2025年10月30日、JR東海(9022)の株価は急落し、終値は前日比341円安の3,793円(-8.25%)となりました。下落率ランキングで3位に入り、リニア中央新幹線の開業見通しの不透明さと総工費の膨張が市場に大きな不安を与えた形です。
▼JR東海 株価推移(2025年10月27日〜30日)

総工費は11兆円に膨張 建設遅延と物価高が直撃
10月29日、名古屋市で開かれた記者会見で、JR東海の丹羽俊介社長は、リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)の総工費が 11兆円 に達する見通しであることを明らかにしました。これは当初計画の約2倍に相当します。
丹羽社長は「工事を進める中で、近年の物価高騰や難工事対応による増額要素が判明した」と説明。合理的な要素を精査した結果、再度の上方修正に踏み切ったとしています。
総工費の見直しは今回で2回目となり、2021年4月に7兆円へ引き上げた後、さらに4兆円上乗せされました。労務費の上昇や資材費高騰が主因であり、建設業界全体のコスト圧力がリニア事業にも影響を及ぼしています。
財務体質は堅調も、開業見通しは不透明
JR東海は、資金面について「問題はない」との立場を維持しています。営業キャッシュフローを中心に、社債や借り入れを併用して資金を確保する方針です。
また、2026年3月期の運輸収入見通しを 1兆5,300億円(従来予想比+4%) に上方修正。大阪・関西万博による東海道新幹線の利用増が寄与し、短期的には安定した収益基盤を確保しているとみられます。
一方で、リニア開業時期について丹羽社長は「まだ申し上げることはできない」とコメントし、依然として明確なスケジュールを示せない状況です。静岡工区での水資源問題の影響が続き、掘削工事に着手できていません。
インフレ対応の運賃制度検討へ
JR東海は、総工費増加を受けて 「インフレによるコスト増を柔軟・簡便に運賃へ反映できる仕組みづくり」 にも言及しました。鉄道業界では物価上昇に対して運賃改定が遅れる構造的課題があり、今後の制度改定の方向性が注目されます。
市場の反応と今後の見通し
市場では「費用膨張はある程度織り込まれていたものの、想定を上回る規模」(証券アナリスト)との声が多く、今回の発表を受けて投資家心理が一気に冷え込みました。
リニアの開業延期リスクや、採算性の見通しが不透明な点が株価下落の主要因とみられます。
静岡県では知事交代により前進の兆しも見られますが、29日には県副知事が「容認の期限を設けない」と発言しており、依然として見通しは立っていません。
三大都市圏を結ぶリニアの経済効果は大きいだけに、JR東海には今後、投資家・自治体・利用者に対する 丁寧な説明とリスク開示 が求められます。
リニア事業の不透明感が株価の重石となる一方、東海道新幹線の安定収益と万博需要が下支え要因となる見込みです。今後は政府支援策や資金調達の枠組みが焦点となるでしょう。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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