第三セクター鉄道を運営するIGRいわて銀河鉄道が6月5日に発表した2025年度(2026年3月期)決算は、当期純利益が7751万円となり、3期連続の黒字を確保しました。運賃改定や広告収入の拡大が収益を下支えした一方で、人件費の増加やエネルギー価格をはじめとする物価高騰が利益を圧迫し、最終利益は前期比3655万円の減益となりました。
地方鉄道を取り巻く環境が厳しさを増す中でも黒字経営を維持したことは一定の評価材料といえるでしょう。一方で、沿線人口の減少や利用者数の減少傾向が続いており、今後は収益基盤の強化と利用促進策の実効性が投資家にとって重要な注目ポイントとなりそうです。
以下にて詳しく見ていきましょう!!
運賃改定が収益改善に寄与 営業収入は増加
2025年度の営業収入は約41億1000万円となり、前年度から1500万円余り増加しました。2025年3月に実施した運賃改定によって旅客運輸収入が押し上げられたほか、広告料収入の増加も増収に寄与しました。
特に旅客運輸収入は運賃改定効果により前年を上回り、人口減少や利用者数の減少が続く環境下においても一定の増収を実現しました。地方鉄道事業者にとって運賃改定は利用離れのリスクも伴いますが、IGRは収益改善に一定の成果を上げた格好です。
また、同社は鉄道事業に加え、広告事業や旅行事業、不動産事業なども展開しており、多角的な収益基盤の構築を進めています。
人件費上昇と物価高が利益を圧迫
一方で、営業費用は約43億4000万円と前年度を5300万円上回りました。
背景には、社員の給与水準見直しによる人件費の増加に加え、電力料金や燃料費などエネルギーコストの上昇があります。鉄道事業は設備維持や安全対策に多額のコストを必要とするため、近年のインフレ環境は収益性に大きな影響を与えています。
その結果、当期純利益は7751万円となり黒字を維持したものの、前年度からは約32%の減益となりました。営業収入の増加だけではコスト上昇を完全に吸収できなかったことが浮き彫りとなっています。
利用者数は2%減少 通勤・通学需要の取り込みが課題
収益面での課題として挙げられるのが利用者数の減少です。
2025年度の輸送人員は1日平均1万2180人となり、前年度比で約2%減少しました。沿線地域では人口減少や少子高齢化が進行しており、地方鉄道各社に共通する構造的課題が続いています。
鈴木敦社長は、同社にとって重要な需要として「通勤・通学・通院」を挙げ、ダイヤ改善やサービス向上による利便性向上を進め、利用者増加につなげたい考えを示しています。
実際に同社は、利用しやすい列車ダイヤへの見直しや学生向けPR強化、新たな企画乗車券の開発、観光列車やイベント列車の運行など、利用促進施策を継続的に展開しています。
自治体支援が経営を下支え 地域インフラとしての役割鮮明
IGRいわて銀河鉄道の特徴として、岩手県や沿線自治体による支援体制があります。
2025年度も県や沿線自治体からの交付金が収益を支え、黒字確保に大きく貢献しました。並行在来線を運営する第三セクター鉄道として、地域交通インフラ維持の役割を担っており、行政との連携は同社の経営基盤を支える重要な要素となっています。
もっとも、人口減少の進展により今後も利用者減少圧力は続くとみられます。自治体支援だけに依存しない収益構造の確立が中長期的な課題として残されています。
経営トップ交代へ 浅沼秀行新社長体制が発足予定
今回の決算発表とあわせて経営トップ交代も明らかになりました。
2023年から社長を務めてきた鈴木敦氏は取締役に退き、現在参与を務める浅沼秀行氏が新たな代表取締役社長に就任する予定です。浅沼氏は元岩手県職員であり、行政経験を持つ人材として地域との連携強化や経営基盤の安定化が期待されています。
正式には6月18日に開催予定の株主総会および取締役会を経て決定される見通しです。
2026年度は4期連続黒字を目指す
同社は2026年度について、約2000万円の当期利益を計画し、4期連続黒字を目指す方針を示しています。収益面では引き続き利用促進や広告事業強化、DX推進による業務効率化を進める考えです。
ただし、今後も人件費上昇や設備更新負担、資材価格高騰などのコスト増加要因は続く見込みです。また、沿線人口減少という構造問題も解決が容易ではありません。
投資家の視点では、運賃改定効果が一巡する中で、利用者数の下げ止まりや新たな収益源の創出が実現できるかが焦点となります。新社長体制のもと、地域密着型鉄道としての強みを生かしながら持続的な成長戦略を描けるか、今後の経営手腕に注目が集まりそうです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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