【米金融市場】生保運用資産への懸念が拡大 ― サブプライム再燃の兆しも

【米金融市場】生保運用資産への懸念が拡大 ― サブプライム再燃の兆しも 株式劇場

米国金融市場が再び不安定な局面を迎えています。
10月17日の記事(米地銀の信用不安再燃、銀行株急落で市場に波紋広がる)や10月23日の記事(米サブプライム自動車ローン大手が破産申請)でもお伝えしたように、地銀による融資不正の発覚や自動車関連企業の破綻やをきっかけに、信用リスクへの警戒が急速に高まっています。こうした中で、市場が新たに注視しているのが米国生命保険会社の運用資産です。

自動車関連破綻が信用不安の引き金に

10月に入り、サブプライム(信用力の低い個人)層を主な顧客とする自動車販売店向け融資会社プライマレンド・キャピタル・パートナーズ(Primarend Capital Partners)が、米連邦破産法11条の適用を申請しました。同社は「バイ・ヒア・ペイ・ヒア」と呼ばれる、販売と融資を一体化したディーラーへの資金供給を行ってきましたが、資金繰りが悪化し破綻に至りました。
この破綻は、同月に破綻したトライカラー・ホールディングスに続くもので、低所得層向け金融の信用不安を象徴する事案です。トライカラー社では詐欺や不正行為の疑いも浮上しており、米金融市場では「サブプライム再燃」の懸念が急速に強まっています。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、「ゴキブリが1匹いれば、他にもいる」と発言し、今後さらに信用問題が顕在化する可能性を指摘しました。

地銀融資不正と信用市場の波紋

10月16日の米株式市場では、地方銀行株が軒並み下落しました。ウエスタン・アライアンス・バンコーポレーションやザイオンズ・バンコーポレーションが相次いで不正融資案件を開示し、投資家心理が悪化しました。
両行ともに商業用不動産ローンや契約違反案件を抱え、株価はそれぞれ11%・13%下落。加えて、自動車関連破綻の連鎖も信用市場の不安を増幅させています。
JPモルガン・チェースやフィフス・サード・バンコープなどの大手銀行も、関連損失を公表。地銀を中心に「融資の質」への懸念が再び市場を覆う展開となっています。

生保資産に潜む「見えないリスク」

こうした信用不安の中で、市場関係者や金融規制当局が新たに注視しているのが生命保険会社の投資ポートフォリオです。
国際通貨基金(IMF)が14日に公表した「国際金融安定性報告書(GFSR)」では、保険会社によるプライベートクレジット(非公開融資)投資の拡大を警鐘付きで取り上げました。特に北米では、保険会社の運用資産の約3分の1をプライベートクレジットが占めるとされています。
プライベートクレジットは、流動性が低い反面、高い利回りが期待できる資産ですが、開示情報が乏しく、格付けの信頼性に疑義が生じています。IMFの調査によると、中堅格付け会社による高格付けの付与が急増しており、「格付けショッピング(高評価を出す会社を選んで依頼する行為)」が横行している可能性が指摘されました。
NAIC(全米保険監督官協会)のデータでは、中堅格付け会社による格付けが平均3ノッチ高いことが確認されており、リーマン・ショック前夜の格付け水準との類似性も懸念されています。

投資家として注視すべきポイント

今回の一連の動きには、2008年の金融危機を想起させる要素が散見されます。
1.低格付け層(サブプライム)への過剰融資
2.返済延滞・デフォルト率の上昇
3.格付けの信頼性低下と資産評価の不透明化
4.信用リスク連鎖の拡大余地

リーマン・ショック当時と比較して金融システムの耐性は高まっていますが、「見えないリスク」の積み上がりが市場を揺るがす可能性は否定できません。特に生命保険会社の資産内容が表面化した場合、株式・社債・クレジット市場全体に波及しかねない構図です。

現時点では、破綻事例が限定的であるものの、プライベートクレジット市場の規模拡大と流動性低下の組み合わせが、潜在的なシステミックリスクとして浮上しています。
投資家としては今後、
・金融引き締めの長期化による企業破綻率の上昇、
・米地銀・保険会社の資産評価の見直し、
・信用スプレッドの拡大リスク
を注視すべき局面にあるでしょう。

市場では依然として「火のないところに煙は立たぬ」との見方が根強く、信用市場の小さな揺らぎが、再び世界的な波紋を呼ぶ可能性も否定できません。

米国ではサブプライム層向けローンの焦げ付きから、地銀・保険業界にまで不安が波及しつつあります。
一見、個別事案に見える破綻や不正も、金融システムの奥底に潜むリスクを示すシグナルとなり得ます。
投資家にとって今は、「過去の教訓」を改めて思い起こすべき局面でしょう。

先日、基本の生保会社の株価が下落していましたが、こうした米国の懸念材料の影響を受けてのことですかね?私も保有しているソニーFGのメイン事業もソニー生命ですし、影響を注視していきたいと思います。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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