愛知県の地方銀行業界に再び再編の波が押し寄せています。
10月7日、地方銀行への投資で知られるありあけキャピタル(東京都中央区)が、あいちフィナンシャルグループ(あいちFG)〈7389〉の発行済株式の5.06%を取得したことが判明しました。関東財務局に提出された大量保有報告書で明らかになったもので、市場では即座に反応が見られ、翌8日にはあいちFG株が上場来高値を更新するなど、地銀再編期待が一気に高まりました。
「第2の千葉興銀モデル」への注目高まる
ありあけキャピタルは、千葉興業銀行の再編を主導した実績で知られるファンドです。2022年に千葉興業銀行へ投資を開始し、翌年には議決権比率を約19.9%まで高めて筆頭株主に浮上。その後、保有株を千葉銀行に売却し、両行の経営統合を導くきっかけをつくりました。
今回のあいちFG株取得により、「愛知でも“第2の千葉モデル”が動き出すのではないか」との見方が市場関係者の間で広がっています。愛知県の地銀は名古屋銀行とあいち銀行の2行体制であり、経営効率の改善が共通課題とされています。ありあけキャピタルが投資を通じて経営統合を促す可能性も否定できません。
あいちFGの現状と経営課題
あいちフィナンシャルグループは、愛知銀行と中京銀行の経営統合により2022年10月に発足。2025年1月には両行を正式に合併し「あいち銀行」が誕生しました。現在、2027年3月末までに約40店舗の統廃合を計画しており、効率化と収益体質の強化を進めています。
グループ全体では、当期純利益150億円以上(2028年3月期目標)を掲げており、地域密着型の新店舗網構築にも取り組んでいます。傘下には、愛銀ビジネスサービス、愛銀ディーシーカード、愛銀リースなど関連会社も抱え、地元経済への影響力は大きいと言えます。
金融庁も“再編促進モード”に
こうした民間ファンドの動きに加え、金融庁も地方銀行再編に向けた姿勢を一段と強めています。
同庁は2024年秋以降、地方銀行の「持続可能性」をテーマにトップ対話を進めており、再編を含む経営戦略の見直しを求めるケースも増えています。幹部の一人は「単独では持続的成長が難しい銀行が多く、地域経済維持のためにも再編は避けられない」と述べており、政策面からの後押しが現実味を帯びています。
投資家として注目すべきポイント
投資家にとって今回の動きは、地域金融再編の新たなトリガーとなる可能性を秘めています。ありあけキャピタルは今年に入り、**滋賀銀行(4月)や池田泉州ホールディングス(5月)**の株式も5%超取得しており、全国的に地銀再編の種をまいているとも言えます。
一方で、愛知県はすでに2行体制であり、現実的に統合を進められる相手は限られるとの指摘もあります。そのため、再編実現には時間を要する可能性もありますが、株式市場では短期的な思惑買いと中長期的な構造改革期待の双方が意識される展開となりそうです。
再編の主導権を握るのは誰か
愛知県を舞台にした地銀再編は、ファンド・行政・市場が三位一体となって動き出しています。
ありあけキャピタルの代表・田中克典氏(ゴールドマン・サックス出身)は、これまでの実績から「再編の仕掛け人」としての存在感を強めています。
今後の焦点は、あいちFG経営陣の対応と金融庁との対話の行方です。再編の波が千葉から愛知へと広がるのか、投資家の注目が集まっています。
なお、本記事は、投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の株式売買を推奨するものではありません。投資の最終ご判断はあくまで自己責任でお願いいたします。

STOCK EXPRESS車掌 SHUN
株主視点での経済ニュースサイト「STOCK EXPRESS」
ぜひ、ブックマークしてご購読くださいませ。
▼記事更新通知は 私のXにて♪
https://x.com/shun699





コメント