日本銀行(日銀)の金融政策決定会合が10月31日に開催され、植田和男総裁が会見にて内容を発表しました。事前の予想通り、今回は政策金利の据え置きとなり、今回は追加利上げなしとなりました。これは私も含めて皆さんが予想していた通りでしょう。
ただ、同日の会見にて、今まで植田総裁が使っていた言葉「時間的余裕がある」という言葉は使われませんでした。植田総裁は「リスクの度合いは少しずつ下がっているので、このリスクに光を強く当てて『時間的余裕を持って見ていく』という表現は不要になるのではないか。今日も使っていない。」と説明しています。これは、「そろそろ利上げが近づいていることを示唆しているのかも」とも感じさせますよね。日本では最近、政局の不安定さもあり、追加利上げを実施しにくい環境になってきている中、植田総裁が、このように ややタカ派的な発言をした理由とは何でしょうか?
私はその理由について「円安リスク」への対策が主だと思います。石破氏の総理就任で利上げ方向に進みやすくなったかなと思いきや、彼は柔軟な姿勢を示しておりましたし、ましてや最近の衆院選で与党が過半数割れをし、利上げ実施が難しくなったと思われ、為替(ドル円)は円安方向へと進んでおりましたが、日本が利上げすれば、日米金利格差は縮小するので、円高方向へと進む可能性が高まります。実際、植田総裁の今回の発言を受けて、ドル円はやや円高へと進みました。
日銀は今まで「株安リスク」と「円安リスク」に配慮しながら、バランスをとって運営をしてきたと思われます。8月〜9月は、7月末の利上げ発表による株安リスクへの配慮・対応を軸にした動きが目立っていました。その際、「市場の不安定さ」というリスクに言及していましたが、その後株価も上昇しており、日本株にも影響を及ぼす「米国景気」も底堅さを示していることから、このリスクは軽減してきました。一方、その後、為替が円安方向へと進んでいることもあり、今回は「円安リスク」への配慮を軸にしている印象を受けます。円安方向へと進むと、物価の上振れ可能性も高まり、過度な物価上振れは国民生活の圧迫も懸念されます。そこで、日銀は利上げの可能性も見せながら、円安リスクや物価上振れリスクへの対策に重きを置き始めているのではないでしょうか?
植田総裁が利上げに積極的な発言(タカ派)をしすぎると株安懸念が生じますし、消極的な発言(ハト派)をしすぎると円安懸念が生じますが、今回は円安懸念に配慮し、ややタカ派な発言となったと言えるでしょう。
実際に日銀が追加利上げを年内に実施するかというと、その可能性はまだ高くないかもしれませんが、年明け1月あたりに実施する可能性はありそうです。利上げは、為替にも大きな影響を及ぼすと同時に、株価にも影響力が強いですから、今後も注視していきたいと思います。
今夜は米国雇用統計の発表もあります。これも為替に強く影響を及ぼす数値なので、注目していきます。
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