なぜ、日銀が利上げを発表したのにメガバンクの株価が下がったのか?――「材料出尽くし」と反対2票、追加利上げをめぐる思惑を解説

なぜ、日銀が利上げを発表したのにメガバンクの株価が下がったのか?――「材料出尽くし」と反対2票、追加利上げをめぐる思惑を解説 政治と株価

日本銀行は2026年9月18日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を従来の1.00%程度から1.25%程度へ引き上げることを決定しました。政策金利が1.25%となるのは1995年以来の高水準です。金利上昇は銀行の貸出利ざやを拡大させる要因となるため、本来であれば三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループなどのメガバンク株には追い風となります。

ところが、9月18日の東京株式市場では、日銀の利上げ決定後にメガバンク株がそろって軟調に推移しました。三菱UFJフィナンシャル・グループは前日比32円安の3,620円、三井住友フィナンシャルグループは同48円安の6,830円で取引を終えています。

▼三菱UFJ FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

三菱UFJ FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

三菱UFJ FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

▼三井住友 FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

三井住友 FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

三井住友 FG 株価推移(2026年9月14日〜18日)

なぜ、銀行にとってプラスとなるはずの利上げが発表されたにもかかわらず、メガバンク株は下落したのでしょうか。今回の株価反応を読み解くうえでは、利上げの有無だけではなく、市場が事前に何を予想し、日銀の発表から今後の金利の道筋をどのように受け止めたかを見る必要があります。本日のメガバンクの株価下落理由について以下にて深堀りして考察してみます。

日銀が政策金利を1.25%へ引き上げ

日銀は9月18日、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%引き上げ、1.25%程度とすることを決めました。日銀による利上げは、長期にわたった超低金利政策からの正常化をさらに進める動きとなります。

日銀は、国内経済について、原油価格の上昇が下押し要因になる一方、世界的なAI関連需要の拡大や緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな成長が続くとの見方を示しました。物価についても、原油高や半導体価格の上昇、円安の影響などにより、基調的な物価上昇率が2%の物価安定目標と概ね整合的な水準へ近づいていくと判断しています。

金融政策の正常化が進み、政策金利が上昇すれば、銀行は企業向け融資や住宅ローンなどの貸出金利を引き上げやすくなります。銀行にとって貸出金利と資金調達金利の差である「利ざや」は重要な収益源であり、一般的には金利のある世界への移行は銀行業績にプラスと考えられます。

それでもメガバンク株が下落した最大の理由は、今回の0.25%利上げが市場にとって驚きのある決定ではなかったことです。

最大の理由は「利上げがすでに織り込まれていた」こと

株式市場では、実際に起きた出来事そのものよりも、その内容が市場予想を上回ったか、下回ったかが重視されます。今回の日銀会合を前に、市場では1.00%から1.25%への利上げがほぼ確実視されていました。

投資家は利上げが決定される前から、銀行の貸出利ざやが改善し、国内事業の収益性が高まるとの期待を株価へ織り込んでいました。メガバンク株を事前に買っていた投資家にとって、9月18日の利上げ決定は新しい好材料ではなく、想定していたシナリオの実現にすぎなかったといえます。

その結果、発表後には「利上げ決定を確認したところで利益を確定しよう」という売りが広がりました。これは株式市場でよく見られる「噂で買って、事実で売る」という動きです。

銀行株にとって利上げがプラスであるという基本構図が変わったわけではありません。しかし、好材料があらかじめ株価へ十分に反映されていた場合、実際にその材料が発表された時点では、株価をさらに押し上げる買い手が少なくなります。今回の下落は、利上げによる業績改善期待の否定というよりも、短期的な材料出尽くしと利益確定売りの影響が大きかったと考えられます。

利上げへの「反対2票」が市場に波紋

もう一つの重要なポイントは、今回の利上げが全会一致ではなかったことです。金融政策決定会合では、9人の政策委員のうち7人が利上げに賛成する一方、浅田統一郎委員と佐藤綾野委員の2人が反対しました。

今回の利上げが予想どおりだった以上、市場の関心はすでに「次の利上げがいつ行われるか」「政策金利は最終的にどこまで上がるか」という点へ移っています。銀行の収益に大きな影響を与えるのは、今回の0.25%だけではなく、今後も利上げが継続されるかどうかだからです。

反対票が2票入ったことで、市場では、政策委員の間で景気や物価、金融引き締めの影響に対する見方が分かれ始めているとの受け止めが広がりました。今後の日銀が追加利上げに慎重になり、金利上昇のペースが市場の期待より遅くなる可能性も意識されたのです。

政策金利が1.25%から1.50%、さらに1.75%へと上昇していけば、銀行の利ざや改善期待は一段と高まります。一方、日銀内の慎重論が強まり、1.25%で金利が長期間据え置かれるならば、銀行株に織り込まれてきた将来利益の拡大幅も小さくなります。

そのため、2人の反対票は、今回の利上げ効果そのものよりも、将来の追加利上げ期待を後退させる材料として銀行株に作用しました。

利上げ後に円安が進んだことも象徴的

今回の金融政策決定会合後には、通常の利上げ局面とは異なる市場反応も見られました。一般的に、中央銀行が金利を引き上げると、その国の通貨は買われやすくなります。日本の金利が上昇すれば、円建て資産の魅力が高まり、円高方向へ動くことが想定されます。

ところが、日銀の利上げ決定後、外国為替市場では円が売られ、1ドル=157円台まで円安が進みました。市場が今回の日銀の決定を、想定以上に金融引き締めへ積極的な「タカ派」の内容とは評価しなかったことを示す反応です。

日銀は従来どおり、経済・物価・金融情勢に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する姿勢を維持しました。しかし、利上げへの反対票が2票入ったことで、投資家の間では、今後の利上げが順調に続くかどうかに疑問が生じました。

利上げ後にもかかわらず円安が進んだことは、市場が今回の0.25%利上げより、今後の利上げペースに注目していたことを象徴しています。為替市場で追加利上げへの期待が十分に高まらなかったことが、銀行株における買い材料の弱さにもつながったと考えられます。

利上げは銀行にとって無条件の好材料ではない

政策金利の上昇は銀行の貸出金利を押し上げる一方、銀行経営にマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。「利上げ=銀行株高」という単純な図式だけでは、実際の銀行業績や株価を十分に説明できません。

まず、政策金利が上昇すると、普通預金や定期預金の金利も引き上げられる可能性があります。銀行は預金者に支払う利息を増やす必要があるため、資金調達コストが上昇します。貸出金利が預金金利以上に上昇すれば利ざやは拡大しますが、銀行間の預金獲得競争が激しくなり、預金金利が早いペースで上昇すれば、期待されたほど収益が伸びないことも考えられます。

また、市場金利が上昇すると、銀行が保有する国債などの債券価格は下落します。満期まで保有すれば額面で償還される債券でも、金利上昇局面では時価が下がり、評価損が拡大する場合があります。メガバンクは国内外で多額の有価証券を保有しているため、貸出利ざやの改善だけでなく、債券ポートフォリオへの影響も確認する必要があります。

さらに、住宅ローンや企業向け融資の金利上昇は、借り手の負担を増やします。企業が設備投資を抑制したり、個人が住宅購入を見送ったりすれば、新規の資金需要が弱くなる可能性があります。利上げによって景気が減速すれば、融資先の業績悪化や貸倒引当金の増加を通じて、銀行の信用コストが上昇することもあります。

銀行にとって最も望ましいのは、景気や資金需要が底堅さを保つなか、貸出金利が預金金利を上回るペースで緩やかに上昇する環境です。金利が上がること自体ではなく、利上げ後も経済成長と健全な資金需要が維持されるかが重要になります。

日経平均上昇の一方、銀行株には利益確定売り

9月18日の東京株式市場では、日経平均株価が上昇する一方、銀行株は軟調となりました。指数全体が上昇していても、すべての業種や銘柄が同じ方向に動くわけではありません。

利上げ後に円安が進んだことで、輸出関連株や半導体関連株などには追い風となる一方、利上げ期待を先回りして買われていた銀行株には利益確定売りが出ました。市場の資金が銀行株から他の主力株へ移動したことも、メガバンク株の上値を抑えた可能性があります。

株式市場では、好材料が発表された銘柄が必ず上昇するわけではありません。株価が材料発表前にどこまで上昇していたか、市場参加者がどの程度の好材料を予想していたかによって、発表後の反応は大きく変わります。

今回の動きは、企業業績や政策の方向性だけでなく、「期待と現実の差」が株価を動かす典型的な事例といえるでしょう。

今回の銀行株下落は「利上げが悪材料」という意味ではない

今回、メガバンク株が下落したからといって、日銀の利上げが銀行業績にとって悪材料へ転じたわけではありません。短期的な株価と中長期的な業績への影響は、分けて考える必要があります。

短期的には、利上げの事前織り込み、材料出尽くし、利益確定売り、反対2票による追加利上げへの不透明感が株価を押し下げました。一方、中長期では、金利の正常化が進むことで、長年低迷してきた国内貸出事業の収益性が改善する可能性があります。

メガバンクは、日銀のマイナス金利政策解除以降、貸出金利の引き上げや日銀当座預金から得られる利息の増加など、金利上昇の恩恵を受けてきました。今後も政策金利が段階的に引き上げられれば、国内銀行部門の資金利益を押し上げる要因となります。

ただし、現在の銀行株には、すでに相当程度の金利上昇期待が織り込まれている可能性があります。これからの株価上昇には、単なる追加利上げの実施だけでなく、市場予想を上回る資金利益の増加、通期業績予想の上方修正、増配や自社株買いなどの株主還元策が必要になるでしょう。

今後のメガバンク株を見るうえでの注目点

今後のメガバンク株を判断するうえで、最も重要になるのは、日銀が追加利上げをどの程度のペースで進めるかです。市場の関心は、今回の1.25%への引き上げから、次の1.50%への利上げ時期へ移っています。

日銀が物価上昇や円安への警戒を強め、早期の追加利上げに動けば、銀行株の利ざや拡大期待が再び高まる可能性があります。反対に、景気減速や個人消費の弱さを重視して金利を据え置けば、追加利上げを前提として上昇してきた銀行株には調整圧力がかかることも考えられます。

政策金利だけでなく、短期金利と長期金利の差にも注意が必要です。銀行は短期で資金を調達し、より長い期間で貸し出すことが多いため、長短金利差の拡大は収益にプラスとなりやすい傾向があります。短期金利だけが上昇し、長期金利がそれほど上がらない場合には、必ずしも利ざやが想定どおり拡大するとは限りません。

また、各メガバンクが決算で開示する国内貸出利ざや、貸出残高、預金金利、資金利益、保有債券の評価損益、与信関係費用にも注目する必要があります。実際の業績に金利上昇効果がどの程度表れているかが確認できれば、銀行株は金融政策への期待だけでなく、利益成長を根拠として評価される局面へ移っていくでしょう。

「今回の利上げ」より「今後の金利の道筋」が重要

日銀が利上げを決めたにもかかわらずメガバンク株が下落した背景には、0.25%の利上げが市場にほぼ完全に織り込まれていたこと、発表をきっかけに利益確定売りが膨らんだこと、さらに2人の政策委員が反対し、今後の追加利上げに慎重な見方が広がったことがあります。

今回の株価反応を簡潔に表すならば、「利上げによるプラス効果」よりも、「事前の株価上昇」「材料出尽くし」「将来の利上げをめぐる不透明感」が上回ったということです。

銀行株は、日銀が今回利上げしたかどうかではなく、今後、市場予想を上回るペースで金利正常化が進むか、そして金利上昇が実際の収益や株主還元にどこまで結び付くかによって動く局面に入っています。

投資家は「利上げだから銀行株を買う」という単純な判断ではなく、株価への織り込み度合い、次回以降の日銀会合、長短金利差、貸出需要、預金金利、債券損益などを総合的に確認する必要がありそうです。

いずれにしても、私は三菱UFJフィナンシャルグループをはじめとしたメガバンクの価値の高さを感じていますし、これからも株主として見守っていこうと思っております。今の時流がメガバンクにとって追い風であることには変わりなく、株価が下がったのであれば、むしろ買い増しチャンスとして活用していこうと。ちょうど三井住友フィナンシャルグループの株式分割も近いですし、虎視眈々と狙っております。

なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESSの車掌、SHUN

STOCK
EXPRESS車掌 SHUN

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【Dear Overseas Investors: Summary in English】

Why Did Japanese Megabank Shares Fall Despite the Bank of Japan’s Rate Hike?

The Bank of Japan raised its policy rate from around 1.00% to 1.25% on September 18, 2026. Higher interest rates are generally positive for banks because they can improve lending margins. Nevertheless, shares of Japan’s major banking groups declined following the announcement.

The main reason was that the 0.25-percentage-point increase had already been widely expected and largely priced into bank shares. Investors who had bought megabank stocks ahead of the meeting took profits once the anticipated decision was officially announced.

The vote also attracted attention. Two of the BOJ’s nine policy board members opposed the rate increase. Their opposition raised concerns that the central bank could become more cautious about further tightening. For bank investors, the future path of interest rates is more important than a single rate increase.

The yen’s depreciation after the announcement reinforced the view that the decision was not as hawkish as some investors had hoped. The market began to question how quickly the BOJ would raise rates again.

Higher rates are not entirely positive for banks. They can increase deposit costs, reduce loan demand, lower the market value of bond holdings and raise credit risks for borrowers. Investors will therefore focus on lending margins, deposit rates, loan growth, bond valuation losses and the timing of the BOJ’s next move.

The decline in megabank shares did not necessarily mean that monetary normalization had become negative for bank earnings. Rather, it reflected profit-taking, the prior pricing-in of the rate hike and uncertainty over the pace of future tightening.

Disclaimer: This article is provided for informational purposes only and should not be construed as a recommendation to buy or sell any specific securities. Please make investment decisions at your own discretion.

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渋谷桜丘 在住。立教大学法学部卒業。株主として様々な企業を応援し、経済活性化に努めております。報道カメラマンとして写真撮影もしており、数々の著名人を撮影。2000年代にはライブドアニュースにて経済記事執筆。(保有資格:知的財産管理技能士、化粧品検定1級、食生活アドバイザー、景表法検定など)

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