米投資会社バークシャー・ハザウェイの巨額資金が、ついに本格的に動き始めました。同社が発表した2026年4~6月期決算では、株式の取得額が売却額を上回り、2022年7~9月期以来、15四半期ぶりの買い越しとなりました。
買越額は197億ドル、日本円で約3兆1000億円に達しました。14四半期連続で株式を売り越してきたバークシャーが投資姿勢を転換したことで、市場ではグレッグ・アベル最高経営責任者(CEO)のもとで新たな資本配分が始まったとの見方が広がりそうです。
同時に、バークシャーは45億ドルを超える大規模な自社株買いも実施しました。外部企業の株式と自社株の双方に資金を振り向けた結果、現金と米短期国債を合わせた手元資金は過去最高水準から減少しています。
それでも、2026年6月末時点の広義の手元資金は3655億ドル、約57兆円と極めて大きな規模を維持しています。今回の動きは、バークシャーが安全余力を失ったというよりも、長期間積み上げてきた資金の一部を、投資機会があると判断した対象へ配分し始めたことを意味します。
ここ数年は現金化を進めてきた傾向があった同社ですが、ついに買い越しに転じたということは、これから株価上昇のタイミングなのでしょうか?以下にて詳しく見ていきましょう!!
14四半期連続の売り越しに終止符、197億ドルの買い越しへ
バークシャーのキャッシュフロー計算書によると、2026年4~6月期の株式取得額は234億ドル、売却額は36億ドルでした。取得額から売却額を差し引いた買越額は197億ドルとなり、2022年7~9月期に36億ドルを買い越して以来の純購入となりました。
バークシャーはそれまで14四半期連続で株式を売り越していました。株価水準や期待収益率に対して慎重な姿勢を崩さず、とりわけ近年は保有株の売却によって現金を積み上げてきました。そのバークシャーが約200億ドルもの買い越しに転じたことは、通常のポートフォリオ調整を超える変化として投資家の注目を集めます。
2026年上半期全体で見ると、株式購入額は399億500万ドル、売却額は277億8000万ドルでした。前年同期の購入額70億9200万ドル、売却額115億9200万ドルと比較すると、売買の規模がともに大きく拡大しています。
単に売却を止めただけではなく、投資対象を入れ替えながら、魅力があると判断した企業へまとまった資金を投入していることがうかがえます。アベル氏の正式なCEO就任後、バークシャーの資本配分が従来より機動的になっている可能性があります。
買い越しの主役はアルファベット、100億ドルの大型追加投資
今回の株式買い越しをけん引したのが、グーグルの親会社であるアルファベットへの追加出資です。
アルファベットは2026年6月、人工知能(AI)開発に向けた投資資金を確保するため、大規模な増資計画を発表しました。バークシャーは第三者割り当てによって、このうち100億ドルを引き受けました。1社への投資としては極めて大きく、バークシャーがアルファベットの長期的な競争力を高く評価していることを示しています。
2026年6月末時点では、アルファベットがバークシャーの上位5保有銘柄に初めて入りました。これに伴い、石油大手シェブロンが上位5銘柄から外れています。
新たな上位5銘柄は、アップル、アメリカン・エキスプレス、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラ、アルファベットとなりました。これら5社で、バークシャーが保有する上場株式の公正価値総額の66%を占めています。2025年末の65%からわずかに上昇しており、依然として少数の有力企業へ集中的に投資するバークシャーらしい構成です。
株式ポートフォリオ全体の公正価値は、2025年末の2978億ドルから、2026年6月末には約3238億ドルへ増加しました。もっとも、アルファベットが上位に浮上した後も、最大の単独保有銘柄はアップルです。アップルの保有額は約580億ドルとされ、ポートフォリオ全体の2割を超える規模を占めています。
「逃したグーグル」へ大型投資、AI時代の成長力を評価
アルファベットへの投資には、ウォーレン・バフェット会長にとって特別な意味があります。
バフェット氏は過去に、より低いコスト構造と割安な株価評価だった初期段階でグーグルへ投資しなかったことを「歴史的な過ち」と認めています。バークシャー傘下の保険会社GEICOがグーグルの広告サービスを利用し、高い効果を上げていたことから、同社の優れたビジネスモデルを身近に確認できる立場にあったためです。
それでも、検索広告という新しい事業の持続性を十分に見極められず、早期の投資機会を逃しました。今回の大型投資は、長年の「見送り」から大きく方向を変える決断となります。
アルファベットは検索広告で築いた巨大な収益基盤を持つ一方、生成AIを巡ってはマイクロソフトやオープンAIをはじめとする競合との激しい開発競争に直面しています。AI向け半導体やデータセンターなどへの投資負担が膨らめば、短期的な利益率やフリーキャッシュフローを圧迫する可能性もあります。
バークシャーは、こうした投資負担を考慮したうえで、アルファベットが持つ利用者基盤、データ、技術力、広告収益力を評価したと考えられます。バフェット氏は、AI分野におけるグーグルの成功確率について、市場に存在する多くの新規プロジェクトを上回る可能性が高いとの見方を示しています。
バークシャーの投資判断は、単純に「AI関連株だから買う」という成長テーマへの追随ではありません。巨額の先行投資に耐えられる財務力と、投資を将来の利益へ結び付けられる既存事業の強さを重視したものとみられます。
45億ドルの自社株買い、経営陣が示した「割安」の判断
外部企業への投資と並んで重要なのが、バークシャー自身の株式を買い戻す自社株買いです。
2026年4~6月期の自社株取得額は45億2700万ドルとなり、1~3月期の2億3500万ドルから急増しました。四半期ベースでは約5年ぶりの高水準です。
月別に見ると、4月の買い戻しはありませんでしたが、5月に買い付けを再開し、6月には取得ペースを大幅に加速しました。開示された株数と平均取得価格を基にすると、5月の買付額は約7億4000万ドル、6月は約37億9000万ドルに達したと推計されます。
6月にはB株を約714万株、平均約487.98ドルで取得しました。A株についても413株を平均約73万3800ドルで買い戻しています。四半期末に近づくほど買い付けを増やしたことから、経営陣が当時の市場価格を魅力的と判断していたことが読み取れます。
バークシャーは、あらかじめ一定の株価を自社株買いの基準として公表する方式を採用していません。バフェット氏やアベル氏が、バークシャー株の市場価格が保守的に算定した本源的価値を下回っていると判断し、買い戻し後も十分な流動性を維持できる場合に限って取得する方針です。
したがって、45億ドル規模の自社株買いは、経営陣による事実上の割安判断といえます。外部の投資先に資金を投じるだけでなく、自社株にも高い期待収益率があると判断したことになります。
自社株買いによって発行済み株式数が減少すれば、残る株主が保有する1株当たりの事業価値は相対的に高まります。ただし、その効果は買い付け価格が本源的価値を下回っている場合に限られます。高値での買い戻しは株主価値を損なう可能性があるため、今後も取得価格と買い付け規模の両方を確認する必要があります。
現金は過去最高から減少、それでも57兆円規模を維持
株式購入と自社株買いの拡大により、バークシャーの現金、現金同等物、米短期国債を合わせた広義の手元資金は、2026年6月末時点で3655億ドルとなりました。過去最高だった3月末から約8%減少しています。
日本円換算では約57兆円という巨額の資金であり、減少後も世界の事業会社として異例の流動性を保っています。保険部門が保有する現金と短期米国債だけでも約3592億ドルに上ります。
投資家にとって重要なのは、現金が減ったこと自体ではなく、その資金がどのような期待収益率を持つ資産へ移されたかです。
短期国債は元本の安全性と流動性に優れていますが、得られる収益には限界があります。一方、アルファベット株や割安と判断したバークシャー自身の株式は、価格変動リスクを伴うものの、中長期的にはより高い収益を生む可能性があります。
今回の資本配分は、現金を一気に使い切るような急進的な方針転換ではありません。約3655億ドルもの待機資金を残しながら、投資機会を選別して資金の一部を動かした形です。
バークシャーは巨大な保険事業を抱えているため、保険金の支払いに備えた流動性を常に確保する必要があります。市場の混乱時に大型買収や株式投資を実行できる余力も、同社の競争力の源泉です。その点では、今回の購入後も財務的な安全性は非常に高いと考えられます。
純利益は2.1倍、投資評価益が大幅増益をけん引
2026年4~6月期のバークシャーの株主帰属純利益は256億6700万ドルとなり、前年同期の123億7000万ドルから約107%増加しました。日本円では約4兆円に相当します。
大幅増益の主因は、保有する株式ポートフォリオの評価益です。税引き後の投資利益は126億8400万ドルとなり、前年同期から155%増加しました。このうち株式ポートフォリオの未実現利益が約109億ドル、税引き後の実現投資利益が約18億ドルを占めました。
米国会計基準では、企業が保有する上場株式の未実現評価損益を最終損益へ反映する必要があります。バークシャーは6月末時点で約3238億ドルの上場株式を保有しているため、四半期純利益は株式市場の変動によって大きく上下します。
そのため、投資家がバークシャーの基礎的な収益力を判断する際には、純利益だけでなく、株式評価損益などを除いた営業利益を見る必要があります。
4~6月期の営業利益は129億8300万ドルとなり、前年同期比で16%増加しました。株価上昇による評価益だけでなく、傘下事業全体でも利益が拡大したことは、決算の重要なポイントです。
2026年上半期では、純利益が357億7300万ドル、営業利益が243億2900万ドルとなりました。純利益は前年同期比で約111%、営業利益は約17%増加しており、事業と投資の双方が増益に寄与しています。
製造・小売・エネルギーが好調、保険引受には減速感
事業別では、製造・サービス・小売部門の営業利益が44億7000万ドルとなり、前年同期比で約24%増加しました。バークシャーは幅広い業種の企業を傘下に持つため、この部門の増益は米国を中心とする実体経済の底堅さを映したものといえます。
鉄道輸送事業を担うBNSFの営業利益は15億5800万ドルで、前年同期比約6%増加しました。バークシャー・ハザウェイ・エナジーの利益も8億9100万ドルと、約27%伸びました。
その他事業の営業利益は12億7400万ドルとなり、前年同期の3200万ドルから大幅に増加しました。この変化には、非ドル建て債務に関する為替損益の改善が寄与しています。前年同期には8億7700万ドルの為替差損が発生していましたが、2026年4~6月期は3億2600万ドルの為替差益となりました。
一方、バークシャーの中核である保険事業では、一部に減速が見られました。保険引受利益は17億3100万ドルと前年同期比13%減少し、保険投資収益も30億5900万ドルと約9%減少しました。
保険引受利益は自然災害の発生状況や損害率によって四半期ごとの変動が大きいため、単独の四半期だけで長期的な悪化と判断するのは早計です。それでも、営業利益全体に占める割合が大きいことから、今後の保険料率や損害額、再保険契約の採算性は継続的な確認が必要です。
2026年6月末時点の保険フロートは約1775億ドルとなり、2025年末から約11億ドル増加しました。フロートは、保険会社が将来の保険金支払いまで運用できる資金です。バークシャーはこの資金を株式や債券、事業買収に活用することで、長期的な企業価値の拡大につなげてきました。
東京海上との提携が早くも収益に貢献
日本の投資家にとって注目されるのが、東京海上ホールディングスとの関係です。
バークシャーは2026年3月、東京海上ホールディングスとの資本・業務提携を決定しました。4月には東京海上傘下の保険会社との新たな再保険契約を開始し、4~6月期に4億8300万ドルの収入保険料を計上しました。
◎関連記事:東京海上、バークシャー出資で急騰! ――世界最大級投資家との提携が示す成長戦略の転換点
提携の決定から短期間で実際の収入に結び付いたことになります。バークシャーにとっては再保険事業の拡大につながり、東京海上側にとっても巨大な引受能力と強固な財務基盤を持つバークシャーとの連携を深める利点があります。
バークシャーは日本の大手商社株への投資を通じて、日本企業との関係を長期的に構築してきました。東京海上との提携は、上場株式への投資にとどまらず、事業面でも日本との接点を拡大していることを示しています。
今後、再保険以外の分野でも協業が広がるか、日本企業への追加投資が行われるかは、日本市場にとって重要な観測点となります。
アベルCEOの初決算、バフェット流を継承しながら機動性も
今回の決算は、グレッグ・アベル氏が2026年1月1日付で正式にCEOへ就任してから、初めての本格的な四半期決算となりました。ウォーレン・バフェット氏が1965年にバークシャーの経営を掌握して以来、初となるCEO交代後の決算でもあります。
バフェット氏は会長として残り、長年培ってきた投資哲学や企業文化の継承を支えています。一方、日々の経営と最終的な資本配分の責任はアベル氏が担います。
アルファベットへの大型投資についてはバフェット氏が直接主導したとされていますが、最終決定権はアベル氏が持ち、両氏が緊密に連携して判断したと説明されています。
この点からも、現段階では「バフェット流からの決別」ではなく、従来の投資規律を維持しながら新体制へ移行していると見るのが妥当です。
価値に対して割安な資産を買い、安全余力を十分に残し、長期的な株主価値を最大化するという基本原則は変わっていません。その一方で、アルファベットという巨大テクノロジー企業への投資や、四半期末にかけて加速した自社株買いからは、好機と判断すれば迅速に動くアベル体制の機動性も見え始めています。
バークシャー株は最高値に接近、市場は新体制を評価
決算発表前の直近の取引では、バークシャーのB株は521.80ドルで取引を終え、過去最高値まで約3.7%の水準に接近していました。一時は525.44ドルまで上昇し、2026年4月の安値からの上昇率は13%を超えています。
株価上昇には、傘下事業の増益に加え、大規模な自社株買いが安心材料として作用しているとみられます。経営陣自身が株価を割安と判断して買い付けていることは、市場参加者に強いメッセージを与えます。
一方、株価が上昇すれば、その後も同じ規模の自社株買いを続けるとは限りません。バークシャーは株価水準と本源的価値の差を重視するため、割安感が薄れたと判断すれば買い戻しを縮小または停止する可能性があります。
投資家は自社株買いの実施自体を無条件に好感するのではなく、平均取得価格や発行済み株式数の減少幅、事業価値の伸びと照らし合わせて効果を判断する必要があります。
投資家として注視すべき三つの焦点
今後の最大の焦点は、15四半期ぶりの買い越しが一時的な動きなのか、継続的な資本配分の変化なのかという点です。
今回の買い越しには、アルファベットによる大型増資という特殊な要因が含まれています。次の四半期以降も株式購入が売却を上回るか、新たな大型投資先が明らかになるかによって、バークシャーの姿勢が本格的に変化したのかが見えてきます。
二つ目の焦点は、アルファベットへの投資成果です。AI開発に伴う設備投資がどの程度まで増え、それが検索、クラウド、広告などの収益拡大につながるかが重要になります。AI競争による費用増加が利益を圧迫する可能性がある一方、アルファベットが生成AIを既存サービスへ組み込み、競争力を維持できれば、バークシャーにとって長期的に大きな成果をもたらす可能性があります。
三つ目は、自社株買いの継続性です。45億ドルを超える買い戻しは経営陣による割安判断を示しましたが、株価はすでに最高値に近づいています。今後も買い戻しが続くかどうかは、経営陣が現在の株価をどのように評価しているかを測る重要な手掛かりになります。
これらに加えて、保険引受利益の回復、BNSFやエネルギー事業の成長、東京海上との提携効果、手元資金の水準も確認すべき項目です。純利益は株式評価損益で大きく変動するため、投資家は営業利益、フリーキャッシュフロー、保険フロート、1株当たりの本源的価値を組み合わせて判断する必要があります。
巨額現金が「待機」から「選別投資」へ
バークシャーの2026年4~6月期決算が示した最大の変化は、純利益が倍増したことだけではありません。約3兆円の株式買い越しと約7100億円の自社株買いを同時に実施し、積み上げてきた現金を具体的な投資へ振り向け始めたことです。
アルファベットへの大型投資は、バークシャーがAI時代の成長機会を無視していないことを示します。一方で、約57兆円の手元資金を残していることから、従来の慎重な財務方針も維持されています。
つまり、バークシャーは現金を抱え続けるだけの状態から、十分な安全余力を確保しながら魅力的な投資先へ資金を配分する段階に移ったと考えられます。
バフェット氏が築いた価値投資の規律と、アベル氏が担う新たな経営体制がどのように融合するのか。15四半期ぶりの株式買い越しは、その答えを探る最初の重要な材料となりました。
今後の投資家に求められるのは、単に「バークシャーが株を買った」という事実を追うことではないでしょう。何を、どの価格で、どれほどの規模で購入し、その後も十分な現金を残しているかを確認することです。バークシャーの資本配分が再び動き始めた今、その一つひとつの判断が、同社だけでなく世界の株式市場にとっても重要なシグナルになりそうです。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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