- 第1四半期は営業利益20.6%増、純利益も過去最高を更新
- 年間300万円以上購入する上位顧客の売上高が16%増
- 海外顧客売上高は22.1%増、来訪元の多様化が追い風
- 売上増を上回らない経費管理で、利益率が大きく改善
- 百貨店業が全体をけん引、金融・不動産も増益
- 通期営業利益を840億円へ上方修正、最高益更新を視野
- 上方修正の大部分は海外顧客、下期計画には慎重さも
- 通期販管費を10億円削減、構造改革効果を積み増し
- 1株を2株に分割、投資単位を引き下げ株主層拡大へ
- 株主優待は分割後100株から対象、少額投資家にも門戸
- 株価は乱高下後に4日続伸、好決算を前向きに評価
- 投資家が注視すべき今後のポイント
- 【Dear Overseas Investors: Summary in English】
第1四半期は営業利益20.6%増、純利益も過去最高を更新
三越伊勢丹ホールディングス(証券コード:3099)が2026年8月13日 13:00に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)の連結決算は、主力の百貨店事業が好調に推移し、増収増益となりました。富裕層を中心とする国内顧客の旺盛な購買意欲に加え、訪日外国人客の回復が売上を押し上げ、営業利益と親会社株主に帰属する四半期純利益はいずれも第1四半期として過去最高を更新しています。
売上高は前年同期比3.8%増の1,289億1,200万円、営業利益は同20.6%増の188億7,700万円、経常利益は同16.7%増の199億2,700万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同18.5%増の223億1,600万円となりました。百貨店内の定借テナントなどを含む総扱売上高は同6.5%増の3,305億円、総額売上高は同6.5%増の3,207億円でした。
増収率を利益の伸び率が大きく上回っている点は、今回の決算を評価するうえで重要です。売上総利益が前年同期から44億円増加した一方、販売管理費の増加は12億円に抑えられました。売上高営業利益率は前年同期の12.6%から14.6%へ上昇しており、売上拡大だけでなく、収益構造そのものの改善が進んでいることが確認できます。
もっとも、純利益には関係会社株式の売却に伴う利益など、108億8,400万円の特別利益が含まれています。前年同期にも109億5,800万円と同程度の一過性利益が計上されていたため、純利益の前年同期比較が大きくゆがんでいるわけではありませんが、基礎的な収益力を判断する際には営業利益や経常利益の動向を重視する必要があります。
三越伊勢丹HDの今期スタートを飾る第一四半期の決算発表内容について、以下にて深堀りしていきましょう!!
年間300万円以上購入する上位顧客の売上高が16%増
好業績を支えた最大の要因は、三越伊勢丹HDが進める「個客業」への転換です。同社は、店舗という「館」を中心に商品を販売する従来型の百貨店経営から、顧客一人ひとりを識別し、アプリ、カード、外商、店舗などを横断して長期的な関係を築く事業モデルへの移行を進めています。
第1四半期末の国内識別顧客数は849万人と、前年同期比で9%増加しました。エムアイカードと三越伊勢丹アプリの双方を利用する「Wメンバー」の顧客数も100万人に達し、同16%増となっています。国内識別顧客の売上高は同6%増、客単価は同7%上昇しました。顧客数を増やすだけでなく、識別した顧客に対する提案の精度を高め、購入単価の上昇につなげていることがうかがえます。
特に注目されるのが、グループで年間300万円以上購入する上位顧客です。この顧客層による売上高は前年同期比16%増となりました。年間1,000万円以上購入する顧客の売上高も同17%増と高い伸びを示しています。株式市場の上昇などを背景に上位顧客の消費意欲が高まり、宝飾品や時計をはじめとする高額品の販売が堅調に推移しました。
グループ外商の総扱高も前年同期比9%増となりました。地域店舗の顧客に首都圏の基幹店の商品やサービスを提案する「拠点ネットワーク」の扱い高も同8%増加しています。伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店だけに顧客を囲い込むのではなく、グループ全体の店舗、外商、デジタル基盤を連携させて購買機会を広げる戦略が、収益拡大に結びつき始めています。
海外顧客売上高は22.1%増、来訪元の多様化が追い風
国内百貨店事業の総額売上高は前年同期比6.0%増の2,821億円でした。このうち国内顧客向け売上高は同3.6%増の2,399億円、海外顧客向け売上高は同22.1%増の421億円となり、国内外の双方が増収に寄与しました。
海外顧客については、特定の国や地域からの訪日客だけに依存しない顧客基盤の構築が進んでいます。海外顧客向けアプリとWeChatを合わせた会員数は、2026年3月末から20万人増加して108万人に達しました。海外アプリ会員による売上高は前年同期比52%増、客単価は同36%増と大幅に伸びています。免税制度を利用して同社店舗で購入する海外顧客のうち、7割以上がアプリを保有する状況になったといいます。
海外顧客向けの外商サービスも成長しており、海外外商顧客の総扱高は前年同期比80%増、客単価は同32%増となりました。訪日中の買い物だけで関係を終わらせず、アプリや外商を通じて継続的につながる仕組みが整いつつあります。為替や訪日客数など外部環境の影響を受けやすい免税売上を、より安定的な顧客基盤へ転換できるかが今後の焦点となります。
店舗別では、伊勢丹新宿本店の総額売上高が前年同期比10.0%増の1,069億円と、力強い伸びを示しました。三越日本橋本店は同7.1%増の421億円、三越銀座店は同6.2%増の309億円です。地域主要5社では岩田屋三越が同8.0%増の326億円となり、全体をけん引しました。首都圏の基幹店を中心に、富裕層・インバウンド需要を確実に取り込んでいます。
売上増を上回らない経費管理で、利益率が大きく改善
三越伊勢丹HDの第1四半期決算では、販売管理費のコントロールも利益拡大に貢献しました。物価上昇や賃上げ、施設管理費の増加といったコスト上昇要因があるなか、販売管理費は前年同期比2.0%増の625億円にとどまり、総額売上高の6.5%増を下回りました。
経費構造改革による削減効果は、第1四半期だけで12億円に達しました。期初時点の年間削減計画33億円に対する進捗率は約36%となっており、順調な滑り出しです。人員配置や業務委託費の見直しなどを継続する一方、伊勢丹新宿本店の地下1階や名古屋三越のリモデルといった成長投資には費用を配分しています。単純なコスト削減に偏るのではなく、将来の売上につながる分野へ資金を振り向けながら収益性を高めている点が特徴です。
一方で、今後は賃金、業務委託費、水道光熱費などの上昇が続く可能性があります。高額品消費の勢いが鈍化した場合にも、現在の利益率を維持できるかが中長期的な評価ポイントになります。
百貨店業が全体をけん引、金融・不動産も増益

セグメント別では、売上の大半を占める百貨店業の総額売上高が前年同期比6.2%増の2,965億円、営業利益が前年同期から30億円増加して155億円となりました。連結営業利益の増加額32億円のほとんどを百貨店業が生み出したことになります。識別顧客を中心とする売上拡大と、経費構造の適正化が相乗効果を発揮しました。

クレジット・金融・友の会業は、総額売上高が前年同期比3.5%増の98億円、営業利益が前年同期から2億円増の20億円でした。エムアイカード会員による百貨店内での利用や、グループ外でのカード取扱高が拡大しています。個客業を推進するうえで、決済情報を持つ金融事業は顧客理解を深める重要な基盤でもあります。
不動産業は、建装会社における大型案件の計上などにより、売上高が前年同期比40.7%増の70億円、営業利益が前年同期から3億円増の11億円となりました。一方、旅行業などを含む「その他」は、売上原価の上昇などが響き、営業利益が前年同期から3億円減少して2億円となりました。
通期営業利益を840億円へ上方修正、最高益更新を視野
第1四半期と7月までの好調な販売動向を受け、三越伊勢丹HDは2027年3月期の通期連結業績予想を上方修正しました。総額売上高は従来計画から100億円引き上げて1兆3,600億円、売上高は20億円引き上げて5,620億円としました。
営業利益は従来予想の815億円から840億円へ25億円、経常利益は800億円から830億円へ30億円、親会社株主に帰属する当期純利益は615億円から630億円へ15億円、それぞれ上方修正しました。修正後の営業利益は前期比5.0%増となる一方、経常利益は同4.1%減、純利益は同17.2%減を見込んでいます。純利益の減益予想には、前期に税効果会計上の分類変更など、キャッシュを伴わない特殊要因が含まれていたことも影響しています。
営業利益840億円は、中期経営計画のフェーズⅠ最終年度に当たる2028年3月期の目標850億円まで、残り10億円に迫る水準です。会社側は850億円を「射程に入れた」と説明しており、計画を1年前倒しで達成できるかが新たな注目点になります。
上方修正の中心は百貨店事業です。同事業の通期営業利益計画は従来予想から25億円引き上げられ、690億円となりました。クレジット・金融、不動産、その他の各事業については、第1四半期が順調だったものの、通期計画は据え置かれています。会社側が第1四半期の上振れを全面的に年間計画へ反映したわけではなく、一定の慎重姿勢を残しているとも捉えられます。
上方修正の大部分は海外顧客、下期計画には慎重さも
国内百貨店の通期総額売上高計画は、前年比4.6%増の1兆2,025億円へ引き上げられました。国内顧客向けは同4.0%増の1兆424億円、海外顧客向けは同8.0%増の1,600億円を見込んでいます。
今回の総額売上高の上方修正は、ほぼ海外顧客によるものです。第1四半期と7月の好調を踏まえ、上期の海外顧客売上高を大きく積み増しました。一方、下期の海外顧客売上高については前年同期比1.0%増と、上期の同16.5%増に比べて慎重な前提を置いています。
このため、訪日客需要が下期も想定を上回れば、さらなる業績上振れの余地が生まれる可能性があります。ただし、為替相場の変動、国際情勢、訪日旅行需要の変化、高額品ブランドの価格政策などに左右される点には注意が必要です。今回の上方修正が7月までの実績を主に反映したものであることから、8月以降の月次売上動向が次の判断材料になります。
通期販管費を10億円削減、構造改革効果を積み増し
通期の販売管理費計画は、期初予想の2,630億円から2,620億円へ10億円引き下げられました。経費構造改革による年間削減効果についても、当初の33億円から41億円へ8億円積み増しています。
物価上昇の影響として43億円、戦略経費として19億円などを織り込む一方、人件費や業務委託費を中心に構造改革を進める計画です。会社側は、インフレによるコスト増が想定ほど大きくならなければ、販売管理費にさらに低下余地があるとの見方も示しました。売上の上振れに加えて経費削減が進めば、営業利益850億円の早期達成が現実味を増すことになります。
1株を2株に分割、投資単位を引き下げ株主層拡大へ
三越伊勢丹HDは決算発表と同時に、2026年9月30日を基準日として、普通株式1株を2株に分割すると発表しました。効力発生日は2026年10月1日です。株価水準の上昇を踏まえて投資単位を引き下げ、個人投資家を中心に株主層を広げる狙いがあります。
株式分割に伴い、年間配当予想の表示は従来の1株当たり80円から60円へ変更されます。内訳は、分割前の中間配当40円と、分割後の期末配当20円です。期末配当20円を分割前に換算すると40円となるため、年間配当は分割前換算で80円となり、実質的な配当方針に変更はありません。
同社は2030年度まで累進配当を継続する方針を示しています。株主資本配当率であるDOEについては2027年3月期に4.5%、次年度以降は5%超への引き上げを計画しています。また、300億円を上限とする自己株式取得について、2026年7月までに129億円を取得しており、今後も約170億円を取得する予定です。
第1四半期時点の2027年3月期ROE予想は、純利益予想の上方修正を受けて10.3%となりました。関係会社株式や政策保有株式の売却によるアセットライト化を進め、創出した資金を成長投資と株主還元へ配分する方針です。増配、自社株買い、株式分割という複数の施策を組み合わせ、資本効率と株式の流動性を同時に高めようとしています。
株主優待は分割後100株から対象、少額投資家にも門戸
株主優待制度では、三越伊勢丹グループの店舗やオンラインストアにおいて、利用限度額の範囲内で買物代金が10%割引となる株主優待カードを発行しています。従来は100株以上の保有が基本的な対象でしたが、今回の株式分割に合わせ、2027年3月末基準から分割後100株以上の株主も対象に加わります。これは分割前の50株以上100株未満に相当し、優待取得に必要な実質投資額が引き下がることになります。
優待利用限度額は保有株数に応じて設定され、分割前の制度では100株以上300株未満で30万円、300株以上500株未満で40万円、500株以上1,000株未満で50万円、1,000株以上3,000株未満で100万円となっています。保有株数に応じて段階的に増加し、10,000株以上では300万円です。3月末基準日に300株以上を2年連続で保有した株主には、利用限度額を2倍とする長期保有特典もあります。
ただし、優待の10%割引には対象外の商品やブランドがあります。高級ブランドを購入する目的で優待取得を検討する場合は、希望する商品が割引対象かどうかを公式情報で事前に確認することが重要です。
株価は乱高下後に4日続伸、好決算を前向きに評価
決算発表は8月13日の取引時間中である午後1時に行われました。発表直後は、業績上方修正、株式分割、今後の成長余地などを見極めようとする売買が交錯し、株価が乱高下する場面もありました。最終的には前日比18円高、0.49%上昇の3,695円で取引を終え、4日続伸となりました。
終値3,695円を基準とした会社予想PERは21.07倍、実績PBRは2.09倍、予想配当利回りは2.17%です。株価は年初来高値4,192円と年初来安値2,304円の間に位置しています。業績の安定成長や株主還元策が評価される一方、相応の成長期待を織り込んだ株価水準ともいえます。
なお、株式分割自体は企業価値や1株当たり持分の実質的な価値を変えるものではありません。ただし、最低投資金額の低下や株主優待対象者の拡大により、個人投資家の参加が増えれば、株式の流動性向上につながる可能性があります。
投資家が注視すべき今後のポイント
三越伊勢丹HDの第1四半期決算は、増収増益、営業利益率の改善、通期予想の上方修正、株式分割という複数の好材料がそろった内容でした。単なるインバウンド需要の回復にとどまらず、識別顧客数の増加、年間300万円以上購入する上位顧客の売上拡大、外商やアプリを活用した継続的な顧客関係の構築が、業績を支えている点が評価材料です。
今後の焦点は、国内富裕層の高額品消費が株式市場や景気の変動を受けても維持されるか、海外顧客の好調が下期も続くか、そして物価上昇下でも経費構造改革によって利益率を高められるかです。営業利益840億円の会社計画に対する進捗に加え、中期目標850億円を前倒しで達成できるかも注目されます。
一方、業績の百貨店事業への依存度は依然として高く、特に基幹店、富裕層、高額品、海外顧客の動向が全社利益に大きく影響します。為替の急変、株価下落による資産効果の後退、訪日客数の変動、高級ブランドの商品供給や販売方針の変更はリスク要因です。好調な決算だけでなく、月次売上、顧客単価、海外顧客売上、販管費の推移を継続的に確認する必要があります。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」では、今後も最新情報を発信してまいります。
ぜひ、STOCK EXPRESS トップページをブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699
【Dear Overseas Investors: Summary in English】
Isetan Mitsukoshi Posts Record Q1 Operating Profit, Raises Full-Year Forecast and Announces 2-for-1 Stock Split
Isetan Mitsukoshi Holdings Ltd. reported strong results for the first quarter of the fiscal year ending March 2027. Consolidated revenue increased 3.8% year on year to ¥128.9 billion, while operating profit rose 20.6% to ¥18.8 billion. Ordinary profit increased 16.7% to ¥19.9 billion, and net profit attributable to owners of the parent climbed 18.5% to ¥22.3 billion. Operating profit and net profit reached record highs for a first quarter.
The performance was driven primarily by the department store segment. Gross sales at domestic department stores increased 6.0% to ¥282.1 billion. Sales to domestic customers rose 3.6%, supported by high-spending customers and strong demand for jewelry and watches. Sales generated by customers purchasing at least ¥3 million annually increased 16%.
Inbound demand also remained strong. Sales to overseas customers increased 22.1% to ¥42.1 billion. The number of overseas app members reached 1.08 million, while sales generated by those members rose 52%. The company is using its apps and personal shopping services to develop longer-term relationships with international customers.
Following the strong start and favorable sales through July, the company raised its full-year operating profit forecast from ¥81.5 billion to ¥84.0 billion. It also lifted its ordinary profit forecast to ¥83.0 billion and net profit forecast to ¥63.0 billion. The revised operating profit target is close to the ¥85.0 billion goal originally set for the fiscal year ending March 2028.
The company also announced a 2-for-1 stock split, effective October 1, 2026, with September 30 as the record date. The split is intended to reduce the minimum investment amount and broaden the shareholder base. The dividend forecast has been adjusted mechanically for the split, but the effective annual dividend remains unchanged at ¥80 per pre-split share.
Key issues for investors include the sustainability of luxury spending by wealthy domestic customers, inbound sales trends in the second half, cost inflation and the company’s ability to maintain its improved operating margin.
Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.





コメント