美容家電・化粧品のAiロボティクス株式会社(東証グロース、証券コード:247A)は、独自AIを核にした少数精鋭の経営で高成長を続けています。2024年9月上場後、D2C(消費者直販)モデルの全行程に自社開発AI「SELL(セル)」を組み込む戦略を徹底し、スキンケア「Yunth(ユンス)」、美容家電「Brighte(ブライト)」、ヘアケア「Straine(ストレイン)」の3ブランドが牽引役となり、効率経営とヒット創出の再現性を武器に、時価総額1兆円の達成を中期目標に掲げています。私自身、上場時から注目しているのですが、株価が右肩上がりに急上昇をし続けていて、驚いております。
▼Aiロボティクス株価推移(2024年9月〜2025年10月10日)

Aiロボティクス株価推移(2024年9月〜2025年10月10日)
以下に詳しく見ていきましょう。
AI×D2Cの融合が生む高効率経営
同社は製造設備を持たないファブレス体制で、企画・開発とマーケティングに資源を集中しています。中でもセルは、広告クリエイティブの大量生成と自動検証、配信最適化、需要予測、CRM、カスタマーサポートまでを一気通貫で自動化・高度化する基盤として機能しており、広告代理店への委託に頼らない内製サイクルがデータ蓄積と改善速度を加速させています。一般的なD2C企業はマーケティングをアウトソーシングするケースが多いですが、これを内製化することによりコストメリットのみならず、貴重なデータが自社内に積み上がる点も大きなメリットでしょう。内製化、しかもAIが軸になっている点がユニークポイントですよね。結果として、従業員1人当たりの売上高が同業の約10倍という少数精鋭ぶりを実現し、営業利益率でも業界平均を大きく上回る水準を示しています。少数精鋭で運営している同社。従業員数は27名で142億円もの売上を出しています(2025年3月期)。そして、今期は通期で売上高280億円を見込みます。毎年2倍ずつ成長してきており、今期も2倍に達しそうですね。

2024年9月27日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した際のAiロボティクス株式会社
先行投資期に入る足元の業績
足元の業績面では、2026年3月期第1四半期(25年4〜6月)が増収・減益となりました。売上高は前年同期比+75.8%と高成長を維持した一方、ユンスの新規獲得強化や新商品の販促、そしてブライトやストレインの立ち上げに伴う広告宣伝費など先行投資が集中し、営業利益は188万円にとどまりました。会社側は当初計画通りの投資局面と説明しており、通期では売上高280億円、営業利益48億円を見込み、下期以降の投資回収で利益の伸長を目指します。
ブランド別の動向とヒット事例
ブランド別では、定期購入モデルを採るYunth(ユンス)が収益基盤を支え、定期会員数は2026年3月期第1四半期末で15.4万人まで拡大しています。Amazonや楽天等のモールも含めて 基本的にすべてが定期なので、利益が着実に積み上がっていくビジネスモデルである点が魅力でしょう。
Brighte(ブライト)は2025年2月のローンチ以降、ドライヤーや美顔器などがシリーズ累計35万台超とヒットを飛ばし、特に2025年5月発売の「シャワードライヤー」は発売直後からランキング上位を獲得するなど快走しています。
2025年6月に立ち上げたStraine(ストレイン)は、著名アンバサダー 山下智久さんの起用とセルによる運用で初速の認知獲得に成功し、ラインの拡充で本格成長を狙います。
消耗品(スキンケア)の継続課金と、高単価の耐久財(美容家電)という性質の異なる収益源を併走させ、AI運用で需要創出から回収までの精度を高めている点が同社の特徴です。
ブランドごとの著名人起用も的確で、ユンスは千葉由佳さん、ブライトは佐々木希さん、ストレインは山下智久さん。どのブランドも認知度が高まっています。
成長戦略の3本柱
中期戦略の柱は3つです。第一に既存ブランドの拡大と海外展開で、2029年3月期に海外売上比率20%を目標とします(2024年度は2.7%)。第二に新規ブランドの連続創出で、毎年1ブランドの立ち上げを掲げ、将来的にはライフスタイルや食品など非美容領域も視野に入れます。第三にM&Aの活用で、売上40億〜100億円規模の企業を主対象とし、セルの技術強化や新チャネル獲得、人材獲得に資する案件を検討します。これらを通じ、2029年3月期に売上高2,200億円、営業利益400億円を掲げ、想定PER35倍で時価総額1兆円の到達を経営者は「投資家への公約」と位置づけています。
資本市場との対話と株主施策
資本市場との対話では、成長投資を最優先する方針から配当は実施していませんが、株主優待を導入し、流動性と投資家層の拡大に向けて株式分割も実施しました。優待は年2回、基準日に100株以上の保有で自社人気製品を贈呈する内容で、2026年3月末の基準日からは「6カ月以上の継続保有」条件を付与する予定です。短期売買ではなく、中長期での応援を促す狙いがうかがえます。
投資家が注視すべきリスク要因
もっとも、同社のストーリーには慎重視点も存在します。第一に「高成長の持続性」です。売上・利益を年々倍近く積み上げる計画は実行難易度が高く、新規ブランド創出、海外展開、M&Aを同時並行で高水準に回す体制整備とガバナンスが不可欠です。第二に「利益の短期変動」です。先行投資が集中する局面では四半期利益の振れが大きくなりやすく、投資回収のトレースとLTV/CACなど主要KPIの開示・進捗確認が、投資家の安心材料になります。第三に「競争環境」です。生成AIの活用は業界横断の潮流であり、差別化はデータの質と量、そして業務プロセスへの深い組み込みにかかります。第四に「海外の不確実性」です。規制・商習慣・地場競合などの壁は高く、国内モデルの再現にはローカライズとパートナー戦略が鍵となります。最後に「バリュエーションの維持」です。1兆円達成には高い利益成長とともにPERの持続が前提となるため、期待と実績のギャップ管理が問われます。同社の時価総額は現在、約1082億。ここからさらに株価を10倍に押し上げていく構想のようで、その目標の高さに感心いたします。
「データの理性」と「情熱の創造力」の共存
総じて、Aiロボティクスは「データに基づく最適化」と「良い商品を生み出す情熱」という二つのエンジンを同居させ、少数精鋭で成果を積み上げてきました。今後は組織規模の拡大やM&Aを通じ、多様な事業と人材を束ねながら、この両輪を失速させずに回し続けられるかが最大の焦点です。四半期ごとの投資回収とブランドKPI、海外比率の進捗、M&Aのディシプリンが順調に積み上がるなら、同社のテンバガーシナリオは一段と現実味を増していくとみています。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
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