NTT(9432)の株価が上昇基調を鮮明にしています。2026年8月21日の東京株式市場では前日比4.7円、率にして2.91%高の166.1円で取引を終え、一時166.2円まで上昇して年初来高値を更新しました。終値ベースでは2025年8月20日以来、ほぼ1年ぶりの高値圏に浮上したことになります。終値は166.1円。
▼NTT株価推移(2026年1月〜8月21日)

NTT株価推移(2026年1月〜8月21日)
NTT株は、国内通信市場の成熟や携帯電話事業の競争激化、巨額投資に対する懸念などから、しばらく上値の重い展開が続いていました。2024年の年初には株価は190円以上をつけていましたが、その年の春に急落して以降、150円付近を行ったりきたりして、“150円で買って160円で売る”レンジ投資法を実践する方も出てきていたほど。しかし、2027年3月期第1四半期決算で業績の底堅さが確認されたことに加え、携帯通信事業の利益底打ちや将来的な料金改定への期待が浮上。さらに、次世代通信基盤「IOWN」に対する政府の積極姿勢も重なり、株価を取り巻く評価が変化しつつあります。
▼決算について詳しくは下記記事参照:
【NTT決算】2026年度第1四半期は過去最高の売上高!全事業が増収増益、AI・IOWNへの成長投資も加速
今回の上昇は、単なる短期的な材料への反応というよりも、NTTの利益成長が再び加速する可能性を先取りした動きと考えられます。NTT株価上昇の要因について、以下にて深堀りしていきましょう!!
8月21日に2.9%上昇し、約1年ぶりの高値圏へ
8月21日のNTT株は、前日終値161.4円に対して162.0円で取引を開始しました。その後は堅調に推移し、午後には166.2円まで上昇。終値も高値に近い166.1円となりました。出来高は約3億7,000万株、売買代金は約609億円に達しており、多くの投資家が参加した力強い上昇だったことが分かります。
NTT株は1株当たりの価格が比較的低く、個人投資家が購入しやすい銘柄として知られています。一方、時価総額は国内最大級であり、通常は短期間で大きく動きにくい大型株です。そのNTT株が1日で約2.9%上昇したことは、市場が新たな業績材料を相応に強く評価したことを示しています。
株価は6月23日に年初来安値の142.6円をつけていましたが、8月21日の高値166.2円まで約16.5%上昇しました。安値圏で売り込まれていた状況から、業績改善を期待する見直し買いが優勢となる局面へ移行したとみられます。
転機となった2027年3月期第1四半期決算
株価上昇の土台をつくったのが、NTTが8月6日に発表した2027年3月期第1四半期、すなわち2026年4~6月期の連結決算です。
第1四半期の営業収益は前年同期比10.9%増の3兆6,177億円、営業利益は同4.9%増の4,251億円、NTTに帰属する四半期利益は同5.8%増の2,748億円となりました。増収だけでなく、本業の収益力を示す営業利益と最終利益も前年同期を上回り、総じて堅調な決算だったと評価できます。NTTの2027年3月期第1四半期決算資料
事業別に見ると、携帯電話や法人向けICTサービスなどを含む総合ICT事業のセグメント利益は前年同期の2,396億円から2,462億円へ増加しました。グローバル・ソリューション事業も578億円から635億円へ伸び、地域通信事業も979億円から985億円へ小幅ながら増益を確保しています。
不動産やエネルギーなどを含むその他事業の利益も181億円から234億円へ拡大しました。特定の事業だけに頼るのではなく、複数のセグメントが利益を積み上げたことが、NTTグループ全体の安定感につながっています。
会社側は2027年3月期通期について、営業収益15兆600億円、営業利益1兆7,100億円、NTTに帰属する当期利益9,800億円という従来予想を据え置きました。第1四半期時点で上方修正はありませんでしたが、利益が前年同期を上回ったことで、通信事業の悪化に対する市場の過度な警戒感が後退したと考えられます。
野村證券が目標株価を194円へ引き上げ
8月21日の株価上昇を直接後押ししたとみられるのが、野村證券による強気の調査リポートです。
野村證券は8月20日付のリポートで、NTT株の投資判断「Buy」を継続するとともに、目標株価を従来の186円から194円へ引き上げました。8月21日の終値166.1円と比較すると、新たな目標株価は約17%高い水準です。
目標株価引き上げの背景には、携帯コンシューマー通信事業の利益が2027年3月期下期に底打ちするとの見方があります。さらに野村證券は、2028年3月期に携帯料金の値上げが行われることを想定し、同年度の業績予想を上方修正しました。
具体的には、2028年3月期の営業利益予想を従来の1兆8,559億円から1兆9,178億円へ、1株利益予想を12.7円から13.5円へ引き上げています。これらはNTTが公表した会社予想ではなく、野村證券独自の予想ですが、大手証券会社が通信事業の収益改善を具体的な数字で示したことは、投資家心理を改善させる大きな要因となりました。
8月19日時点の市場コンセンサスでは、アナリスト11人によるレーティング平均が4.18で「やや強気」、目標株価の平均は172円でした。野村證券が提示した194円はコンセンサスを大きく上回っており、NTTの利益回復余地を従来以上に高く評価した予想といえます。
携帯料金の値上げはNTTの利益構造を変えるのか
NTT株を評価するうえで最大の焦点の一つとなっているのが、NTTドコモの携帯通信事業です。日本の携帯電話市場は契約者数の大幅な増加を見込みにくい成熟市場であり、政府による料金引き下げ要請や格安ブランドとの競争もあって、通信会社は長年にわたり料金面で厳しい競争を続けてきました。
その一方で、通信ネットワークの維持・更新費用、人件費、電力料金、セキュリティー対策費などは増加しています。5Gの高度化や災害に強いネットワークの整備にも継続的な投資が必要であり、通信品質を維持しながら収益性を改善するには、コスト削減だけでは限界があります。
こうした状況で携帯料金の適正化が進めば、加入者数を大きく増やさなくても、1契約当たりの平均収入であるARPUの改善が期待できます。NTTドコモは巨大な顧客基盤を持つため、わずかな料金改定でもグループ利益に与える影響は大きくなる可能性があります。
もっとも、実際の値上げ時期や対象プラン、値上げ幅は現時点で確定していません。競合他社の対応や利用者離れの有無も見極める必要があります。それでも市場は、携帯事業の利益が今後も縮小し続けるという従来の見方から、底打ち後に回復へ向かう可能性を意識し始めています。この期待の変化こそが、NTT株の上昇転換を説明する重要なポイントです。
IOWNが「将来技術」から国策テーマへ
NTT株への評価を高めているもう一つの材料が、同社の次世代通信基盤「IOWN」です。IOWNは「Innovative Optical and Wireless Network」の略称で、ネットワークから端末まで光を中心とした技術を活用し、大容量、低遅延、低消費電力の通信基盤を実現する構想です。
AIの普及によってデータセンターの電力消費が世界的な課題となるなか、通信処理の消費電力を抑えられる光電融合技術やオールフォトニクス・ネットワークへの注目は高まっています。大量のデータを高速で処理する必要がある生成AIや自動運転、デジタルツイン、遠隔医療などの分野では、IOWNが社会インフラとして活用される可能性があります。
8月20日には木原稔官房長官がNTTドコモビジネス本社を訪れ、IOWN関連技術を視察しました。木原官房長官は、AI社会を支える情報通信インフラの根幹技術になるとの認識を示し、国内での社会実装から国際展開まで戦略的に取り組む姿勢を表明しています。IOWN視察に関する報道
高市政権は「情報通信」を成長戦略の重点分野の一つに位置付けています。情報通信はAIや半導体、医療、防災、モビリティーなど、ほかの成長分野を支える共通基盤でもあります。政府が研究開発、社会実装、海外展開を後押しすれば、IOWNがNTTの研究プロジェクトにとどまらず、将来の収益源へ成長する可能性があります。
官房長官による視察だけで直ちにNTTの利益が増えるわけではありません。しかし、IOWNが政府の産業政策と結び付いたことは、長期投資家にとって重要です。研究開発費の負担だけが先行する段階から、商用化と社会実装によって投資を回収する段階へ進めるかどうかが、NTTの中長期的な企業価値を左右します。
安定配当も下値を支える要因
NTT株の魅力は、成長期待だけではありません。会社側は2027年3月期の年間配当を1株当たり5.4円とし、前期の5.3円から増配する計画です。
8月21日の終値166.1円を基準とした予想配当利回りは約3.25%となります。市場金利の動向には注意が必要ですが、大型通信株としての収益安定性と配当利回りは、長期保有を志向する個人投資家や機関投資家にとって一定の魅力があります。
2024年に始まった新NISAを通じて、多くの個人投資家が長期保有できる大型株を探していることもNTT株の需給を支えています。株式分割によって最低投資金額が低くなったため、少額から購入しやすく、投資家層を広げやすい点も特徴です。
足元では、好決算や証券会社の目標株価引き上げといった成長材料に、安定配当という守りの要素が組み合わさっています。この「成長期待と安定性の両立」が、NTT株への資金流入を促していると考えられます。
株価上昇を一時的な反発で終わらせないための条件
NTT株が今後も上昇基調を維持するためには、いくつかの条件があります。最も重要なのは、携帯通信事業の利益が実際に底打ちすることです。料金施策によるARPUの改善、顧客獲得費用の抑制、ネットワーク運営の効率化などが決算数値に表れるかが注目されます。
また、グローバル・ソリューション事業の成長も重要です。企業のDXやクラウド移行、AI導入、データセンター需要を取り込み、海外事業を含めて利益を拡大できれば、国内通信市場の成熟を補う成長エンジンになります。
IOWNについては、技術的な優位性だけでなく、導入企業の拡大、具体的な契約、売上高、投資回収時期などが今後の評価材料になります。国策として期待されても、収益化まで長い期間を要すれば、株式市場での評価が一時的なテーマにとどまる可能性があります。
一方、通信料金の値上げが消費者や政府から強い反発を受けるリスク、競争激化によって顧客が流出するリスク、IOWNやAI関連設備への先行投資がフリーキャッシュフローを圧迫するリスクにも注意が必要です。金利上昇局面では、高配当株の相対的な魅力が低下する可能性もあります。
NTT株は「成熟通信株」から再評価される局面へ
NTT株が上昇に転じた背景には、複数の材料が重なっています。まず、2027年3月期第1四半期決算で増収増益を確保し、グループ全体の利益が底堅いことを示しました。次に、野村證券が携帯通信事業の利益底打ちと将来的な料金値上げを想定し、業績予想と目標株価を引き上げました。さらに、IOWNに対する政府の積極姿勢が示され、NTTがAI社会を支えるインフラ企業として成長する期待も高まりました。
これまでのNTT株には、国内通信市場の成熟や携帯事業の減益といった課題が強く意識されていました。しかし足元では、携帯事業の収益改善、法人・グローバル事業の成長、IOWNの社会実装という複数の上昇シナリオが見え始めています。
8月21日の株価上昇は、こうした将来像を市場が織り込み始めた動きといえるでしょう。今後は、携帯料金を含む収益改善策が現実の利益成長につながるのか、そしてIOWNが研究開発段階から本格的な商用化段階へ進めるのかが焦点です。
NTT株は、安定配当を期待するディフェンシブ銘柄としてだけでなく、AI時代の通信インフラを担う成長銘柄として評価される可能性を持っています。今回の上昇が本格的な再評価相場の始まりとなるか、今後の決算と事業進捗を丁寧に確認する必要があります。
ここでここ2年半ほどのNTTの株価チャートを振り返ってみましょう。
▼NTT株価推移(2024年1月〜2026年8月21日)

NTT株価推移(2024年1月〜2026年8月21日)
私自身、NTT株を保有してきました。2024年の春にNTT株価が急落して150円ほどになったタイミングでまとめて買ったのです。その後、2年以上にわたり、140円から160円くらいのレンジでアップダウンを繰り返しながら横ばいで推移。キオクシアなどの株が急騰するのを横目に見ながら、何度売ろうと思ったことか… しかし、NTTはAI革命のド真ん中にいるような企業でもあり、将来性を感じており、ガチホを続けてきました。これがようやく日の目を浴びる時が来たのでしょうか?まあ、またいつものように、150円くらいまで戻るかもしれませんが(汗。いずれにしても、これからの社会にとって必要な事業を展開している企業でもあり、期待しつつ見守っていきたいと思います。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Why Has NTT’s Share Price Turned Higher? Earnings Resilience, Mobile Pricing Expectations and IOWN Drive a Re-rating
Shares of NTT, Inc. rose 2.9% to ¥166.1 on August 21, 2026, after reaching a year-to-date high of ¥166.2. The stock has recovered approximately 16.5% from its June low, reflecting improving investor confidence in the company’s earnings outlook.
NTT reported solid results for the first quarter of the fiscal year ending March 2027. Operating revenue increased 10.9% year on year to ¥3.62 trillion, while operating profit rose 4.9% to ¥425.1 billion. Profit attributable to NTT increased 5.8% to ¥274.8 billion.
Another catalyst was Nomura Securities’ decision to maintain its “Buy” rating and raise its target price from ¥186 to ¥194. Nomura expects profit from NTT’s consumer mobile communications business to bottom out in the second half of the current fiscal year. It also assumes mobile tariff increases in the fiscal year ending March 2028.
Long-term expectations for NTT’s IOWN next-generation communications platform are also rising. The technology is designed to deliver high-capacity, low-latency and energy-efficient networks. Japanese government support for its commercialization and international expansion could strengthen IOWN’s position as critical infrastructure for the AI era.
Investors should nevertheless monitor execution risks, including mobile competition, customer reaction to possible tariff increases, large capital expenditures and the timing of IOWN monetization.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





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