22, while data-center revenue surged to $89 billion, supported by continued spending on AI infrastructure by hyperscalers, governments, enterprises and AI start-ups.

NVIDIA also projected approximately $108 billion in revenue for the August–October quarter, above market expectations. The forecast excludes revenue from data-center AI chips sold to China, highlighting the strength of demand in other markets.

The most important catalyst was management’s preliminary expectation that fiscal-year revenue could grow by approximately 70% in the year ending January 2028. This was well above the growth rate previously anticipated by investors and eased concerns that NVIDIA’s expansion was approaching a peak.

Investor sentiment was also strengthened by an expanded partnership with Amazon Web Services. AWS plans to deploy an additional two million NVIDIA GPUs across its global infrastructure during 2027 and 2028, partly to support rising demand for AI agents and other advanced applications.

Risks remain. Higher memory costs are expected to pressure gross margins, while concerns persist about excessive AI capital spending, supply constraints, export restrictions and competition from custom chips developed by major cloud companies.

Nevertheless, the results showed that demand for NVIDIA’s AI infrastructure remains exceptionally strong. Future stock performance will depend not only on revenue growth, but also on the company’s ability to protect profitability as component costs and competitive pressures increase.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

コメント

PROFILE

【STOCK EXPRESS(ストックエクスプレス)】(略称:STOCK.EX)株主視点の経済ニュース考察を発信してまいります!
語り手は、SHUN
渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

▼お問い合わせ

REQUEST(お問い合わせ)
下記メールアドレス(⭐︎を@に変えてお送りくださいませ。)s⭐︎shun.onl

▼Privacypolicy

Privacy policy (プライバシーポリシー)
私達のサイトアドレスは です。当サイトは、個人情報の保護に関する法令及び規範を遵守するとともに、以下のプライバシーポリシーに従い、ご提供いただいた個人情報を適切に取り扱い、及び、保護に努めます。また継続的な見直し、改善を行ないます。【個人情…

PVアクセスランキング にほんブログ村

タイトルとURLをコピーしました